マレーシア:「差別や偏見との戦いは、不可欠なステップ」 HIV/エイズ問題に苦しむ子どもたちを応援するマンチェスター・ユナイテッド
【2009年7月21日 マレーシア発】
|
© UNICEF Malaysia/2009 |
ミャンマー難民の子どもたちと談笑する英国のユニセフ国内委員会の親善大使でもあるマンチェスター・ユナイテッドのライアン・ギグス選手。ギグス選手は、プライベートの時間を使って、マレーシアの子どものためにサッカーのコーチも勤めています。 |
今月17日、アジア・ツアーの一環でマレーシアを訪れていた、英国プロサッカーリーグの雄、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)のライアン・ギグス選手、パトリス・エブラ選手、フェデリコ・マケダ選手は、チームの最高経営責任者ジョン・シールス氏と共に、ユニセフの活動の現場を視察しました。
「PT基金」と呼ばれるNPOが運営するHIVと共に生きる子どもたちのサポートセンターを訪れた選手たちは、この国の多くの子どもたちにHIV感染の危機が迫っていることを実感しました。家族にHIV陽性患者がいる子どもや、親が性産業に関わっていたり、薬物使用者だったりする子ども、またストリートチルドレンや難民となった子どもなど、様々な厳しい環境の中で暮らす10人の子どもたち。マンUの選手たちが出会った子どもたちが背負う問題は様々でした。
マレーシアは、子どもの保健や教育の面において、これまで大きな進展を見せてきた国です。しかし、一方で、多くの子どもたちが、社会的な差別や偏見、HIV/エイズに対する悪いイメージによって、社会から疎外された生活を余儀なくされています。こうした“取り残された”子どもたちは、他の子どもたちに較べ、HIVに感染するリスクも高いのが実情です。
子どもたちの厳しい現実
|
© UNICEF Malaysia/2009 |
子どもたちが自分の気持ちを話し合うセッションに参加するマンチェスター・ユナイテッドのフェデリコ・マケダ選手。 |
マンUの選手たちは、若者が彼らの気持ちや将来の夢、日々の生活についてお互いに話し合う討論にも参加し、子どもたちが直面するHVI感染、薬物乱用、暴力、搾取などといった厳しい現実に耳を傾けました。
ギグス選手は、エイズの合併症で父親を亡くしたアシャさん(仮名、15歳)と話しました。アシャさんは、母親がHIV陽性であることを明かした日のことを思い出して次のように話しました。
「お母さんがHIV陽性だと私に教えてくれたとき、私はすっかりうろたえて、何をしたらいいのか分かりませんでした」と、アシャさん。「事実を受け入れることができなかったんです。」
父親が亡くなった後、アシャさんとお母さんは、エイズに偏見を持つ近隣の人々から差別を受け、住みなれた家を離れざるを得ませんでした。「父親が亡くなってから、近所の人々がお母さんを嫌うようになりました。みんながお母さんを傷つけたんです。」アシャさんは話しました。
公平で平等な治療
マンUの選手たちによる今回の訪問は、HIV/エイズを取り巻くこうした現実を一般の人々に伝えることを目的としていました。子どもたちが直面している差別や偏見、HIV/エイズに関する悪いイメージをなくし、子どもたちは誰もが等しく扱われる権利を持っていることを訴えたのです。
「子どもたちがこれほど酷い状況におかれていること、そしてHIV/エイズに関わる悪いイメージに苦しむ人々のことを聞くのは、耐えられません。今日ここで、私たちがこうした子どもたちに会うこと、そして、私たちが彼らを応援しているということを伝えることを通じて、全ての子どもたちは、身分やHIV陽性か否かなどに関わらず、平等に扱われる権利があるのだ、という力強いメッセージが発信されることを願っています。」訪問を終えたギグス選手は、こう語りました。
ユニセフは、現地政府やNGOなどと協力して、差別や偏見に立ち向かい、子どもたちを守り、HIV/エイズに関する悪いイメージを払拭し、HIV感染予防活動を含むこうした問題に対する啓発活動を展開しています。
差別や偏見との戦い
「差別や偏見との戦いは、“取り残された”子どもたちを守るために必要不可欠なステップです。」エバ選手はこのように話します。「こうした活動を行うために、私たちはHIV/エイズに関する全ての事実を学ばなければなりません。HIV陽性の子どもたちと一緒に遊んでも、HIVに感染することはありません。」
今回の訪問は、今年10周年を迎えたマンUがユニセフと実施する「United for UNICEF」キャンペーンの一環として、また、ユニセフの「子どもとエイズ」世界キャンペーンの一環として実現しました。
1999年にスタートした「Unite for UNICEF」キャンペーンは、これまでに、3億7500万円を超える募金を集め、世界の150万人以上の子どもたちに様々な支援を届けています。2007年、マンUは、若者のHIV感染予防プログラムを支援するため、ユニセフ・ミャンマー事務所に1500万円以上の支援を提供しました。
「次世代までその成果が引き継がれるような解決策を考えるとき、HIVから子どもたちを守ることと子どもの権利を守ることの両面が担保される形のものが考慮されなければなりません。」ユニセフ・マレーシア事務所のユースフ・オマール代表は話します。「この二つの権利は、ほんの一握りの子どもたちのものではありません。身分やHIV感染、出身地や性別に関わらず、全ての子どもたちに関わる問題なのです。」
|
「子どもとエイズ」世界キャンペーン
HIV/エイズの問題に立ち向かい、子どもたちを守るためには、まず、この問題についてよく知っていただくことが欠かせません。
皆様がこのサイトの中で聞いた各地の子どもたちの声を、どうかまわりの人に伝えてください。詳しくはこちら >> |
|
|
|