【2019年8月1日 東京発】
日本ユニセフ協会は7月11日(木)、アカデミー賞作品賞受賞『それでも夜は明ける』主演、キウェテル・イジョフォー初監督作品『風をつかまえた少年』の試写会を、東京都港区のユニセフハウスで開催しました。
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子どもの権利条約が国連で採択されてから30年を迎える今年、日本ユニセフ協会は「子ども」を主題にした映画12作品を5月~12月にかけて連続上映する、ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」と題したイベントを開催しています。第4回目となる今回は、飢きんによる貧困のため通学を断念したマラウイの少年ウィリアムが、図書館で一冊の本に出会ったことをきっかけに独学で風力発電を造り上げ、未来を切り開いた感動の実話を元にした映画『風をつかまえた少年』を上映しました。
上映後には、来日中であった原作者であり本人のウィリアム・カムクワンバさんが、ユニセフ ハンド・イン・ハンド募金キャンペーンにもご協力・ご賛同くださっている鈴木福さんとともにゲストスピーカーとして登場しました。
映画の主人公であるウィリアムさんが風力発電を作った当時の年齢、14歳と同世代の福さん。本作を観て「日本にいると学校に当たり前に行けて、たまに「学校いやだなぁ」と思う時もあります。そういう中で、世界には同い年ぐらいの子で「学校に行きたい」「学びたい」という人がいて、自分でやりたいという気持ちからこうやって世界を変えられる。僕とほぼ変わらない年齢の人でもそういうことができるんだと思うと、本当にすごいな、かっこいいなと思います」と話しました。
「この映画を観ると僕が体験したことのないつらさがあると思うし、想像することすら難しいとは思うのですが、今まで生きてきた中で一番大変だったことは何ですか?」という福さんからの質問に対し、ウィリアムさんは「まさに映画で描かれている時期。でも、誰かがやってきて問題を解決してくれるのを待つのではなく、自分の問題に対して自らが長期的な解決法を見つけたいという気持ちで取り組んで、希望を抱くことができたんです」と答えました。また、「映画を作ることは、ある意味、自分のつらい過去を再び生き直さなければいけないという側面がありました。でも同時に、友達と過ごしたあの時間や、風車を作っていた時のわくわくとした気持ちも思い出しました」と語りました。
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さらに、風車を作るにあたって一番困難だったことについては「材料探しです。お金がなかったし、手にした本にも何が必要な材料が書かれていなかったので、想像力を駆使して、がらくたや廃品を見つけてきました。多くの人が「彼は変になったんじゃないか」と言ったり、僕のやろうとしていることが全く理解できなかったりという中で作っていきました。そもそも、現地のチェワ語には「風車」ということばが存在していなかったんです。誰も風車を見たことがなかったし、風車が、コミュニティが直面している問題を解決すると想像することもできなかったのです」と、当時の状況について話しました。
映画の物語の後、アメリカに留学したウィリアムさんは、現在マラウイで若者たちを支援するイノベーションセンターの立ち上げに取り組んでいるそうです。「若者たちが、自分たちの夢やプロジェクトを形にできるような場所を作りたいと思っています。若い才能ある人々に、それを発揮する場所や実現するための知恵を提供したい。自分自身も風車を作っている時に誰かに相談できたらなと思った時がありました。若い方の発想を育んでいきたいと思っています。また、アメリカに進学して、世界中の方々と触れ合うことで得ることができた知識を、色々な課題の解決に生かしていきたいと思います」と語りました。
その後、参加者からの質疑応答では、今のマラウイでの状況の変化について質問がありました。
「中等教育が無償で受けられるようになりました。また、二毛作が可能となったことに加え、井戸を掘り、ポンプで水を汲みあげられるようになりました。一方で灌漑システムについては、これから10年20年かけて整備していくことになるのだろうと思います」
「風車を作った後一番大きく変わったことは何ですか」と質問したのは、マラウイで2年間小学校の教員として働いていたという参加者の方。現地で習得されたチェワ語でウィリアムさんと話されました。
ウィリアムさんは、「学校に戻ることができたことです。南アフリカで2年間中等教育を受けた後アメリカの大学に行き、2014年に卒業し、今はマラウイを行き来しながら、様々な問題を解決すべくプロジェクトに参加しています」と答えました。
また、「子育てをしている身として、周りの人たちからどんなことばをもらって、人々を助ける力を持てるようになったのかを聞きたい」という質問に対して、ウィリアムさんは「今の自分は、コミュニティに育まれた結果としてあると思います。おそらくズール語だと思いますが、自分は自分ひとりで存在しているのではなく、育ったコミュニティによって形づくられたという言い方があります。特に、インスピレーションを受けたのは祖母です。当時、男性の仕事、女性の仕事として分けられて考えられていたことのひとつに、家づくりのためのレンガづくりがあります。レンガづくりは男性の仕事だと言われていましたが、祖母は独学でそれをしていたのです。周りから「なぜそれを夫に任せないのか」と言われた時の、彼女のことば「もし自分の服に火がついたら、自分がまず消すでしょう。自分の問題を一番良く知っているのは自分自身であり、自分がまず行動して解決方法を見出さなければいけない」には大きな影響を受けました」と話しました。
最後に、ウィリアムさんは「人生はチャレンジ。困難がつきものですが、壁にぶつかったからといって自分の夢に負けることを自分が許してはいけないと思います。お子様がいらっしゃる方にはぜひ、お子様に対して、お子様の夢やゴールは何なのか、しっかり耳を傾けて、何かしたいことがあるようだったら応援していただければと思います」と参加者の方々に呼びかけました。
試写会に参加された方々からも、多くのお声を頂戴しました。
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子どもの権利条約が採択されてから30年を迎えるにあたり、「子ども」を主題とした作品を5月~12月にかけて毎月連続で上映する日本ユニセフ協会主催の映画上映会です。「子どもたちの世界」を基調テーマに、「そもそも子どもとは?」「それでも生きていく子どもたち」「子どもを取り巻く世界」「女の子・女性の権利」という4つの視点から選んだドキュメンタリーとフィクション計12作品を上映します。
※参加申込や今後の上映予定についてはこちら
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8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開
2018年/イギリス、マラウイ/英語、チェワ語/113分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/原題:The Boy Who Harnessed the Wind/日本語字幕:松崎広幸
映画公式ホームページはこちらから
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