【2018年2月20日 東京発】
©UNICEF Japan/2017/Chizuka |
12月13日、「世界子供白書2017発表会」をユニセフハウス(東京)で開催しました。
開催報告(1)では、ユニセフの世界子供白書2017のテーマである「デジタル世界の子どもたち」に沿って、インターネット上の危険から子どもたちを守るとともに、デジタル技術を最大限に活用するためにはどのような取り組みが必要なのか、ユニセフ事務局長のアンソニー・レークが発表するとともに、大学生とのトークセッションを行いました。
続いて、インターネット上の子どもの保護と、インターネットを活用した子どもの機会拡大を、本業の中でどのように実行されているかについて、ヤフー株式会社執行役員社長室長の別所直哉さん、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)カスタマーサービス部部長の西雅彦さん、ソフトバンクグループ CSRグループの齊藤剛さんに、それぞれ共有していただきました。
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Yahoo Japanは単体での取り組みとともに、外部の方々と協力した取り組みも行っています。児童ポルノの単純所持の処罰化に向けては、企業側からも継続して働きかけを行いました。これは、インターネット上に溢れかえる児童ポルノの画像を削除するために極めて有効な働きかけだったと思っています。多くの方々の協力のもと単純所持が処罰化されたことで、ネット上の児童ポルノの削除が進みましたし、民間の枠組みの中でも児童ポルノのブロッキングというものを提供できています。
インターネットと子どもに関する取り組みは、Yahoo Japan創業当時から進めてきました。その一つ、子ども向けのポータルサイト「Yahoo!きっず」は、小学校などで使っていただいているサービスです。インターネット上に溢れる情報の中から、子どもにとって安全な情報だけに絞って提供しています。
他にも、未就学児の保護者に向けたインターネット利用に関する情報提供を目的に、教育の専門家の力を借りて、正しい分析・裏付けに基づいた情報をまとめた報告書などを制作しています。また、検索サービスを通じた社会課題の解決として、「死にたい」など自殺を示唆するキーワードの検索結果に、支援窓口の情報を掲載するなど、必要な支援につなげる取り組みを地道に続けています。
業界横断的な取り組みとしては、セーファーインターネット協会(SIA)の取り組みがあります。違法・有害情報を削除するためのホットラインを運営しているのですが、削除依頼に対し、全体で97%が削除に応じてくださっています。対象サイトには海外サイトも含まれるため、国際的組織に加盟し、国際連携の推進も進めています。先日、来日した「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ」スーザン・ビッセル事務局長との意見交換の場を設けましたが、日本の事業者の積極的な取り組みに高い評価をいただきました。
また、地域と連携した取り組みも、秋田県とともに進めています。家庭のなかでのインターネットリテラシーを高めるためには、地域人材の育成も重要です。次のステップに向けた課題として、日本の企業やNPOがお互いに連携し合う必要性を感じています。全国で同じレベルの教材を提供していくために、単独ではなく、連携への働きかけを広げていければと考えています。
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およそ10年前、Mobageを含めたSNSが多くの中高生に使われる中で、残念ながらSNSがおとなと子どもの出会いのきっかけとなり、多くの被害児童を生んでしまう事態が起こりました。Mobageを運営するインターネット事業会社として、青少年を含めた利用者が、インターネットを安心・安全に使っていただける環境をつくらなければ継続的なビジネスはできないという判断のもと、サイトの健全化を最優先課題として取り組んできました。その取り組みを進めるなか、Mobageでの被害児童の数は直近ではゼロにまで減っています。
Mobageサイト内のルールでは、サイト外(現実世界)での出会いを求める一切の行為の禁止や、違法行為の禁止などをあげています。また、顧客の同意確認を行ったうえで、チャット内に含まれる電話番号やメールアドレスなどの個人情報、あるいは事件につながるようなものをシステムで検知したうえで、人の目によって目視チェックしています。このサイトパトロールは、最大300名規模で、24時間365日体制で行われています。
その他のシステム対応として、18歳未満の利用者は3歳以上の年が離れたユーザーとのメッセージ交換ができないようにブロックしたりしています。特に効果が高いものは、ルール違反の自動検出です。過去にルール違反となった書き込み内容をシステムが恒常的に学習し、違反の確率が高い書き込みを自動的に検出した上で、オペレーターが目視で確認しています。この取り組みにより、被害児童の数を年々減らすことができました。
また、生徒・保護者向けに、実際にスマートフォンを使っていただきながら、体感していただく講座を、地域や学校とともに実施しています。そして、各自治体主催の、青少年参加型のワークショップやスマホサミットにも参加しています。参加した子どもたちから、アプリ開発を求められたため、スマホの利用時間の制限につながる「おかんアプリ」を開発しました。全国の地域のみなさんや学校と連携しながら、こうした活動をさらに進めていきたいと考えています。
ソフトバンクも携帯電話の事業者として、安全利用やフィルタリングサービスの提供を行っていますが、今回は、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、ICTを使って人々の悲しみをなくし幸せにしていくために、グループ各社が事業を通じて行っている取り組みを、ご紹介させていただきます。
具体例の一つとして、グループ会社の一つOne Webでは、低軌道の人工衛星によって高速インターネットの実現を検討しています。この背景には、ソフトバンクグループの孫正義の「2022年までに全世界の学校へインターネット導入を目指す」、One Webのグレッグワイラーの「2027年までに情報格差を解消したい」という想いがあります。
ICTを使うと具体的に何が起きるのかという一例ですが、たとえば学校が近くになくても、遠隔教育によって教育を提供できたり、途上国の学校建設・運営の上で課題になりやすい教師の質の向上に関しても、遠隔教育での研修によって貢献できたりするのではないかと考えます。また、遠隔医療や、医療施設がない場所でもヘルスケアのデータを送信できる機械を設置して、子どもたちの健康状態を日常的に管理することも可能ではないかと考えています。
国内の取り組みとして、文字を書くことに困難があるLD(学習障がい)の小学校5年生の男の子の作文を紹介します。この男の子が、iPadの音声入力機能などを使って描いた作文は、「僕は自分のことをバカだと思っていました」という一文で始まります。中程に「僕は障害があるけど、僕でもできる方法はたくさんあって、僕はバカじゃないと分かりました」と書かれています。できないこともあったけど、できる方法があって、その方法を用いることできちんと文章を書くことができたということです。
こういった事例を増やすため、「魔法のプロジェクト」という取り組みでは、全国の特別支援学校の先生から取り組みを募り、iPadやPepperを1年間無償で貸し出しています。現在約60の学校が事例研究を行っており、同じような症状がある子どもたちの助けとなるように、1年に1回成果を発表し共有しています。目が悪いから眼鏡を使うように、様々なハンディをICTが補うことで、ICTのちからによって、チャレンジする機会、選択する機会を広げていきたいと考えています。
続いて、大学生から企業の方々にむけて、質問が投げかけられました。
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Q.サイバーパトロールのような仕組みは、人員や費用もかかるのに、なぜやっているのですか?具体的なきっかけや理由があれば教えてください。
Q.今後の取り組みがあればおしえてください
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企業の方々とのQAセッションを終え、学生たちが今日の発表会での学びをもとに、「デジタル世界において、子どもたちは何をすべきか」について、自分たちの考えを発表しました。続きはこちら
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