メニューをスキップ
公益財団法人日本ユニセフ協会

2014年ノーベル平和賞授賞式
マララ・ユスフザイさん、カイラシュ・サティヤルティさん
恐れに屈せず、子どもたちの権利のために活動

【2014年12月10日 東京発】

2014年2月18日、ヨルダンにあるシリア難民が身を寄せるザータリ難民キャンプ内にある学校を訪問したマララさん。
© UNICEF/NYHQ2014-0207/Malhas
2014年2月18日、ヨルダンにあるシリア難民が身を寄せるザータリ難民キャンプ内にある学校を訪問したマララさん。

12月10日、2014年ノーベル平和賞授賞式が、ノルウェーの首都オスロで開催されます。今年の平和賞を授与されるのは、パキスタンのマララ・ユスフザイさん(17)とインドのカイラシュ・サティヤルティさん(60)。子どもの権利を訴え続け、勇敢かつ強い信念をもって、子どもたちのために活動している方々です。

マララさん−鉛筆と本がもたらす力

「銃を向けられた時、鉛筆と本の重要さに気が付かされました。過激派が恐れているのは、鉛筆と本が私たちにもたらす力なのです」

この力強い言葉は、2013年7月12日、マララさんが国連本部に集まった世界の若者を前にして訴えたものです。恐怖に屈しない“強い 信念”や“許しと慈悲”の精神、そして“教育”の力を力強く訴えました。

史上最年少でノーベル平和賞を授与されるマララさんは、11歳の時から、母国パキスタンで女子教育についての子どもの権利を訴えてきました。その活動が称えられ、2011年には栄誉あるパキスタン政府平和賞(市民賞)を受賞しましたが、その翌年10月、通学バスの中で銃撃され、重傷を負いました。 生死をさまよう奇跡的な回復を遂げた後も、脅しに屈せず、すべての子どもたちの教育の権利の実現に向けて国際社会に訴えかけるとともに、子どもたち自身に向けても、「声をあげて立ち上がろう」「自ら行動を起こそう」と励まし続けています。

学校に通えない女の子たち、その理由

マララさんが訴える女子教育。小学校に通っていない子どもの数は、世界で約5,700万人。このうち、女の子の数は半数を超える3,070万人です。

女の子が学校に通えない理由は様々です。女性が男性より地位が低いとみなされる社会では、女性は教育を受けるべきではない、家事をするのに教育は役に立たない、女の子は早く結婚して家を守るべきだ、といった伝統的な差別や習慣が、女の子を学校から遠ざけます。

また、貧しく、子どもたちに教育を受けさせる余裕がない家庭では、男の子を優先的に学校に通わせる一方で、女の子は労働力としてみなされます。さらには、十代前半で結婚を強いられ、まだ十分に準備できていない体で出産することにより、命を落とす女の子も多くいます。そういった環境に加え、家から学校まで遠く危険な地域を通って通わなければならないという地理的要因や、学校に女の子用のトイレがないなど設備の不十分さも、女の子が学校へ通えない主な理由のひとつです。

ユニセフの活動:すべての子どもたちに教育を

2010年9月20日、ニューヨークで行われたパネルディスカッション、「Making ‘1GOAL: Education for All’ A Reality」でスピーチをするカイラシュ・サティヤルティ氏。
© UNICEF/NYHQ2010-1882/Markisz
2010年9月20日、ニューヨークで行われたパネルディスカッション、「Making ‘1GOAL: Education for All’ A Reality」でスピーチをするカイラシュ・サティヤルティ氏。

ユニセフは、女の子が教育を受けられる環境を整える支援を実施しています。たとえば、男女の性差に配慮して教育を行うことができる教員の育成、男女の性差に配慮した学習教材の作成、コミュニティ近くでの学校の設立、女子トイレの設置、などです。そして、貧困などで経済的に厳しい状況にいる女の子も教育が受けられるように、政府に働きかけ、奨学金制度の制定を促しています。

教育を受けた女の子たちは、仕事につくことができ、家庭の収入に貢献するようになるだけでなく、彼女たち自身の命を守ることにもつながります。教育を受けた期間が1〜6年と短かった母親のほうが、12年間以上教育を受けた女性より、妊娠・出産で死亡する可能性が2倍高いというデータがあります。女の子が教育を受けることで、助かる命が多くあるのです。

* * *

サティヤルティさん−子どもたちを労働から解放

カイラシュ・サティヤルティさんは、インドにおいて,児童労働の撲滅のために、長年取り組んできた活動家です。暴力や脅しに屈せず、児童労働で苦しむ子どもたちの救出に奔走し、救出された子どもたちが社会復帰できるためのリハビリや教育支援も行っています。

危険と隣り合わせで働く子どもたち

ユニセフとILO(国際労働機関)、世界銀行の発表によると、世界の5歳から17歳までの子どもたちのうち、11%にあたる1億6,800万人が児童労働に従事しており、そのうち1億5,000万人は14歳未満の子どもたちです。さらには、何百万人もの子どもたちが、奴隷として強制労働させられたり、子ども兵士として戦闘に参加させられたり、あるいは、おとなから性的搾取を受けるなど、危険で搾取的な環境の中で働かされています。

国連機関やNGO、国際社会のさまざまな取り組みにより、児童労働に従事する子どもたちの数は少しずつ減少してはいます。しかし、現在の緩やかな減少傾向では、2020年時点においても、1億人以上の子どもたちが児童労働に従事していることになると推計されています。

児童労働は、農業、製造業、鉱業などさまざまなセクターで行われており、また、家事労働に従事する子どもたちも含まれます。人々の目から見えにくいところで労働していることが多く、その故に、最も搾取され易く、最も虐待を受け易い環境の中に置かれています。また、家事労働に従事させられている子どもたちの多くは、雇用主と同じ屋根の下で暮らしているため、性的搾取や人身売買の危険に非常にさらされやすいことがわかっています。

ユニセフの活動:児童労働

ユニセフはパートナー団体や各国政府と協力し、子どもたちを労働から解放し、職業訓練センターや学校に通わせる取り組みを行っています。また、経済状況により、子どもたちが働かざるを得ない貧困家庭には、その国の政府の主導の下、現金給付などの支援を行い、子どもたちが学校に通えるような支援を行っています。

* * *

マララさんとサティヤルティさんのノーベル平和賞受賞は、世界を変えるために立ち上がるすべての人を励まし、若者や子どもたちを勇気づけるものです。すべての子どもたちの未来は、世界の未来でもあります。ユニセフは、これからも、世界の子どもたちの健康を守り、人生をより良いものにするために活動していきます。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る