メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2016年 >

シリア
紛争で大学寮へ避難した家族たち
子どもたちが育てる希望の芽

【2016年2月2日  アレッポ(シリア)発】

紛争の影響を受けるシリア全土で、子どもたちが暴力や貧困、搾取の危険に晒されています。このような状況下、アレッポの避難所で暮らす子どもたちが、心休まる場所で希望の芽を育んでいます。

* * *

人生で一番すてきな日

安全に学び、遊ぶことのできる「子どもにやさしい空間」で育てる植物を手に、笑顔を見せるアハメドくん(10歳)。

© UNICEF Syrian Arab Republic/2016/Ourfali

安全に学び、遊ぶことのできる「子どもにやさしい空間」で育てる植物を手に、笑顔を見せるアハメドくん(10歳)。

「芽が出てきたときには、本当に自分のことを褒めてあげたい気分でした。今までの人生で、一番すてきな日だったよ」とアハメドくんが話します。

10歳のアハメドくんは、紛争から避難している人々が身を寄せる共同避難所で家族と一緒に生活しています。かつては学校の寮だったこの避難所では、大学生の2人部屋として設計された個室に4人~10人の家族が生活しています。

安全に身を寄せることができるこの場所で、アハメドくんや子どもたちは園芸という新しい楽しみを見つけました。

危険から逃れて

シリア中の子どもたちが、暴力や貧困、搾取の危険のなかで生活を送っています。学校への通学は危険を伴い、多くの子どもは学校に通うことが不可能な状態です。学校が損壊や破壊、占領され、4校に1校は使用することができません。

紛争の影響でより多くの家族が貧困に陥っており、学校を辞め、劣悪な環境のなか、低賃金で働かざるを得ない子どもが増加しています。また、故郷からの避難を強いられた子どもたちは学校を辞めざるを得ず、教育は中断されてしまいます。現在、200万人以上の子どもたちが学校に通えていないとみられています。

そして推定280万人の子どもたちはシリア国内での避難生活を強いられ、多くは何度も避難場所を変えなくてはいけません。

困難な毎日を送るなか、子どもたちが水汲みなどの家事を手伝っています。このような単純に見える作業でさえ、深刻な結果をもたらすことがあります。給水インフラが被害を受けているなか、家族のために水を汲みに行った子どもたちが爆発で命を失っているのです。

安全な場所

はじめは窓から見えるごみの山の景色を遮るために置かれた植物たち。今では子どもたちが進んで世話をしている。

© UNICEF Syrian Arab Republic/2016/Ourfali

はじめは窓から見えるごみの山の景色を遮るために置かれた植物たち。今では子どもたちが進んで世話をしている。

アハメドくんは友達と一緒に、大学内に設置されたユニセフの支援する「子どもにやさしい空間」に参加しています。子どもたちは紛争の影響から逃れ、この安全な環境に集まって勉強をしたり遊んだりすることができます。激しい紛争が起こっている地域では、ユニセフの移動チームがコミュニティを訪問して支援を行っています。

アハメドくんが通う「子どもにやさしい空間」の遊び場から見えるのは、大量のごみの山。そこで、子どもたちは思いを行動に移しました。「このセンターから見える景色を変えたかったのです」と、アハメドくんが語ります。子どもたちは、植物を植えることを思いつきました。

子どもたちはみな、このアイデアにわくわくしていました。地域のボランティアたちが植木鉢の代わりに空き缶を使うことを思いつき、子どもたちに豆の空き缶を持ってくるように頼みました。アレッポで避難生活を送る人々に最もよく配布される食材の一つが、缶詰の豆です。

瞬く間に300以上の空き缶が集まりました。子どもたちみんなで空き缶を飾り付けし、ボランティアの人たちが提供した成長の早いレンズ豆などの豆の種を植えました。

何日、何週間とかけて芽が生え、つるが成長していくと共に、子どもたちの喜びも大きくなっていきました。「子どもたちの植えた豆がすくすくと成長していく様子や、子どもたちの我慢強さや前向きな心、自尊心が成長していく姿に心があたたまりました」と、ボランティアのモハメドさんが語ります。

希望の芽

初めて植物が花を咲かせると、子どもたちは大喜びでした。「毎朝、アハメドは起きるとすぐに豆の様子を見に行くんですよ」と母親が話します。

「子どもたちは園芸を通して、この小さな植物に対する責任感を養っています。そして最も大切なことに、希望を持つことができるようになっています」と、ボランティアのバヤンさんが語ります。

多くの課題が依然として残るなか、毎朝子どもたちは自分たちが育てる植物に向き合い、大切に育てています。「いつか朝起きたら、この小さな豆が大きな木になっていると思うよ!僕の平和への希望のように、大きくね」と、アハメドくんが話します。

* * *

2015年、ユニセフは186カ所の「子どもにやさしい空間」と移動チームによる支援を通し、44万人の子どもたちに支援を行いました。

【関連動画】

シェアする


トップページへ先頭に戻る