【2016年2月12日 ブラジル発】
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ブラジル保健省によると、2015年10月以降、ブラジル北東部を中心として、新生児の間でジカウイルスとの関連が疑われる小頭症の事例が急増しています。ブラジル連邦政府はこれを優先事項に位置付け、警察や軍、消防など複数の省庁や政府機関が、予防、広報、モニタリング等に関するさまざまな活動を支援するため、保健省の指揮の下で対応に当たっています。
ユニセフ・ブラジル事務所は、支援の提供および支援要請への対応の一環として、ベクター・コントロール(媒介蚊の制御)に重点を置いた行動計画を策定。ソーシャルメディアを通じて、一般の人々に身を守る方法や蚊の発生場所の除去などの意識向上を促すほか、感染リスクが高いとされる174の自治体へ直接赴くなど、活動を強化しています。
ブラジル保健省によると、小頭症の疑いがあると報告された事例は昨年からのべ5,079件にのぼり、2016年2月12日時点、3,852件がジカウイルスとの関連性について調査中です。調査を終えた事例の8.9%にあたる41件が、ジカウイルス感染との関連が確認されています。また、709件は小頭症ではないことが判明しています。
また小頭症の疑いがある死亡事例として91件が報告されています。調査済の事例20件のうち、小頭症ないし中央神経系の異常が15件確認され、その中の5件にジカウイルス感染が確認されました。
9つの連邦州の156の自治体から小頭症の事例が報告されるなか、98パーセントの事例が北東部に集中しています。
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ユニセフ・ブラジル事務所の中心的な取り組みは、各地のコミュニティと協力して、ネッタイシマカの発生源を除去するというベクターコントロールです。保健省、教育省、汎米保健機構(PAHO)、地方自治体との緊密な連携の下、感染を防ぐ方法を普及させるため、感染リスクの高い地域を中心に支援を行っています。ブラジル事務所の基本戦略は、蚊の発生源の除去に関する政府主導の計画や各機関共通の取り組みを支援することです。具体的には、ジカウイルスへの対応計画として、アドボカシー、広報・開発コミュニケーション(コミュニティへの働きかけ)、モニタリングの3つの戦略を用いています。特に、最も脆弱なコミュニティにアクセスし、感染の予防や保護に関する取り組みを強化することが、ブラジル事務所の優先課題です。感染リスクが高い自治体の84パーセントに赴き、ユニセフがこれまでの活動で築き上げてきた存在感やコミュニティとの協力関係を生かしながら、異なるレベルの政府機関を連携させ、市民社会への働きかけることで、感染源の除去を進めています。
ユニセフ・ブラジル事務所のアドボカシーの主な対象は地方自治体です。ブラジル事務所は、過去4年間で地方自治体とともに進めてきたプロジェクトの基盤を活用しながら、感染予防や保護に関する情報を掲載した資料を提供しています。また、地域レベルでの対応力を強化するため、各地域の有力者にも働きかけています。アマゾンや半乾燥地帯など北東部の自治体の約60パーセントにアクセスできており、ユニセフは優先度の高い地域をカバーしつつあります。
広報活動の初期段階では、保健省の取り組み方針に沿った形で地方自治体を動かし、ネッタイシマカの根絶に向けた活動を展開するため、保健省の広報部門を支援しました。現在、主に3つの活動を展開しています。
ユニセフの既存の取り組みである、子どもや青少年の生活水準改善プロジェクト(Selo UNICEF Município Aprovado)や大都市のインクルーシブな開発を進めるプロジェクト(Plataforma dos Centros Urbanos)などのコミュニケーションチャネルを活用し、地域レベルへの働きかけを進めています。その一環として、プロジェクトに参加している10州の自治体の調整官や青少年のネットワークを通して、地域の人々に向けた感染の予防と対処に関する情報を提供しています。また、コミュニティのニーズ、現状認識、問題点をより正確に把握し、各地の状況に適合した情報を伝えられるよう、簡易評価や、自治体の担当者、保健師、特定のコミュニティの住民へのグループインタビューを通した調査を企画しています。
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ブラジル国民に対して、ジカウイルスの拡大に関する正確な情報を提供し、対処の重要性についての意識を高めるため、ユニセフはフェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどのソーシャルメディアを通した情報発信を進めています。広大な国土を有するブラジルにおいて、州によって感染状況が大きく異なるため、各地の状況に適した行動変化を促せるよう配慮しています。1月12日以降、ブラジル事務所はこれらのソーシャルメディアを活用して、22のコンテンツを約270万人に配信し、11万8,000人に対して直接的な働きかけを行いました。ブラジル事務所のウェブサイトに専用ページを開設したほか、フェイスブック、ツイッター、グーグルと協力し、それぞれの媒体における認知度拡大に向けた個別の戦略を策定しています。
州、連邦、国際レベルの報道機関に対して、ブラジル事務所代表、地方事務所長、プログラム責任者などの報道官から、ユニセフの公式声明を発表し、乳幼児や妊娠女性が適切な支援を受けられる権利を強調し、ユニセフの支援提供における役割を伝えています。これまでユニセフの報道官は、ロイターなど国際的なメディアを含め、10の報道機関からインタビューを受けています。また、ユニセフ国内大使レナート・アラガンの感染予防を呼びかけるメッセージを収録し、現在20以上のラジオ局によって全国各地に伝えられています。さらに、最も脆弱なコミュニティや世帯に対しても働きかけを強めるため、関係機関と協力しテレビコマーシャルの制作を進めています。
ブラジル事務所は、感染の傾向や各機関による取り組みの現状を把握するため、保健省の情報源を用いて状況を監視しています。保健省による週次の感染レポートの公表に合わせ、ユニセフとしての対応を計画してきました。ブラジル事務所は以下の4つの行動方針に基づき、対応計画の策定に向けて信頼できる情報を提供しています。
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ジカ熱が公衆衛生上の緊急事態となり、ラテンアメリカ・カリブ地域の少なくとも26カ国、さらにはアジアやアフリカ、太平洋諸国へ広がる恐れが懸念されています。ユニセフは各国政府と協力しながら、コミュニティへの感染予防の取り組みを働きかけています。ジカウイルスの拡散を防ぎ、新生児やその家族に対する影響を軽減するために必要な2016年の活動資金として、ユニセフは国際社会に1,382万米ドルの支援を求めています。
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