【2016年2月1日 アレッポ(シリア)発】
寒さが厳しいアレッポの町で、4歳のエスラくんと3歳の弟ワリードくんは室内の寒さを避けようと、避難所の外にわずかにある日当たりのよい場所を探しています。厳しい冬が再びシリアを襲っています。推定280万人の子どもたちが紛争を逃れ、シリア国内で避難民となっています。その多くは差し迫った状況で生活しています。
© UNICEF Syria/Aleppo//2016/Khouder Al-Issa |
「弟がまた病気にならないことだけが、今年の願いごとなの」とエスラくんはつぶやきます。
冬の荒天から子どもたちを守ろうと親たちは最善を尽くしていますが、シリアが危機に陥って5年近くが経ち、エスラくんの家族は、他の多くの家族と同様、経済的に困窮しています。暖かい服などの生活必需品を買うことができないのです。靴の修理屋として働き、家族のために何とか食べ物などの必需品を買うことができるエスラくんの父親は「私たちが子どもたちにあげられるのは、地元の慈善活動で手に入れた古着くらいですが、サイズが子どもたちに合うとは限りません」と話します。
「建設途中で未完成のビルで暮らしている子どもたちは極度の低温にさらされており、上気道感染症にかかる可能性が高いのです。このような感染症は、重度の肺炎や、深刻な肺炎症を引き起こす可能性があります」とユニセフのカルドン・アル・アサド保健担当官は述べています。
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現地で調達した子ども服を提供するユニセフの越冬支援によって、60万人近くの子どもたちに冬服が届けられ、エスラくんとワリードくんも冬服を受け取りました。さらに、30万人の子どもたちに暖かい毛布が提供され、約10万人の子どもたちが暖房の備わった教室で勉強することができています。
「今日は今までで一番いい日だよ」と、エスラくんは受け取ったばかりの冬服を着て喜びます。「この暖かい服があれば、弟はもう病気にならなくてすむもの」
ワリードくんは小さい手にはめた新しい手袋を広げながら「これは僕が生まれて初めてもらったプレゼントなんだ」と言います。
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「話したくないの」。5歳のタガリードちゃんが、悲しげな表情の理由を聞かれてこう答えます。
「迫撃砲が私たちの家に命中し、夫は1年前に亡くなりました」とタガリードちゃんの母親が話します。「その日のことは何もかも詳しく覚えています。家財は全て置いていきました。服、お金、家も。子どもたちを抱きかかえて、着の身着のまま逃げました」
タガリードちゃんはお父さん子でした。
「娘は末っ子で、父親はとても可愛がっていました。今着ているこのピンクのパジャマは、父親が最後に買ってくれたもので、娘は脱ぐのを嫌がるのです」と母親が話します。4人の子どもたちの食べ物を確保しようと奮闘する今の状況では、衣服は手の届かない贅沢品です。
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ユニセフのスタッフが衣料配布のために家を訪れた際、タガリードちゃんは物資の箱を受け取ってにっこりと微笑みました。その箱をタガリードちゃんは「魔法の箱」と呼びました。
新しい冬服に袖を通したタガリードちゃんは、「こんなに嬉しいことが起きるなんて、思ってもみなかった」と元気よく話します。(「タガリード」の名前は、「元気よく話す」という意味)
ユニセフの「魔法の箱」には、ジャケット、保温性の高いサーマルウェア、セーター、ズボン、靴下、靴、手袋、マフラー、ウールの帽子が入っています。
長く続く紛争により、シリアの国内避難民は650万人以上に上っています。冬の寒さは避難を強いられている家族に更なる苦しみを与えています。冬の差し迫ったニーズに対応するため、ユニセフは特に弱い立場に置かれた子どもたちが厳しい季節を乗り越えられるよう、また、基本的な保健サービスや教育を受けられるよう、支援を続けています。
越冬支援のおかげで、4歳のザイナブちゃんは、友だちの輪へ再び入っていくことができました。
「他の子どもたちが、寒い日に不似合いなサンダルを履いていたザイナブをからかいました」と母親は話します。「それ以来、娘は小さいサルのぬいぐるみと遊び、独りぼっちでいました」
箱を開け、新しい冬服を着ながら、ザイナブちゃんは嬉しそうにクスクス笑います。「新しいブーツでサッカーボールを蹴りたいな」と、古くなったサンダルを脱ぎ捨てて駆け出し、広場で遊ぶ子どもたちに交じっていきます。
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