【2020年3月12日 ヨルダン発】
子どものころ、大切にしていたものはなんですか? そうした思い出の品は、長い年月がたっても、手にするたびに、大切な人や当時の感情がよみがえってくるかもしれません。
2011年に勃発した紛争が、今なお続くシリア。紛争によって避難を余儀なくされ、多くを失ったシリアの子どもたちも、そうした大切な「たからもの」を、必要な持ち物の中にそっと忍ばせているのです。
ヨルダンのザータリ難民キャンプには、4万4,000人近くの5歳未満のシリア難民の子どもたちがいます。そうした子どもたちにとって、「たからもの」は、幸せな過去を思い出し、不安定で危険な状況のなかで安心をもたらしてくれます。
ザータリ難民キャンプで暮らす9人のシリア難民の子どもたちが、大切にしている「たからもの」と、それにまつわるストーリーを語りました。
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「このキーホルダーは、ずっと前にお父さんからもらったんだ」と父親の名前が刻まれたキーホルダーを手に、アーメッド (12歳)が語ります。アーメッドの父親は、シリアでの紛争が勃発した頃、心臓発作で亡くなりました。
アーメッドは現在、ザータリ難民キャンプでおばあちゃんと兄弟と一緒に暮らしています。
「お父さんとの思い出は、ほとんどないかな…。でも、ぼくの大好きな思い出は、川へピクニックに行ったときのこと。お父さんを思い出したいときは、このキーホルダーを取り出してながめるんだ」。
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ハラ(11歳)は、シリアから持ってきた複数の写真を、傷がつかないように、そっとしまっています。でも、以前の生活を思い出したいときは写真を取り出します。その中でも一番のお気に入りは、お兄ちゃんと一緒の写真です。
「この写真をとったのは、金曜日。モスクでの金曜礼拝のために、お母さんが私に素敵な服を着せてくれたの。お祈りの後、市場とレストランに連れて行ってくれて、それからこの写真を撮ったフォトスタジオに行きました。この写真を見ると、あの頃を思い出すの」とハラは語ります。
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ヤラ(10歳)が、誕生日プレゼントにお父さんからもらったお人形を手にしています。ヤラはその人形にファラという名前をつけました。
「シリアでは、とても怖い思いをしたの。人々が銃で撃ちあっていることもありました。パパが、必要なものを持って逃げるよって」と、ヤラはヨルダンに逃れてくる当時のことをふりかえります。「テディベアをつれてきたかったけど、パパとママに大きすぎるからダメ、って言われちゃった。だから、ファラをカバンに入れてきたの」。
ヤラは、いつかファラを連れてシリアに戻る、と心に決めています。「ファラにきれいな服を着せて、シリアに一緒に帰るの。そのときがきたら、今度こそは今持っているおもちゃを、みんなシリアに持っていきたいな」。
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「これはぼくのヒーロー、BEN10。エイリアンに変身して、世界を救うんだ」と、テディベアを見せながら、オマール(11歳)は話します。
オマールは、シリア紛争で2人の兄弟を亡くしました。「このテディベアは、(亡くなった)お兄ちゃんのアブドゥルラフマンが買ってくれて、しっかり面倒みるように言われたんだ。お兄ちゃんとは昔、BEN10のアニメを一緒に見ていたんだ」。
オマールの家族は、ほとんどの物をシリアに残したまま、ヨルダンに避難しなければなりませんでした。「でも、お母さんは、このBEN10をカバンに入れてくれたんだ」。
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ルダイナ(11歳)は、今もシリアの自宅の鍵を持っています。
「鍵を持ってきた理由は、シリアに戻れる日が来たら、私が自宅のドアを開けたいから」とルダイナは言います。ルダイナはザータリ難民キャンプにある学校の4年生で、生まれ故郷のシリアの記憶はありません。でもルダイナの両親は、シリアは美しい国よ、とルダイナに語りかけます。
「かつては、私たちにも家があったけど、今はこうして難民キャンプで暮らしてる。私の家はとても遠く離れたところにあるから、この鍵を手に取ると、とても悲しい気持ちになるの」とルダイナは言います。
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「これは私のブランケットです...おばあちゃんが私に買ってくれました」と、ブランケットをぎゅっと抱きしめながら話すヌール(12歳)。
「爆撃があって、逃げなきゃいけなかったことを覚えています。私はくるまれて、ここまでやってきました」。ヌールは、このブランケットに身を包んだとき、時には悲しくなることもあるけど、安心する、と言います。「できる限り長く使い続けたいな」。
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イマン(13歳)が幼いころ、両親は泣いているイマンにこのお人形を贈りました。お人形はルルと名付けられました。
「ルルと一緒にいると、安心できるの」と語るイマンは、怖いときや悲しいとき、ルルが気分を明るくしてくれると付け加えます。近頃はルルを目立たない場所にしまっていますが、妹がルルと遊ぶことは許しているの、とイマンは言います。「私はルルをずっと大切にします」。
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クサイ(13歳)にも、ずっと大切にしたいと思っているものがあります。通学用につかっていたかばんです。
「いつか僕に子どもができたら、僕のお父さんがこのかばんをくれたんだ、と言うつもりです」とクサイは言います。成長したクサイにとって、このかばんは小さくなってしまいましたが、父親のことを思い出せるたからものなので、とにかく大切に保管しています。「それに、このかばんはぼくの国(シリア)から持ってきたものだしね」。
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「この犬を連れてきました」と、小さなおもちゃの犬を手にして、15歳のサシャは言います。サシャがシリアを離れたのは9歳のときです。
「シリアを離れなければならなかったとき、大切なおもちゃがたくさんありましたが、この犬が一番のお気に入りでした」と、サシャはこの小さな犬をザータリ難民キャンプまで連れてきた時をふりかえります。
「私はこの犬を絶対に手放すことはありません。だから、この犬も私を守ってくれるかもしれません」とサシャは言います。「将来、私の子どもに、私とこの小さな犬の一生涯の経験を伝えたいと思っています。彼の人生は、私の人生そのものだからです」。
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2011年3月の紛争勃発以来、シリアでは国中のインフラが破壊され、安全を求めて国内外に避難する人々が後を絶ちません。
人道支援が必要な子どもの数は、シリア難民を受け入れている貧しい周辺諸国の子どもたちも合わせて1,200万人を超えています。
ユニセフは、シリアおよび周辺国(トルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプト)において、紛争下で苦しむ子どもたちへの支援を続けています。
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