2021年3月3日東京発
2011年3月11日に発生した、東日本大震災。
発生直後より、約半世紀ぶりの日本国内でのユニセフ支援活動が決定され、日本ユニセフ協会スタッフに加え、海外の現場から応援派遣されたユニセフの日本人専門家、被災地のユニセフ県協会、そして国内のパートナー企業・団体の協力のもと、緊急支援がスタートしました。
「あの日」からもうすぐ10年。当時震災支援に携わったユニセフの専門家から、被災された方々、そして、あたたかく力強いご支援をくださったみなさまに向けて、メッセージが届いております。
今回ご紹介するのは、教育専門官として、主に宮城県内の避難所で「子どもにやさしい空間」支援活動の展開に活躍した井本直歩子さんからのメッセージです。
大きな災害を経験し、非日常の中にいる子どもたちは、みな心にストレスや恐怖を抱えています。それが深い心の傷となる前に、一刻も早く心理社会的支援(心のケア)を始めることが重要です。そのため、子どもたちが安心できる場所で、遊びや周囲の人々とのかかわりの中で心を開放できるよう、各地の避難所で『子どもにやさしい空間』づくりを進めました。
「みなさんこんにちは、井本直歩子です。
10年前、私はハイチで勤務しておりました。ハイチでも、東日本大震災の1年前に大規模な地震がありまして、そちらの支援に携わっていました。 東北の被災地に入ると、あまりにもハイチや世界の他の被災地と、東北の状況とにギャップがあって、そこにすごく驚きました。どういうことかというと、東北に入った時はまだ震災発生から2週間ぐらいだったのですが、避難所に行くとすべてのことがきちんとオーガナイズされていて、役割分担がされていました。 私たちは「子どもにやさしい空間」の展開に向けて活動していましたが、そういったお願いをすると、避難所のリーダーの方が 「あそこの図書室のスペースを使ったらどうかな」とその担当者に連絡してくださったりですとか、本当に物事がスムーズに進んだことを覚えています。 そして「子どもにやさしい空間」を展開するにあたって、普段よりユニセフの世界中の被災地で使っている「ECDキット(箱の中の幼稚園)」というものを使ったのだけれども、果たして、途上国で使っているものが使える(日本の子どもたちに受け入れられる)のかどうか、少し心配だったんです。 けれども、蓋を開けてみると、本当に子どもたちが大喜びしてくれて、全部のおもちゃに対して目をキラキラ輝かせて反応してくれて、それを見た時は感動しましたし、「世界中どこでも、子どもって一緒なんだ」という気持ちになれました。 本当にあの時は子どもたちだけではなくて、親御さんたちもみんな涙を流して喜んでくださって、避難所に笑顔が戻ったのがとても嬉しかったです。 まだまだ厳しい状況が続くと思いますけれども、みなさんの心に寄り添いながら、 井本 直歩子(いもと なおこ) |
※日本ユニセフ協会公式ホームページでは、3月1日から3月11日にかけて、ユニセフ東日本大震災緊急・復興支援に携わったユニセフ日本人職員等からのメッセージを順次紹介しています。
メッセージ一覧
「あの日から10年~支援現場の記憶」(1) 國井修さんのメッセージ
「あの日から10年~支援現場の記憶」(2) 井本直歩子さんのメッセージ
「あの日から10年~支援現場の記憶」(3) 竹友有二さんのメッセージ
「あの日から10年~支援現場の記憶」(4) 武居利恵さんのメッセージ
「あの日から10年~支援現場の記憶」(5) 近藤智春さんのメッセージ
「あの日から10年~支援現場の記憶」(6) 加藤正寛さんのメッセージ