【2021年3月10日 アンマン(ヨルダン)/ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は、シリアで紛争が始まってからまもなく10年が経過する中で、紛争によって子どもたちの命と未来が危機に直面していると警鐘を鳴らしました。多くの子どもたちや家族の置かれている状況は依然として不安定で、人道支援を必要としている子どもは約90%にのぼり、2020年に限っても20%も増加しています。
© UNICEF/UN0405704/Akacha |
「シリアの子どもたちや家族がいまも困難な状況にある中で、このような厳しい節目を横目に通り過ぎることは許されません」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「支援が必要なのは今です。国際社会は、シリアに平和をもたらし、子どもたちへの支援を活発化させるために、あらゆる努力をしなければなりません」
10年に及ぶ紛争は、シリアの子どもたちや家族に大きな影響をもたらしています。
検証済みのデータによると、2011年から2020年の間に
© UNICEF/UN0384471/Souleiman |
特に、シリア北部の状況は憂慮すべきものです。北西部では、何百万人もの子どもたちが依然として避難生活を送っており、多くの家族が安全を求めて何度も避難し、中には7回も移動している家族もいます。彼らは、今年も長い冬を過ごし、集中豪雨や雪などの厳しい天候に晒され、テントやシェルター、破壊された建物や未完成の建物で生活しています。2020年に記録された重大な暴力行為の75%以上が北西部で発生しています。
アルホル難民キャンプをはじめとするシリア北東部では、国籍が少なくとも60カ国にわたる2万7,500人の子どもたちと、武装グループと関わりのあった数千人のシリアの子どもたちが、キャンプや収容所で苦しんでいます。アルホルでは最近、暴力が急増しており、人々は命の危険に晒されています。地域社会への再統合や子どもたちの出身国への安全な送還など、長期的な解決策が必要です。
さらに、世界のシリア難民の全体の83%を受け入れている周辺各国では、2012年以降、難民の子どもの数が10倍以上の250万人に増加しており、すでに厳しい状態にあるコミュニティにさらなる負担がかかっています。
この10年間、ユニセフはシリア危機における支援活動を拡大し、緊急の人道ニーズだけでなく、長期的なニーズにも対応してきました。2020年に限っても、急速に拡大する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを含む様々な課題の中で、ユニセフはシリアとその周辺国の子どもたちと家族に、以下を含む人道支援を提供してきました。
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シリアで紛争が始まってから3月15日で10年を迎えるにあたり、ユニセフは紛争当事者、彼らに影響力を持つ人々、そして国際社会に次のことをあらためて求めます。
ユニセフなど人道支援団体は、シリアの子どもたちに支援を届けるために資金を緊急に必要としています。ユニセフは2021年、シリア及び周辺国での活動を行う上で、約14億米ドルの資金を要請します。
武装グループと関わりのあった子ども、特にシリア北東部の子どもたちは、地域社会に再統合されなければなりません。外国籍の子どもたちは、出身国に安全に送還されなければなりません。
紛争当事者は、子どもや、学校、病院、診療所、給水所などの民間のインフラへの攻撃を控えなければなりません。
ユニセフは、国境を越えた支援に関する国連安全保障理事会の決議を更新し、シリアの国境を越えた支援を継続できるようにすることを求めます。
この紛争に勝者はなく、最も高い代償を払っているのはシリアの子どもたちです。今こそ、紛争当事国は銃を捨て、交渉のテーブルにつくべきです。平和と外交こそが、この深淵から抜け出す唯一の方法なのです。
「シリアの子どもや若者は、信じられないような困難に直面しているにも関わらず、忍耐と不屈の決意をもって日々過ごしています。学び、困難を克服し、よりよい未来を築こうとする子どもたちの強い意志を称賛します」とユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のテッド・チャイバンは述べました。「ユニセフはこの10年間、近年の歴史の中で最も深刻な紛争の一つであるシリア紛争において、シリアの人々と受入国を支援してきました。私たちはこれからもシリアの子どもたちと受入国に寄り添い続け、皆さまの寛大なご支援を期待しています」
ユニセフは、シリアで紛争が始まってからこの10年間で子どもたちが受けた甚大な影響の一部を数字で伝えるインフォグラフを公開しました。(各画像をクリックすると、拡大してご覧いただけます)
©日本ユニセフ協会/2021 |
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