2023年4月24日ジュネーブ/ニューヨーク/シアトル発
- 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、100カ国以上で必要不可欠な予防接種率が低下し、はしか、ジフテリア、ポリオ、黄熱病の集団感染が増加しました。
- 「The Big Catch-up(大きく取り戻す)」は、子どもの予防接種レベルを少なくともパンデミック前の水準にまで引き上げ、またそれを上回ろうと努める広範囲の取り組みです。
- 国家レベル・グローバル規模のさまざまな保健パートナーが主導する「The Big Catch-up」は、将来的に不可欠な予防接種のためのプライマリ・ヘルスケア事業を強化することも目指しています。
「The Big Catch-up」発表
ユニセフ(国連児童基金)、WHO(世界保健機関)、Gaviワクチンアライアンス、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、「予防接種アジェンダ2030」やその他多くの国家レベル・グローバル規模の保健パートナーと共に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる予防接種率の後退を受けて、本日、子どもへの接種を強化するための的を絞った世界的な取り組み「The Big Catch-up」を発表しました。
この取り組みは、パンデミックが始まって以来、医療サービスへの過度な負担、診療所の閉鎖、薬びんや注射器などの医療品の輸出入の中断が原因で、100カ国以上で子どもへのワクチン接種率が低下したことを受け、その状況を反転させることを目的としています。コミュニティや家族はパンデミック対応の影響で、ロックダウンを経験し、外出やサービスへのアクセスが制限され、資金や人的リソースが制約され、保健用品の入手もままならなくなりました。また、紛争、気候危機、ワクチン躊躇(vaccine hesitancy)といった現在も続く課題も、予防接種率低下の一因となりました。
2021年だけでも2,500万人以上の子どもが、受けるべきワクチンの接種機会を1回以上逃しており、はしか、ジフテリア、ポリオ、黄熱病などの予防可能な病気の集団感染はすでに広がりを見せ深刻さを増しています。The Big Catch-upは、ワクチンで予防可能な病気の集団感染を防ぎ、子どもたちの命を守り、国の保健医療システムを強化することを目的としています。
各国の人々や政府に対して、接種を受けられなかった子どもたちに手を差し伸べることで、後れを取り戻す一助となるよう呼びかける一方で、The Big Catch-upでは、2021年に接種を受けられなかった子どもたちの4分の3が住む20カ国*に特に焦点を当てます。
予防接種の後れを取り戻すために
世界の予防接種率は低下していますが、回復の明るい兆しもあります。例えば、初期の報告によると、インドは2022年に必須予防接種が大幅に回復し、ウガンダはパンデミックの間も、高い接種率を維持しました。また、脆弱な状況にある人々への支援で成果を挙げた国もあります。ケニアでは、コミュニティ・ヘルスワーカーや地元のリーダーと協働することで、同国北部の遊牧民の予防接種レベルを向上させました。
子どもへの予防接種を確実に進捗させるため、パートナーは各国と協力して、医療従事者の増強、医療サービスの提供の改善、コミュニティ内でのワクチンへの信頼と需要の構築、予防接種回復のためのずれや障壁への対処を行っています。子どもへの予防接種の後れを取り戻すことに加え、特に負担が最も大きい低・中所得国において、子宮頸がん予防のために10代の若者へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを導入する取り組みを強化する必要があります。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「通常、子どもたちは定期予防接種を受けることで、初めてその国の保健医療システムに登録されるため、早期のワクチンを受け損ねた子どもたちは、その恩恵から長期的に切り離されるリスクが高まります。こうした子どもたちへの予防接種を届けるのが遅くなればなるほど、子どもたちはより脆弱になり、致命的な病気に集団感染するリスクが高まります。各国、グローバルパートナーおよび地域コミュニティは、予防接種事業を強化し、ワクチンへの信頼を築き、命を守るために一体となって取り組まなければなりません」と述べています。
*2021年に予防接種を受けられなかった子どもの4分の3が住んでいる20カ国は、以下のとおり。
アフガニスタン、アンゴラ、ブラジル、カメルーン、チャド、朝鮮民主主義人民共和国、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ソマリア、マダガスカル、メキシコ、モザンビーク、ミャンマー、タンザニア、ベトナム