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日本ユニセフ協会

人道危機緊急募金情報

スーダン
未来を脅かす栄養危機
命を守る、ユニセフの支援

2025年3月13日スーダン

紛争下のスーダン。絶え間ない暴力、大規模な避難民の発生といった、恐ろしい事態が報道されています。これらは、いわば「目に見える」危機です。その影で、別の緊急事態も進行しています。それは、世代を超えて引き継がれ、国の未来を揺るがす事態です。スーダンにいま、目に見えにくい、「静かな」危機が訪れています。

ナイル川州アトバラの保健施設で、母親に抱かれる子ども

© UNICEF/UNI607290/Ahmed
   ナイル川州アトバラの保健施設で、母親に抱かれる子ども(スーダン、2024年6月1日撮影)

「息子のことが心配でなりません」。クルードさんは生後14カ月のイスマイルちゃんについて語ります。「恐怖に押しつぶされそうです。家の中に、イスマイルに食べさせるものが何もないのです」

イスマイルちゃんは約1カ月前から、下痢と嘔吐を繰り返すようになりました。クルードさんは栄養不良を心配し、検査のため、イスマイルちゃんを保健センターに連れて行きました。センターのスタッフはイスマイルちゃんに、すぐに食べられる栄養治療食を与えました。ユニセフが支援現場で用いる栄養治療食「プランピー・ナッツ」は、エネルギー値の高い微量栄養素ペーストで、ピーナッツ、砂糖、粉ミルク、油、ビタミン、ミネラルから作られています。

「今日はイスマイルの調子が良さそうです」とクルードさん。「治療食のお陰で、下痢が止まり、具合が良くなりました

栄養不良の検査を受ける、14か月のイスマイルちゃん(2024年9月17日撮影、中央ダルフール州ロコロ)

© UNICEF/UNI645800/Tarig
栄養不良の検査を受ける、14か月のイスマイルちゃん(スーダン、2024年9月17日撮影)

紛争により、栄養不良の子どもが増加

ナイル川州アトバラのヘイラル・アラブ保健施設で、栄養治療食を手にする9カ月のマハムードちゃんと母親

© UNICEF/UNI607342/Ahmed
ナイル川州アトバラのヘイラル・アラブ保健施設で、栄養治療食を手にする9カ月のマハムードちゃんと母親(スーダン、2024年6月1日撮影)

20カ月以上続く紛争で栄養不良の割合が急増しており、スーダンはかつてない栄養危機に直面しています。今年中に5歳未満の子ども約320万人が急性栄養不良に陥る可能性があり、そのうち77万人以上は重度の急性栄養不良に苦しむと予想されています。

重度の急性栄養不良は栄養不良のなかでも最も差し迫った、明らかに、命の危機にある状態です。重度の急性栄養不良(別名:重度の消耗症)の子どもは、痩せすぎていて、免疫系が弱く、発達遅延や病気、死に至りやすい状態です。

病気の流行、保健や衛生サービスなどの受けづらさ、世界最大規模の避難民危機。こうした要因が重なることで、スーダンで広がる栄養不足の災禍は、さらに悪化しています。

「移動が長引くにつれ、子どもが衰弱」

「以前は4.7キロだった体重が、今は5.9キロになりました」とラシャさん。栄養治療食を手にするオメルちゃん

© UNICEF/UNI689274/Elfatih
「以前は4.7キロだった体重が、今は5.9キロになりました」とラシャさん。栄養治療食を手にするウマルちゃん(スーダン、2024年10月14日撮影)

 

「紛争が始まったころから、ずっと苦しんでいます」-生後9カ月の息子、オメルちゃんを抱きながら、ラシャさんは語ります。「最初はゲジーラ州、次にガダーレフ州、そして今はカッサラ州に避難しました」

2023年4月に戦闘が激化して以来、ときに猛暑の中を何日も歩き続けるような過酷な避難が、日常となっています。ラシャさんは、移動が長引くにつれ、オメルちゃんが衰弱してきた、と言います。不安を募らせながら、ラシャさんはオメルちゃんを診療所に連れて行きました。オメルちゃんは、治療のために病院に送られました。

「12日経って、オメルは回復しました。今も医師の診察を受けています」とラシャさん。「医師が体重を測るたびに、オメルは回復をみせ、また次の栄養補助食品をもらっています」

避難を余儀なくされた子どもは顕著に、栄養不良に陥りやすくなります。移動中に栄養価の高い食品を手に入れることは難しく、また避難所を見つけたとしても、治療や、他のサービスを受けられないことがほとんどです。2024年8月、数十万人が収容される北ダルフール州内の避難民キャンプで、飢きんの発生が確認されました。

ボランティアが家々を訪問、家族を見守る

ユニセフが支援するキャンペーンで、鉄分の錠剤を受け取った妊婦(2024年12月2日撮影、カッサラ州アロマ)

© UNICEF/UNI707434/Rajab
カッサラ州でのキャンペーンで、鉄分の錠剤を受け取った妊婦(スーダン、2024年12月2日撮影)

 

子どもにビタミンAを投与する準備をする、ボランティアの保健スタッフ(2024年12月2日撮影、カッサラ州アロマ)

© UNICEF/UNI707444/Rajab
子どもにビタミンAを投与する準備をする、ボランティアの保健スタッフ(スーダン、2024年12月2日撮影)

 

国中で飢きんのリスクが高まっていることを受け、ユニセフは栄養支援を急速に拡大し、パートナーとともに取り組んでいます。東部のカッサラ州アロマでは、ユニセフの支援で、保健ボランティアのチームが家々を訪問し、子どもの栄養状態の検査を行っています。

「ボランティアが家まで来て、私たちと子どもの様子を診てくれます。息子は検査を受け、健康を保つためのビタミン剤をもらいました」とナフィサさん。訪問の際に、子どもたちは駆虫薬(虫下し)を受け取り、妊婦は鉄剤と、母体健康についての指導も受けます。「こうした訪問を続けてほしいです。定期的に来てもらい、母親たちと子どもの様子を見守ってもらいたいのです」と付け加えました。

ジャミラさんも、訪問を受けた母親の一人です。娘のアムナちゃんは、ボランティアによる検査で栄養不良の可能性を指摘され、保健施設に紹介されました。

母親のジャミラさんに抱かれて、栄養不良の検査を受けるアムナちゃん

© UNICEF/UNI707407/Rajab
母親のジャミラさんに抱かれて、栄養不良の検査を受けるアムナちゃん(スーダン、2024年12月2日撮影)

 

「医師の診察で、栄養不良だと診断されました」とジャミラさん。「保健施設でもらったパック入りの治療食を、娘はよく食べています。早く回復してほしいです」

子どもの栄養不良、生涯におよぶ影響も

しかし、子どもたちが必要な治療を確実に受けられるようにすること、保健医療施設に十分な栄養治療食などを確保することは、気が遠くなるような難題です。物資輸送に非常に時間がかかるためです。現在も続く紛争の影響で、許可証の承認、検問所、貨物検査には数日、ときには数週間かかります。雨季には、道路が冠水しインフラが流され、広大な国内の横断にはさらなる危険が伴うのです。

家を訪れた保健ボランティアを見つめる赤ちゃん(2024年12月2日撮影、カッサラ州アロマ)

© UNICEF/UNI707454/Rajab
家を訪れた保健ボランティアを見つめる赤ちゃん(スーダン、2024年12月2日撮影)

さらに、たとえ回復したとしても、栄養不良は生涯にわたって影響を及ぼす可能性があります。栄養が十分に摂取できなかった子どもは、発育阻害(スタンティング)、消耗症、もしくはその両方の影響を受ける恐れがあります。

発育阻害の子どもは年齢に対して身長が低く、脳が十分な認知能力まで発達しない可能性があります。その結果、子ども時代の学習能力が低下し、成人になってからの収入にも影響を及ぼし、地域社会への貢献が難しくなることもあります。

紛争が長引くにつれ、スーダンは一つの世代を失うという、国の未来に深刻な影響を及ぼす危険にさらされているのです。

 

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