[2006年1月11日 タイ チャン・ライ発]
■ ヌーちゃんとの出会い
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この時計はヌーが薬を飲む時間を知らせてくれます。何気ないことのように見えますが、これはヌーがHIV/エイズの治療を受ける上でとても大切なことなのです。
© UNICEF
Thailand/2005/Few |
タイ北部にあるNGO「エイズ・アクセス財団」の会議室に小さな女の子が座っていました。 彼女の名前はヌー(仮名)ちゃん。父親も母親もエイズによって亡くなりました。そして、ヌーちゃんの体もHIVに侵されています。
ヌーちゃんは現在12歳。でもずっと小さくみえます。それは、HIVが彼女の体を痛々しいほど細く、弱くさせているからです。その一方、「抗レトロウィルス薬」や「日和見感染症」などの医学用語を話す彼女は、見た目よりずっと大人びて見えます。 孤児となり、アルコール中毒の祖父と暮らす日々。ヌーちゃんは、家事をすべてこなし、家計もやりくりしています。
ヌーちゃんは毎月70kmも離れたクリニックに一人で薬を取りに行きます。亡くなった母親が錠剤を飲んでいたのを見てきたヌーちゃんは、シロップ状の薬しか口にしません。 「お医者さんに行くのは1ヶ月に1回。一人で行くのはいいの。でも薬が重くてそれが大変」ヌーちゃんは話します。
■ ヌーちゃんの話
「病気になってもう1年。息がハァハァして咳が出るの。病院に行ったら、感染症にかかっているって言われた。その時はまだお母さんが生きていたから、お母さんと一緒に行ったの。よく分からない検査をいっぱいされたけど、お医者さんは、私のどこが悪いかわからなかったから、チェン・マイ病院に行ったの。そしたら、私がHIVにかかっているって。HIVにかかると、もしかしたらエイズになって、元気じゃなくなっちゃうかもしれないって言われたの」
「お母さんはその年に死んじゃった。それから、おじいちゃんがわたしをぶったり、怒鳴ったりするようになったの。だから、しばらくはNGOのところにいさせてもらったんだけど、おじいちゃんがさみしがったから、家にもどったの。おじいちゃんは今はお酒をそんなに飲まないし、仕事もしているよ。毎日ご飯を食べさせてくれるし、NGOに行く私をバス停まで送ってくれるの」
■ 保健員さんにもらった時計
「毎日2回、朝7時と夜7時に薬を飲んでいているの。お医者さんが、ちゃんと時間通り飲まなきゃだめって言ったから。薬を飲み始めてから4ヵ月。前より元気になった気がするし、ご飯も食べられるようになったよ」
「毎日決まった時間に薬を飲めるように、保健センターの人が時計をくれた。時計って本当に便利。だって、薬を飲む時間がくると鳴って知らせてくれるんだもの。そうじゃなきゃ絶対忘れちゃう。
「エイズが怖いよ。薬を飲み忘れたことに気づいたら、すぐに飲むようにしているの。薬を飲んでも治らないんだってことは知ってるけど、薬さえ飲んでいれば、きっと病気は悪くならないと思うわ」
■ ビジネスウーマンになりたいの
「友達は、私が病気だって知ったとき、はじめは遊びに来てくれなかった。こう言われたの『ヌーはエイズなんでしょう。近寄らないで、一緒に勉強したくない』。 だけど、エイズは簡単にうつる病気じゃないし、一緒に遊んでも大丈夫だなんだよ。今は友達もわかってくれて、私のようすを見に来てくれたり、私が会いに行ったりしてるの」
「今は学校に行っていない。具合が悪いの。学校の先生も、もう少し良くなったら、学校にもどっていらっしゃいって。だから、来年になるのを待ってるの。もっともっと勉強して、ビジネスウーマンになりたいんだ。なれるって99%信じてる。でも1%は不安かな…。肺に問題があるみたいで、雨が降って寒い日には息ができなくなるの…。」
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