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財団法人日本ユニセフ協会
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UNITE FOR CHILDREN UNITE AGAINST AIDS

ザンビア:エイズと戦う携帯アプリ

【2012年8月22日 ザンビア発】

© UNICEF Zambia/2011/Nesbitt
ザンビア南部にあるナメエムボ診療所で、HIV母子感染を予防するためのプログラムに参加している生後6週間の男の子に「乾燥血液スポット(DBS)」と呼ばれるHIV検査が行われている。

ザンビア南部の農村部にあるナメエムボ診療所では、パーテーションで区切られた小さなスペースの中で、グロリア・モオンガさんが、生後6週間の息子のイッサク・シモオヤちゃんを静かに抱いています。看護師のエクリナ・チベンガさんは、専用の紙の上に10セント硬貨ほどの大きさの血液を5滴採取するため、イッサクちゃんの小さな足先から採血しています。

21歳の母親のグロリアさんは、HIVと共に生きています。エクリナさんは、イッサクちゃんがHIVに感染しているか否かを診断するために、「乾燥血液スポット(DBS)」と呼ばれるカードに血液を採取しているのです。イッサクちゃんを出産する前、グロリアさんは、世界中で成果を上げているHIV母子感染率を低く抑えるための「母子感染予防(PMTCT)」プログラムを受けていました。グロリアさんは、自分がHIVに感染していることを知って1年以上になります。イサックちゃんのHIV感染の検査結果は、2週間後に出る予定です。この結果は、SMS(携帯電話のショート・メッセージ・サービス)を通じて、エクリナさんの携帯電話に送信されることになっています。「息子は(医療サービス等で)守られていることを知っているので、安心していられます」 グロリアさんはこう話します。

HIV感染予防のためのSMS

この「乾燥血液スポット(DBS)」の活用は、ユニセフ・ザンビア事務所が、ザンビア保健省、クリントン・ヘルス・アクセス・イニシアチブ(CHAI)、ボストン大学提携のザンビア応用保健研究センター(ZCHARD)と協働で支援している「ムワナ」と呼ばれる革新的なHIV予防プロジェクトの一環として実施されています。「ムワナ」プログラムでは、携帯電話のネットワークを、この初期乳児HIV診断テストサービス(EID)だけでなく、継続的な経過観察、出産後のフォローアップや産後ケアを改善するために活用しています。

「ムワナ」プログラムは、2010年6月にスタート。HIV検査研究所からの診断結果が、農村部の診療所に届くのにあまりにも時間が掛かりすぎるという、(開発途上国で)典型的な状況を改善するために、SMSを利用して乳児の初期HIV感染の診断結果を届ける試験的な取り組みとして、始められました。

このプログラムは、十分なサービスを受けることができていなかった母子や、支援の届き難い農村部の診療所にとって、革新的で、規模の拡大も容易で、効果的な結果を得られる保健サービスを提供する仕組みを創出することを目的にしています。現在このプロジェクトでは、データ収集や物流の調整、情報のやりとりなどをダイナミックに展開できる、無償で公開されているRapidSMSと呼ばれる携帯電話ベースのアプリケーションを利用しています。

時間の短縮は、救える命の数に比例する
© UNICEF Zambia/2011/Nesbitt
ザンビア南部の州で、初期乳児HIV診断テストサービス(EID)の結果を携帯電話のSMSで受け取る保健スタッフのザガムボ・ベデ・マジワカさん。

ナメエムボ診療所でも、検査結果を受け取るまでに掛かる日数は、66日から14日に短縮されました。「DBSの検査結果を知らせてくれるSMSに、本当に助けられています。以前までは、検査結果を知ることが難しく、時間が長くかかっていました。検査結果を教えてもらうために行かなければならない最も近い大きな診療所まで、ここから28キロもあるのです」「私たちの患者さんの多くは、(その大きな診療所まで)歩いて行かなければなりません」ナメエムボ診療所に10年間勤めているエクリナさんはこう話します。

「サンプルを採取してから、検査結果を各機関に届けるまでに掛かる時間は、平均で約50パーセント短縮されました。診療所に届く検査結果の数も、紙で届けられていた頃に比べて30パーセント増加したのです」診療所で公衆衛生の管理指導員と保健士で、「母子感染予防(PMTCT)」プログラムを担当しているザガムボ・ベデ・マジワカさんはこのように話しました。

個人情報保護のため、このシステムは、厳重な検証処理を受け、安全に管理されています。訓練を受けたスタッフだけしか、個人の携帯電話を利用して個人を識別するコードにアクセスして検査結果を取得することはできません。

エイズと戦う携帯アプリ

約1万5,000人にさまざまな医療・保健サービスを提供しているこの診療所では、5つある診療室のそれぞれの部屋で、この革新的なSMSシステムが効果的なサービスの提供に大きな役割を果たしているのを見ることができます。一つの診察室では、ある若い母親が、女の子を出産したところでした。ベッドの横では、「RemindMi」と呼ばれる携帯アプリを提供する事業者のスタッフのリナ・チョオチャさんが、生まれたばかりの赤ちゃんの出生登録を行っています。スケジュール管理や共有、通知の機能を持つ「RemindMi」は、産後のフォローアップに重要な役割を果たしています。グロリアさんに産後検診の予定を知らせたのも「RemindMi」でした。

現在、「ムワナ」プログラムは、ザンビアの6つの州の14の主要な農村地域にある62の保健施設で実施されています。2014年までに、全ての保健施設でEIDサービスを提供するべく支援が拡大される予定です。

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