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日本ユニセフ協会
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ユニセフ支援事業として最後の里親研修会
心理士派遣から始まった活動がすべて終了
今後に活かされていく知見

【2016年11月26日  岩手県大船渡市発】

この冬一番の冷え込みとなった2016年11月26日午後、岩手県大船渡市の県立福祉の里センターで、「平成28年度 里親について学ぶ研修会」が開催されました。社会福祉法人大洋会と児童家庭支援センター大洋が主催し、日本ユニセフ協会と岩手県ユニセフ協会が開催に協力した研修会は、今回、気仙・両磐・胆江各地区里親会の合同研修会の一貫として位置づけられ、里親さんや民生児童委員、大洋学園を始めとする県内の児童養護施設や乳児院の職員、児童相談所職員、児童家庭支援センター大洋の職員など、総勢約40名が参加しました。

「平成28年度 里親について学ぶ研修会」

今回は、気仙・両磐・胆江各地区里親会の合同研修会の一貫として位置づけられたため、参加者の中には、午前中に隣接する陸前高田市内に震災孤児を支援している「あしなが育英会」が建設したレインボーハウスで開催された同会主催の研修会を受講された方々も多数参加されました。

© 日本ユニセフ協会

今回は、気仙・両磐・胆江各地区里親会の合同研修会の一貫として位置づけられたため、参加者の中には、午前中に隣接する陸前高田市内に震災孤児を支援している「あしなが育英会」が建設したレインボーハウスで開催された同会主催の研修会を受講された方々も多数参加されました。

研修会冒頭の講演には、2013年に大阪で開催された国際フォスターケア機構(IFCO)の世界大会で当協会が主催したシンポジウムにも登壇いただいた全国ファミリーホーム協議会と宮城県里親会のト蔵康行会長が登壇。里親として、31年間に、2歳から17歳までの20人の子どもたちを育てられた経験も踏まえ、18歳で「措置解除」(里親の元を離れること)になった後の子どもたちの自立を支えるための仕組みづくりや、一貫性・普遍性のある支援・制度の確立の重要性などを訴えられました。例えば、東日本大震災で両親を亡くした子どもたちには、実質的に大学授業料を免除する支援の仕組みが多数つくられました。一方で、震災ではない理由で同じような境遇に置かれている子どもたちを対象にした支援や制度は、まだ一般的ではありません。東日本大震災の経験が、緊急時の一過性の支援ではなく、恒常的な子ども支援の施策の拡充の必要性を明らかされました。

続いて、岩手県里親会の佐々木裕副会長が、「里親のわたし」と題し、発達に特性を持った子の養育に携わられた経験を報告。幼稚園や学校、地域の方々に大いに助けられたことなど、具体的な事例をお話いただきました。佐々木さんは、「自分たち(里親)が里子に育てられ成長している」と語ります。そして、「地域や社会が子育てに参加することで、地域や社会も子どもに育てられている」ともおっしゃいます。こちらも、「里親子」の子育てに留まらず、すべての家庭、そして少子高齢化に悩む多くの社会の中での「子育て」に示唆を与える普遍的な考え方ではないでしょうか。

事業終了にあたって

2011年9月に大船渡市の児童家庭支援センター大洋に心理士を派遣する形で始まり、その後、より包括的な「里親子支援」に発展した日本ユニセフ協会と全国児童家庭支援センター協議会との連携事業も、この12月で終了いたします。

児童家庭支援センター大洋の職員として、岩手県内で展開した様々な事業に携わってくださった船野克好さんは、「連携事業の中で、里親子キャンプなどを実施したことで、県内の里親会の方々や他養護施設など児童家庭支援センター大洋もつながりを広げることができたことに感謝しています」とお話くださいました。また、事業スタート当初より、全国児童家庭支援センター協議会で本事業を担当されてきた坂口明夫副会長(福岡県甘木山学園)は、次のようなメッセージを寄せてくださいました。

「子どもの貧困や社会的養護など、日本にも子どもたちの課題がたくさんあります。ユニセフには、日本の子どもたちの支援にも何らかの形で継続して取り組んでいただければと思うところです」

東北で得た知見

2016年11月1日現在、県内で「里親」に登録されている方々は189組。うち79組が、実際に里子を委託されています。こうした里親を支える県里親会の各支部は、一年を通じて「里親サロン」を開催し、里親さんたち同士の交流なども進めています。一方、県内には「ファミリーホーム」と呼ばれる小規模住居型児童養育施設はまだ一棟もありません。児童養護施設や里親制度と並ぶ新たな養護制度の形として誕生した「ファミリーホーム」の入居者数は5~6人程で、従来型の児童養護施設よりも、より家庭に近い環境を提供します。様々な理由で実子と一緒に住むことができないながら、里親という個人家庭に子どもを託すことを躊躇することが少なくない実親にも、それほど抵抗なく受け入れられる養護の形とも言われています。

「子どもの権利条約」や国連の「子どもの代替的養護に関する指針」は、実親を失ったり一緒に住めない状況に置かれている子どもたちも、施設ではなく家庭的な環境で養育されることが望ましいとしています。こうした世界的な流れの中、6年前、日本政府も、児童養護施設等のケア単位の小規模化の推進や、里親やファミリーホームの拡充などの家庭的養護の推進を内容とする「子ども・子育てビジョン」を閣議決定し、里親と暮らす子どもの割合を、平成26年までに10.4%(平成20年度値)から16%に向上させるとする数値目標を掲げました。日本ユニセフ協会も、本年4月、東日本大震災被災地での取り組みなども踏まえ、すべての子どもが“家庭”で暮らす社会の実現を訴える「子どもの家庭養育推進官民協議会」に参加しました。

足掛け6年にわたり、東日本大震災の被災地で得た知見は、日本の子どもたちが直面する様々な課題の解決に向けた施策や、子どもたちを支える施策の拡充を訴える活動にも生かされはじめています。

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