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日本ユニセフ協会

シリア緊急募金

シリア
子どもの3人に1人が慢性的な栄養不良
ユニセフ事務局長スピーチ概要

2022年5月10日ブリュッセル(ベルギー)/ニューヨーク

「シリア及び地域の将来の支援に関する第6回ブリュッセル会議」において、ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルが発言した内容を抜粋してお知らせします。

人口の9割が貧困状態に

ユニセフによる栄養状態の検査を受ける1歳半のイスハークちゃん。母親は「イスハークはとても痩せていて、遊ぶ元気もなかったんです」と話す。(シリア、2022年3月撮影)

© UNICEF/UN0634994/Belal
ユニセフによる栄養状態の検査を受ける1歳半のイスハークちゃん。母親は「イスハークはとても痩せていて、遊ぶ元気もなかったんです」と話す。(シリア、2022年3月撮影)

今日のシリアは、子どもにとって地球上で最も危険な場所の一つです。シリアの人々の90%近くが、貧困下に暮らしており、全世代が、生き残るために苦闘しています。同国では、650万人以上の子どもが緊急支援を必要としており、この数は紛争が始まって以来、最多となっています。

11年にわたる紛争と経済制裁は、シリア経済に壊滅的な影響を与え、25年前の開発レベルまで後退させました。保健、栄養、水と衛生、教育、社会的保護など、子どもが頼るべき基本的な制度やサービスのほとんどがギリギリまで削減されています。

各家庭は、食卓に食べ物を並べることにすら苦労しています。今年2月から3月にかけて、標準的な食料価格は、24%近くも跳ね上がりました。全ての子どもの3人に1人が、慢性的な栄養不良に陥っています。そして、ウクライナ紛争の影響により、食料価格における状況は、さらに悪化しています。シリアは、子どもにとって危険な時代にあり、命にかかわることさえあるのです。

身体的だけでなく心理的苦痛も訴え

紛争によって破壊された学校を眺める14歳のアヤさん。彼女は自宅にいたときに爆撃にあって負傷し、心にも傷を抱えている。(シリア、2022年2月撮影)

© UNICEF/UN0635253/Shahan
紛争によって破壊された学校を眺める14歳のアヤさん。彼女は自宅にいたときに爆撃にあって負傷し、心にも傷を抱えている。(シリア、2022年2月撮影)

民間インフラへの攻撃は日常茶飯事になっています。産科病院や小児科病棟を含め、600以上の医療施設が攻撃を受けています。紛争が始まって以来、1万3,000人近くの子どもが死傷したことが確認されていますが、実際の犠牲者がもっと多いことは明らかです。

紛争は、シリアの子どもたちに身体的な傷を負わせただけではありません。昨年、シリアの子どもの3人に1人が心理的苦痛の兆候を示しましたが、この目に見えない傷は、生涯続く可能性があります。

シリア紛争から逃れてきた子どもたちも、トラウマを抱えています。現在、およそ280万人のシリアの子どもが、ヨルダン、レバノン、イラク、エジプト、トルコで生活しています。こうした子どもの生活は、喪失、リスク、不安に満ちています。ある11歳の女の子は、「家(home)という言葉が何を意味するのかわからない」と、ユニセフの職員に話してくれました。

シリアの子どもたちに関心を

避難所と化した学校で暮らす家族。ユニセフは避難を余儀なくされた人々に命を守る支援を行っている。

© UNICEF/UN0583342/
避難所と化した学校で暮らす家族。ユニセフは避難を余儀なくされた人々に命を守る支援を行っている。(シリア、2022年1月撮影)

また、11年にわたる紛争、混乱、強制移住は、あらゆる世代の教育を脅かしています。現在も、300万人以上のシリアの子どもが学校に通っていません。 しかし、あらゆる困難にもかかわらず、約450万人の子どもが、学習の機会を得ています。

これは、ユニセフが共同主導する 「失われた世代にしないために(No Lost Generation)」のようなイニシアチブを通じて、支援者の皆さまから惜しみない資金支援を受けているおかげです。しかし、地域社会、教師、市民社会、国際機関の絶え間ない努力なくしては、学習機会の維持は不可能です。私はこの場をお借りして、近隣諸国の人々や政府による寛大さと献身に感謝し、賞賛したいと思います。

子どもたちに影響を与える他の危機が、ニュースの多くを占めています。しかし、世界はシリアの子どもたちのことを忘れてはなりません。持続可能な解決方法が実現するまで、ユニセフは全ての子どもに支援が届くよう、可能な限りの活動を続けていきます。

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