2022年5月10日ブリュッセル(ベルギー)/ニューヨーク発
「シリア及び地域の将来の支援に関する第6回ブリュッセル会議」において、ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルが発言した内容を抜粋してお知らせします。
人口の9割が貧困状態に
今日のシリアは、子どもにとって地球上で最も危険な場所の一つです。シリアの人々の90%近くが、貧困下に暮らしており、全世代が、生き残るために苦闘しています。同国では、650万人以上の子どもが緊急支援を必要としており、この数は紛争が始まって以来、最多となっています。
11年にわたる紛争と経済制裁は、シリア経済に壊滅的な影響を与え、25年前の開発レベルまで後退させました。保健、栄養、水と衛生、教育、社会的保護など、子どもが頼るべき基本的な制度やサービスのほとんどがギリギリまで削減されています。
各家庭は、食卓に食べ物を並べることにすら苦労しています。今年2月から3月にかけて、標準的な食料価格は、24%近くも跳ね上がりました。全ての子どもの3人に1人が、慢性的な栄養不良に陥っています。そして、ウクライナ紛争の影響により、食料価格における状況は、さらに悪化しています。シリアは、子どもにとって危険な時代にあり、命にかかわることさえあるのです。
身体的だけでなく心理的苦痛も訴え
民間インフラへの攻撃は日常茶飯事になっています。産科病院や小児科病棟を含め、600以上の医療施設が攻撃を受けています。紛争が始まって以来、1万3,000人近くの子どもが死傷したことが確認されていますが、実際の犠牲者がもっと多いことは明らかです。
紛争は、シリアの子どもたちに身体的な傷を負わせただけではありません。昨年、シリアの子どもの3人に1人が心理的苦痛の兆候を示しましたが、この目に見えない傷は、生涯続く可能性があります。
シリア紛争から逃れてきた子どもたちも、トラウマを抱えています。現在、およそ280万人のシリアの子どもが、ヨルダン、レバノン、イラク、エジプト、トルコで生活しています。こうした子どもの生活は、喪失、リスク、不安に満ちています。ある11歳の女の子は、「家(home)という言葉が何を意味するのかわからない」と、ユニセフの職員に話してくれました。
シリアの子どもたちに関心を
また、11年にわたる紛争、混乱、強制移住は、あらゆる世代の教育を脅かしています。現在も、300万人以上のシリアの子どもが学校に通っていません。 しかし、あらゆる困難にもかかわらず、約450万人の子どもが、学習の機会を得ています。
これは、ユニセフが共同主導する 「失われた世代にしないために(No Lost Generation)」のようなイニシアチブを通じて、支援者の皆さまから惜しみない資金支援を受けているおかげです。しかし、地域社会、教師、市民社会、国際機関の絶え間ない努力なくしては、学習機会の維持は不可能です。私はこの場をお借りして、近隣諸国の人々や政府による寛大さと献身に感謝し、賞賛したいと思います。
子どもたちに影響を与える他の危機が、ニュースの多くを占めています。しかし、世界はシリアの子どもたちのことを忘れてはなりません。持続可能な解決方法が実現するまで、ユニセフは全ての子どもに支援が届くよう、可能な限りの活動を続けていきます。