■微量栄養素欠乏症・ミャンマーの場合
（質問・ヤックル ）
こんにちは。ユニセフ子どもネットのヤックルです。 脚気ってなんだろうと疑問に思ったので 調べてみました。脚気とはビタミンＢの欠乏によってかかる病気で手足のしびれやむくみから始まり、 最終的には末梢神経の麻痺や心臓の衰弱に陥る病気だそうですね。
＜錦織信幸＞ 早速調べてもらったみたいでありがとうございます。
そのとおり脚気はビタミンB1欠乏症のことで、手足のしびれや心不全などをきたす病気です。日本もビタミンB1が発見される前の明治時代ごろから大変この病気に苦しんだという歴史があります。今では信じられない話ですが明治時代に軍隊で戦争に行った兵隊の中で、戦闘で死亡した人たちよりも脚気で亡くなった人が多かったという記録も残っています。また田舎から都会の工場に出稼ぎに出ていた女工さんたちの間で脚気がはやり、たくさんの若い人がなくなったりもしています。
右のイラストは、アメリカの古い医学の教科書に載っている脚気のイラストです。やせこけて手足がしびれている人と、心不全で体がむくんで苦しがっている人が両方描いてあります。 これは太っていてぶくぶくしているのではなくて、心不全のために体がむくんでしまっています。赤ちゃんの脚気の場合にもこの心不全のような症状が主体で、症状が出てから数時間のうちに死んでしまうこともあります。でも早めにビタミンB1の注射を打つと救命することが出来ます。
では、なぜミャンマーに脚気が多いのかぜひ考えてみてください。日本とミャンマーの食生活の共通点って何でしょうね？脚気にならないためにはどんな食生活が必要なのでしょうか。
■食文化がもたらす微量栄養素欠乏
（質問・畑生理沙 ）
脚気については、日清・日露戦争の頃に陸軍で多くの患者が出たと聞いたことが あります。確か、白米がビタミンＢを含んでいないことが原因でしたよね・・？という ことは、ミャンマーでも白米をよく食べるのでしょうか？ ・・・・
私はビタミンＢ１と言うと、豚肉や大豆のイメージがあります。 ということは、ミャンマーの人たちは副食として肉類や豆類をあまり食べないということでしょうか？ 食文化の問題ですか？もしくは、貧困が原因なのでしょうか？詳しく伺ってみたいです。
＜錦織信幸＞
そのとおりです。白米が主食というのがミャンマーと日本の共通点です。実はミャンマーは一時期は「アジアのライスボウル（どんぶり？）」といわれたほど、お米がたくさん取れるところで、しかも1人当たりのお米を食べる量がすごく多いんです。たとえば大人1人が1ヶ月に25キロ以上食べます。（1人で日本のスーパーで売っている大きな米袋2袋分以上ですよ。5人家族だったらどうなっちゃうでしょう） ではどうして白米をたくさん食べるところに脚気が多いのでしょうか。白米にビタミンB1が少ないとしても、だからといって白米をたくさん食べるとかならず脚気になるわけではないですよね（今の日本のように）？・・・・・・
白米そのものの問題というよりも白米に頼った（他のものをあまり食べない）単調な食生活に問題があります。そしてその原因のひとつは貧困も間違いありません。ただし、、、
- 肉は高価かも知れないけど豆類（ダールやヒヨコマメを良く食べます）はそれほど高くない、
- 母乳を飲んでいる赤ちゃんの脚気が問題ということは、お母さんのビタミンB1が不足している、
などが大きな問題と考えると、どうも貧困だけが問題ではないように見えてきます。貧困以外にも大きな問題がありそうですね？・・・・謎解きみたいで申し訳ないですが、またいろいろ考えてみてもらえるとうれしいです。
●写真・乳幼児脚気の赤ちゃんが注射で回復する様子●
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写真の左は乳児脚気を発症して呼吸困難を起こしている赤ちゃんです。 このままだと数時間のうちに死んでしまうかも知れないという状況です。 顔を含めて体中がむくんでいます。 真ん中がビタミンB1の注射、値段は10円以下です。 そして右が注射をうって1〜2時間後に回復した同じ赤ちゃんです。 むくみっていうのがどんなものか良くわかりますよね？
