■ミャンマーとエチオピアの子どもたちは何を食べてるの?
(質問・ソマリア日本人会会長 )
どーも。 日本ユニセフ協会広報室の中井です。 ハンドルネームでお察しだと思いますが、 かつてソマリアに駐在していました。 10年程前、ミャンマーにもおりました。
ミャンマーと言えば、あの油の中にお肉や野菜が浮いている「カレー?」のような食べ物&ご飯とか、モヒンガーという食べ物を思い出されるんですけど、大多数の人(子どもたち)が、毎日あのようなものを食べているとは思えないのですが。 っとすると、どんなものをどれ位の頻度で(一日一回?二回?)食べているんでしょう?
同じくエチオピア。インジェラ&ワットって、普通の人(子どもたち)には高級品だったりするんですかね(日本のエチオピアレストランでは2−3000円もしちゃいますけど・失笑)?あと、インジェラの栄養価が偏っているって話もどっかで聞きかじったんですけど。 もし「普通の食事」の写真とかもあったら、見せていただけます?
<錦織信幸> ソマリア日本人会会長さん、こんにちは。ミャンマーにも住んでおられたのなら私よりもいろいろなことをご存知かもしれませんね。
モヒンガーはお米の粉でできた麺(またお米です!)に魚でだしをとったスープをかけた麺料理です。ミャンマーでもっとも一般的な朝食です。週に何日も朝ごはんはこれという人も多いですよ。でもどちらかというと田舎の人よりも都会の人が食べるみたいです。
昼ごはんや夜ご飯には、ご飯とおかずです。おかずはソマリア日本人会会長さんのご指摘のように、いわゆるミャンマーカレーと呼ばれるものです。ミャンマーではおかずのことを「ヒン」と呼びますが、これは英語では「カレー」と訳されます。つまりミャンマーではおかず=カレーなのです。逆にミャンマー人には「日本ではご飯と一緒にどんなカレーを食べるんだ?」と聞かれるので答えに困ることがあります。
ミャンマーカレーは野菜や肉など、どんな材料でも似たような感じに調理してしまうのですが、とにかく油が多くて表面に油の層が2センチぐらい浮いているくらいです。レストランなどで食べる時にはミャンマーカレーを一品一品小さなお皿に盛って、ご飯と何品かのカレーをみんなで一緒に食べる感じです。家庭だとこれが1〜2品になります。基本は似ているようですが、田舎に行くと味付けが単調になったり、とくに唐辛子が多くなってものすごく辛くなったりします。(ご飯をたくさん食べられるようになんでしょうか)。田舎の方で貧しくなってくると、カレーはなしでご飯にガピッと呼ばれるえびの塩辛をつけて食べたり、ご飯と干し魚一切れなんて感じでしょうか。でも昼を抜いたりはしないそうです。
肉のカレーはもちろん高級になりますが、野菜のカレーもジャガイモ、なす、豆類、オクラ、たけのこなどいろいろな種類があり、貧しい家では野菜のカレーが中心になると思います。多くのカレーにはトマトが入ります。あとは川の近くでは魚も良く食べます。 ミャンマーを語る上で忘れてはいけないのはミャンマーが多民族国家だということです。
ここに書いた食事の内容は全ていわゆるビルマ民族の人たちのことで、民族が変われば内容もガラッっと変わります。たとえばインド国境近くのチン族の人たちの主食は白米ではなくて、とうもろこしです。ブーディと呼ばれるとうもろこしを煮込んだおかゆが有名です。
タイ国境側のシャン州のシャン料理は油が少ない中華のような感じで、日本人には人気があります。シャンヌードルと呼ばれるシャン州の麺料理はどれもとてもおいしくて日本人の口に合います。私もミャンマー料理でおなかがもたれたときにシャン料理を食べると救われる思いがすることがあります。
■食文化がもたらす微量栄養素欠乏
<岡村恭子>
インジェラというのはエチオピア人の多くが主食としているもので、テフという穀物の粉をといて焼いた分厚いクレープ(直径50cmくらい)みたいなものです。発酵させてから焼いてあるので少しすっぱいかんじで、表面にぷつぷつ穴があいています。穴がきれいに均等にあいていてスポンジのようにやわらかいのが一番いいインジェラです。(「いいインジェラ」というのがどういうものか、最近わかってきました!)そのインジェラを広くのばした上におかずをのせ、インジェラを手で一口大にちぎり、それでおかずをつまむようなかんじで一緒に食べます。
おかずは、今まで私が見たり聞いたりしたものをあげると、豆をつぶした濃厚なソース(シュロ、一番基本的なおかず)、野菜をいためたもの、肉の煮込み(ドロ・ワット)や炒め、カッテージチーズなどです。「ご馳走」の時は、これらをいろいろ5−10種類くらい取り合わせてインジェラのあちらこちらにのせます。
「普通の食事」だと一種類か二種類。地方の村だとたいてい一種類だけ。キリスト正教会の信者が多いのですが、毎週水曜と金曜は肉や卵を食べない日なので、豆のソース(シュロ)だけで食べることが多いです。もっと地方の村に行くと、水曜とか金曜とかに限らず、インジェラとシュロだけが普通みたいですが、本当に貧しい家庭ではシュロもご馳走で、インジェラと唐辛子の粉だけというのも珍しくないそうです。
野菜は、キャベツ、ほうれん草のようなもの、じゃがいも、にんじんと玉ねぎが主ですが(じゃがいもは自然味いっぱいでホクホクして美味しいです!)、村ではだいたい、キャベツか雑草のような緑の葉っぱ(キャベツが取れない季節)を食べているそうです。ちなみに、大きなインジェラをみんなで囲んで好き勝手に(少なくとも私にとってはそう見える…)手をのばして食べるのが伝統的な食事方法なので、子どもは頑張らないと大人に負けて食べる量が少なくなってしまいます。大人はあんまり気にしてないようですが… ちなみにアジス・アベバの町の食堂でインジェラとシュロを食べたら100〜200円くらいです。地方の村では30−50円くらい。3000円あれば100回くらい食べられますね〜(笑)
インジェラの原料のテフは、鉄分やカルシウム、そしてビタミンB郡を豊富にふくんでいて、しかも発酵させてあるので(体内での栄養素の吸収率が高まる)、これらの栄養素に関してはかなり良い摂取源みたいです。確かに大人の貧血は、私が予想していたよりもずいぶん低くてびっくりしました。カルシウム不足が関係する子癇・子癇前症も比較的少ないと聞きました。(まだデータは確認できていませんが。)
インジェラそのものの栄養が偏っているというよりは、インジェラと一緒に食べる物があまりに限られていて、食事全体を見た時に栄養が偏ってしまうのでは?ちなみにテフを粉の重量でカロリー計算すると小麦粉と同じくらいの栄養価があるそうですが、インジェラを作る過程でずいぶん水で薄めるので、実際に口に入る粉=カロリーの量は小麦粉で作るもの(パンやパスタ等)より少なくなるらしいです。