

■ 知ってさえいれば…という後悔を繰り返さないために
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自身の経験を話すヒェンさん
© UNICEF Viet Nam |
「もし、夫と出会ったころにHIV/エイズに関する正しい知識があったなら、感染は予防できたかもしれない、もし母子感染予防の方法について教えてもらえなかったら、恐怖と絶望のあまり命を断っていたかもしれない。私が今日元気に生きることができたのは母子感染予防の方法を知ることができたからです。だから、HIV/エイズから身を守るための知識を一人でも多くの若い人たちに知ってもらいたいのです」
こう話すヒェンさんは、自分の経験をみんなに話して、HIV予防の大切さを訴えようと決意しました。
■「地域を変えてみせる」
「HIV/エイズについて話しに行くと、決まって“あなたはなぜ感染したの?”と聞かれます。彼女たちは私が何かそういう危ない行為をしたから感染したんだと考えたのでしょう。でも、私は性産業に関わったこともなければ、麻薬を使ったこともありません。ごく“普通”の主婦です。それでもHIVに感染し、恐怖や絶望を味わったのだと語ると、人々はこの病気のことを理解してくれます」
HIV/エイズに対して理解してもらおうとするとき、専門家の説明よりもヒェンさんのような経験者の言葉のほうが、力強いメッセージになります。
また、ヒェンさんは、各家庭を訪問するときに、コンドームを配っています。いまだにベトナムでは、コンドームがかばんに入っているだけで性産業に関わっている人だと思われたり、夫婦間であっても、妻が夫にコンドームを着けるように頼むことができなかったりします。
「でも、女性は強くならなくてはいけません。私は、コンドームを使うことは決していかがわしいことではなく、女性がHIVから身を守るための権利なのよと話しているんです」
■ 自分の息子が差別を受けることがないように・・・
ヒェンさんの願いは、こうした活動によって、地域のHIV/エイズに対する偏見や差別がなくなることです。そして将来、バォ君が、母親がHIVに感染しているというだけで不当な差別を受けることがないようにと願っています。
地域の偏見や差別をなくす努力を続けるためにも、息子の成長を見守るためにも、少しでも長く生きられるようにヒェンさんは自身の治療も根気強く続けています。
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■「生きる」という選択肢を残したい—ユニセフベトナム事務所 田中愉子さんからの報告
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