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日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

氏名 熊﨑 雄大
派遣先 レバノン事務所
派遣期間 2024年6月~2024年9月

2024年6月から2024年9月まで、レバノン共和国の首都ベイルートにあるUNICEF国事務所の「子どもの保護」セクションにてインターンをしました。かつては「中東のパリ」の別称を持つ豊かで多国籍なベイルートでしたが、2010年代の難民流入、2019年の内閣退陣、経済危機、新型コロナ、2020年の港湾爆発など、多方面で危機が重なり、2023年時点で難民・女性・子どもを含む380万人(人口の6割以上)があらゆる支援を必要としていました。さらに現在では深刻な武力衝突が発生し、国内避難民などの脆弱な人々が急増しています。そんな中、紛争のストレスに伴うトラウマやPTSD、薬物使用、自殺未遂、家庭内暴力、ジェンダーに基づく暴力、危険な児童労働など、いわゆる「負の対処メカニズム」も急増しており、子どもの保護の取り組みは喫緊の課題です。

その状況下で、私は上司の指導のもと、心理社会的支援、学校内安全保護、性的搾取・虐待予防、オンライン安全保護、緊急対応支援に係る業務を担当しました。今回は①心理社会的支援と②オンライン安全保護の取り組みを報告いたします。

① 心理社会的支援とは、学校や地域のコミュニティセンター等で実施されるメンタルケア等を指します。UNICEFは国全体で展開される全事業の管理・評価や、最前線でケアを行う実務者(ソーシャルワーカー)の能力構築を担っています。私は現地NGOと協働し、事業に関するデータ収集・分析、National Committeeの牽引・資料準備、能力構築セッションの調整・調達などを行いました。実際に南部緩衝地帯付近に赴いた際は、パレスチナ難民キャンプでの心理社会的支援の視察と、親を含む地域女性リーダー (QUDWA) との対話を行いました。少年犯罪・非行等で法的に保護が難しい事例や、武装勢力の存在によって警察機関が介入できないジレンマに触れ、子どもが直面する困難の多様さや、それを包括的に対応するシステム強化について考える契機になりました。

② オンライン安全保護は、インターネットが起因する新たな暴力形態に対応するための取り組みです。レバノンでは今年5月に、ソーシャルメディアTikTokを悪用したギャング犯罪が発生し、30名以上の女児が性的搾取・虐待に巻き込まれました。この新たな犯罪に対応する政府の能力と資金がないことから、UNICEFがイニシアティブを取り、私は本事業の戦略立案と行動計画策定に係る業務を担当しました。また北部と東部の地域別ミーティングにて、子どもとネットに関する安全上の課題の共有・議論をする業務もありました。各省庁・警察・国際機関・NGO・民間企業など幅広いステークホルダーと日々調整を行い、事業プロポーザルの作成に携わることができたのは、大変やりがいのある貴重な経験でした。

今回の現地経験を通し、現地特有の慣習・価値に触れ、教育・保護の本質を再定義し、日本人として、国際スタッフとしての存在意義を深く考える貴重な機会になりました。8月に発生した危機によって、空爆、避難、同僚の死別など様々な困難も経験しましたが、面倒見の良い上司と同僚に恵まれ、有意義な日々を過ごすことができました。レバノン国事務所のスタッフのみなさま、そして日本ユニセフ協会のみなさまに多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。

パレスチナ難民キャンプにて。家庭内暴力を発見・報告する訓練をしています。

女性リーダーQUDWAたちと、南部地域の生活に関して対話する様子。

オフィス勤務の最終日に、Child Protection セクションの同僚と。

写真:©日本ユニセフ協会