HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > パレスチナ情報 2006/8/11
財団法人日本ユニセフ協会



紛争下の子どもたちの心を癒す、「安全に遊べる場所」

【2006年8月11日 ニューヨーク発】

© UNICEF video
ガザ地区、ワディ・アル・サルク村の女の子たち。ユニセフの支援を受け、安全に遊ぶための場所を提供している、町の「安全な遊び場」でドラムをたたく。

パレスチナ自治区のワディ・アル・サルク村では、世界中で暮らす子どもたちと同じように、子どもたちは友達と運動場で元気に遊んでいます。しかし、この一見、完全に普通にみえる光景も、子ども達が遊べる場所が極端に少ないガザ地区では、そう頻繁にみることはできないものです。

「ここににいると、道端で遊ぶよりも安心なの。」と、この運動場に週4回ほど来る10歳のモハメド・アブ・ムガセブは言います。

危機が続く中東では、子どもたちは継続的な暴力や困難にさらされ、多くの子どもたちが心に傷を負っています。

「ここの子どもたちは、異常なほどの恐怖に脅えながら、安全が確保できない環境で生活し、疲れ果てています。」ユニセフパレスチナ自治区の特別代表、ダン・ローマン氏は言います。「ここで遊ぶことは、子ども達が家の外でできる唯一のことです。安全を考えて、親たちは子どもたちを路上で遊ばせようとしません。」

屋内でも屋外でも
© UNICEF/ HQ06-1100/Jadallah
ガザ地区北部のベイト・ハヌーンの街で最近発生した戦闘で崩壊した家の前で、フェンスに寄りかかり、たたずむ少年。

パレスチナ自治区の子どもたちにはけ口を与えようと、ユニセフは数十箇所の「安全に遊べる場所」を整備する支援をしました。又、人口密度が高くレクリエーション施設が不十分な地域、武力衝突によって被害を受けた地域や辺境地域で生活する子ども達に数百セットのレクリエーションキット(遊び道具)を配布しました。

現在ガザ地区には、屋外に30ヶ所、屋内には15ヶ所の「安全に遊べる場所」が設置されています。

新たな戦闘のため、6月以来これらの「場所」にやってくる子どもの数が急激に増加しています。現在、ワディ・アル・サルクにあるレクリエーションセンターには、1日に100人以上の子どもがやってきます。

「ここ最近の一連の武力衝突で、ガザ地区だけで43人の子どもが亡くなりました。」ユニセフの広報官モニカ・アワドは言います。「ユニセフは、同世代の友達と心おきなく安全に遊べる場所を提供することで、子どもたちの安全と権利を守るべく活動しています。」

「暴力が激しさをまし、貧困や治安の悪化が子ども達の日々の生活にまで影響を及ぼしているワディ・アル・サルク村では、このような場所が非常に必要とされています。」

武力衝突が子ども達に与える影響を減らすために
© UNICEF video
ワディ・アル・サルク村の「安全に遊べる場所」では、子ども達がゲームをしたり、他の子ども達と遊んだりできます。

4,500人(その半数以上は子ども)が生活しているワディ・アル・サルク村は、ガザ地区の典型的な集落です。この貧しい農村は、公立の学校がたった1校あるだけで、そこでは、10学年、1,200人もの生徒が午前(女子)と午後(男子)に分かれて勉強しています。村にひとつしかない診療所では、基礎的な治療しかうけることができません。

武力衝突が激しくなるにつれて、貧困も深まってきています。農家は、ガザ地区の外に出ることができないため、収穫した果物や野菜を売ることができず、収入を得ることができません。

しかし、「安全に遊べる場所」のおかげで、ワディ・アル・サルク村の子どもたちは、多少なりとも暴力を忘れることができ、ゲームをしたり、同世代の友達と遊ぶことができるようになりました。アワド氏は、これにより、長引く対立が子ども達に与える悪影響を減らすことができるといいます。

レクリエーション施設により、子どもたちはたとえほんの数時間だけでも、日常に戻り、ストレスを発散することができるのです。