【2019年6月7日 コックスバザール(バングラデシュ)発】
ロヒンギャ難民キャンプ訪問2日目となった6月6日、長谷部大使は、現在ユニセフが最重要課題として取り組む教育と職業訓練支援を受けている10代の子ども・若者たち約30人と、サッカーを通じて交流しました。
© 日本ユニセフ協会/2019/tetsuya.tsuji |
「結構うまいですね。まだまだ伸び代はありますけど(笑)」(長谷部大使)
「このキャンプは、本当に子どもが多いですね。ほぼ100万人の難民の半分は子どもだって聞きましたが、道路に子どもたちが溢れている。」昨日、保健センターを訪問した際こう語った長谷部大使に、対応したセンターのスタッフは、現在のキャンプの状況を次のように説明していました。
「比較的状況は落ち着きましたが、乳幼児の栄養不良、呼吸器や皮膚の感染症、下痢など、このキャンプの子どもたちは常に様々な健康リスクに直面しています。そしてそれと同じくらい深刻なのが、子どもたちが充分に学び遊ぶことができる機会と場所の少なさなのです。」「私自身は、ボランティアさんたちの力も借りながら子どもたちの命を守るために出来るだけのことをしていますが、子どもたちの将来の事を考えると、遊び場や学ぶ場の確保が、このキャンプの課題だと思います。」
「サッカーのピッチとしてはお粗末かもしれないけど、このキャンプが置かれている状況を考えると、ここに住む子どもや若者たちにとって、とても大きな存在なのかも知れないですね。そんな場所で彼らとサッカーができて、サッカーをやっていて良かったと思います。」(長谷部大使)
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長谷部大使とのサッカー交流に参加したウラさん(20歳)の夢は、将来エンジニアになる事。ミャンマーで日本の小中高にあたる教育を受けていたウラさんは、現地のユニセフ職員によると、「このキャンプに来て初めて学校というものに通うようになったという子も多い中で、比較的稀有な存在」といいます。
ウラさんは、長谷部大使に訴えました。「ここでは高等教育の機会はまだ無いので、エンジニアの夢が叶えられるか分からないし、正直不安です。でも僕はまだ若いから。希望を持っていれば、道は開かれると思います。」
ユニセフ・バングラデシュ事務所の穂積智夫代表は、「ここで暮らす人々は、ミャンマーに戻れるのか、別な場所に移住することになるのか、将来がどうなるかまだ分からない。だから、たとえこの先どこに移り住んだとしても、生きていくため、そして、自ら未来を切り拓いて行くための知識や技術を身につけるための支援が重要なのです」と語ります。
24時間稼働する保健センターを拠点に、母乳育児や感染症予防の知識の普及活動をおこなっている保健ボランティアたちも、「ミャンマーでは身近にこんな施設はなかったし、ここに来て、この施設で今まで知らなかった事を多く学んだの。だから、その知識や技術をみんなに伝える活動をしているのよ」と長谷部大使に語りました。
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「子どもたちの命を守るために、そして未来を繋ぐために、ユニセフは本当に頑張ってますよ」長谷部選手の難民キャンプへの訪問に同行された在バングラデシュ日本国大使館の泉裕泰特命全権大使は、その思いを次のように語られました。
「2年前、子どもたちの表情にはトラウマが明らかだった。ユニセフの『子どもに優しい空間』で子どもたちが描く絵にも、灰色と黒と赤しか無かった。それに比べれば、状況は本当に良くなっている。しかし、この子たちがこの先何処で生きて行けるのか、何も決まっていない。それにも関わらず、今この問題は国際社会から忘れられかけている。この子たちを『失われた世代』にしてはいけないのです。」
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2019年の1年間の支援活動に必要な資金は、国連全体で1,000憶円あまり、ユニセフだけでも170憶円あまりに上りますが、これまでに国際社会から寄せられた支援はその半額にも達していません(ユニセフは4月29日現在46%、人道支援機関全体では4月28日現在17%に留まっています)。
ユニセフと日本ユニセフ協会は、長谷部誠大使の今回の訪問を通じ、日本でも忘れられかけている世界最大級の人道危機への関心を改めて喚起し、支援を訴えています。
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