財団法人日本ユニセフ協会




パキスタン地震被災地は今
日本人職員 小野道子さんの報告

【2008年1月8日 東京発】

2005年10月8日朝、パキスタン北西部やカシミール地方を襲ったマグニチュード7.6の大地震。死者は7万人を超え、350万人が家を失い、約42,000人の子どもたちから肉親を奪いました。

この大地震の発生から2年あまり。3年間の復興活動の最後の年がスタートしたばかりの1月7日(月)、一時帰国中のユニセフ・パキスタン事務所で子どもの保護事業を担当する小野道子(おのみちこ)さんが、被災地の子どもたちの状況と、ユニセフの支援活動の現状を報告してくれました。

19歳の時に訪れたバングラデシュに魅かれて以来、途上国の開発支援の仕事に目覚めた小野さん。

97年に英国イーストアングリア大学で修士号を取得し、NGOなどで活躍した後、2004年からユニセフ南アジア地域事務所で、子どもの保護事業を担当。2007年10月からパキスタンで現在の仕事を担当しています。

小野さん
© 日本ユニセフ協会

2年間の支援活動の成果

© UNICEF PAKISTANi

この地震によって、病院などの保健施設や上水道、学校、道路、通信設備などの公共施設や社会インフラの多くが崩壊し、経済の基盤となる農地や家畜、そして森林も多くが失われました。

地震によって全壊または一部が崩壊した学校は8000校。医療施設は、その80%が。そして、上水道のダメージも4000箇所にのぼりました。

ユニセフは、医療・保健、教育、飲料水・衛生、子どもの保護などの分野で支援活動を続けていますが、これまでに、被災人口の66%にあたる人口230万人あまりの地域で保健サービスを再開させ、就学年齢児童の9割にあたる40万人の子どもたちが、学校に通えるようになりました。


寒さと資金不足との戦い

地震が発生した直後の冬は、例年にない「暖かさ」で雪もあまり降らなかった被災地では、地震発生から2年経った今も、少なくない数の子どもたちが、雪の中、寒さに震えながら、急場しのぎで作られた掘っ立て小屋やテント、トタン葺きの仮設校舎の中での勉強を強いられています。

© UNICEF PAKISTAN
© UNICEF PAKISTAN

ユニセフは、寒さから子どもたちを守り、多少の揺れでもびくともしないコンクリート製の校舎を350棟建設する計画を立てていますが、現在、200校分の資金しか確保できていません。

Building Back Better — より良い環境を創り、残すために

国内の平均値を他国と比較した場合、子どもの死亡率も高く、小学校の就学率も決して高くないパキスタン。被災地は、地震発生以前から国内でも特に貧しい地域でした。ユニセフは、3年間の復興支援活動を、これらの地域の子どもたちが置かれている環境を、地震発生以前あった状況よりも良いものにするための活動として位置づけています。

© UNICEF PAKISTAN

例えば保健分野での支援活動。パキスタンには、女性の保健師を養成し、各自の自宅を「保健センター」として活動することを通じ、国民一人ひとりに基本的な保健サービスを提供する制度が確立されています。しかし、こうした形で保健師となれるのは、日本で言う中学校2年生を卒業していることが条件となっているため、小学校の就学率が特に低い被災地では、こうした制度が活用しきれず、結果、基礎的な保健サービスの普及も立ち遅れていました。ユニセフは、地震復興支援活動の中で、学歴を問わず、3ヶ月のトレーニングでこうした保健サービスに従事できるCommunity Health Workerという制度を現地行政府と協力してスタートしました。

©UNICEF PAKISTANi

また、子どもの保護の分野では、パキスタン国内では、主にNGOの手にゆだねられてきた特に困難な状況にある子どもたちへの様々な社会サービスを、地元行政府の児童福祉制度として確立し、ユニセフが支援を終えた後も、そうしたサービスが継続されるよう、準備を進めています。

* * * * *

自然災害緊急募金にご協力ください。

ユニセフは、世界各地で発生している洪水や地震などの自然災害の被災者のために、緊急・復興支援活動を行っています。日本ユニセフ協会では、ユニセフが各地で実施する自然災害への緊急・復興支援活動を迅速に支援するため、自然災害緊急募金を受け付けています。