HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > フィリピン台風緊急募金
財団法人日本ユニセフ協会



フィリピン台風緊急募金 第7報
台風と大雨による洪水発生から1ヵ月
−被災地からのレポート−

[2009年10月29日 フィリピン・マニラ発]

9月27日にフィリピンを襲った台風16号(現地名オンドイ)と大雨による洪水の発生から、1ヵ月。台風は去りましたが、いまだ多くの家族が避難生活を余儀なくされています。現地の最新情報を、現在ユニセフ・フィリピン事務所教育セクションでインターン研修中の伊藤博さんが伝えてくれました(日本ユニセフ協会まとめ)。

フィリピンを襲った台風16号(フィリピン名はオンドイ)及び17号(フィリピン名ではペペン)の脅威から約一ヵ月が発ちました。この一連の台風は首都圏マニラに40年ぶりの歴史的豪雨をもたらし、主に洪水による被害で一千万人近くの人が影響を受けました。私のいるユニセフの教育セクションでは学校の修理、仮設図書館の設置、教材や筆記用具の配布などを行っています。水が引き、授業を再開する学校が増えて来ているとはいえ、教室は泥まみれで、トイレはあふれ、ノートや教科書も流されたり、使い物にならなくなってしまいました。当初は百万人強と予想された被害地における学童人口も現在は二百五十万人と推定されており、援助対象となる人口の幅を広げる動きも出ています。

避難センターにいる子どもたちの健康状態や学習面での遅れも懸念されており、新しいマットや毛布の配布、一時的な学習所の設置等が急務とされています。また避難センターは学校を代わりにしているところも多い為、子どもたちの勉強の事を考えると早く閉めた方がいいのですが、中には家を失った人も多数いるため、帰る場所のない人々に対してどのような援助が適切であるかという課題もあります。

 
 

伊藤博さん略歴:三重県出身。1999年に成城大学を卒業した後、米国コロンビア大学ティーチャーズカレッジ大学院修士課程で国際教育開発学を専攻。ニュージャージー州の教育サービス会社で勤務後、グアテマラのNGOの活動に参加、またパラグアイでは青年海外協力隊の村落開発普及員として学校の立ち上げや教師訓練に携わる。2007年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校比較国際教育部博士課程。「最も恵まれない人々のための基礎教育」というミッションに賛同し、2009年8月から2010年1月まで、日本ユニセフ協会の国際協力人材養成プログラムを通じユニセフフィリピン・マニラ事務所の教育担当部でインターン。現在も、研修中。

ユニセフ・フィリピン事務所では、避難センターに身を寄せている避難民に緊急支援物資を配布するとともに、学習所を設けたり、教育の分野で学校の再開に向けた緊急復興支援を進めています。伊藤さんも、朝の五時半から緊急物資の配布、午後は他の関連NGOとの教育緊急支援に関する会合、夜はまとめのレポート、翌日も早朝から配給物資のパッキングと、忙しい毎日の中、避難センターでの子どもの様子や被害状況について写真を送ってくれました。

伊藤さんからの現地の子どもたちの様子と被害状況の写真

© Hiroshi Ito/ 2009

避難センターの一室です。苦境にも関わらず子どもたちは元気です。ただし、すべての子どもたちが元気な訳ではありません。ある避難センターでは一日に50人を超す10歳以下の子どもたちが下痢で体調を崩し、保健室を訪れます。特に乳幼児は下痢が原因で死に至る可能性もあり、先日センター内で1歳児が下痢で亡くなるという惨事が起こりました。

© Hiroshi Ito/ 2009

ご覧のように、かなり数の方が減ってきたとはいえ、避難センター内は人でいっぱいで足の踏み場もないくらいです。暑苦しい淀んだ空気の中、多数の人が共同生活を送るため、衛生面が心配されます。(センター内は食べ物の腐りかけたようなにおいがしているところもあります)

© Hiroshi Ito/ 2009

この避難センターを訪問したのは夕方の5時くらいですが、多くの人は横になっていました。避難生活に疲れ果てている様子がうかがえます。子どもたちも一時的な学習所が設置されているのですが、時間は一日2時間程度と短く、遊びの要素が多いため、学習面での遅れが懸念されます。

© Hiroshi Ito/ 2009

避難センターの子どもたちが遊んでいるところです、外は雨なので狭いセンター内で遊ばなければなりません。集まってくる子どもたちは元気なのですが、まわりはぐったり横たわっている人たちでいっぱいです。その人たちの写真を取るのはさすがに気が引けます。

© Hiroshi Ito/ 2009

洪水で流されて来たゴミ(元はそうではなかったのかもしれませんが)が塀にへばりついています。奥に写る扉を遥かに上回る、つまり大人の身長を軽く超える水位であったことがうかがえます。

© Hiroshi Ito/ 2009

洪水で使えなくなった家具等です。二つの台風で被害を受けた人の数は850万に上り、家具だけでなく家そのものや命を失った人も多数います。