■子どもが元気になるということ、それは“子どもらしさ”を取り戻すこと
<錦織信幸>
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© UNICEF Myanmar/Norani |
身体測定 |
第2週目以降、体重も増え始めます。子どもの食欲や年齢にあわせて、 高カロリーミルクの一部を固形食(おかゆなど)に切り替えていきます。 当時はまだプランピー・ナッツを使っていなかったのですが、いまだったらこの段階で家に帰して、 家でプランピー・ナッツを使った治療を続けてもらうということになります。
「子どもらしさの回復」はまだまだ続きます−遊びが子どもの仕事です。 歩ける子はそこいらじゅうを歩き回りますし、ミルクのカップ、薬の空き瓶、 病院のスタッフがつかうボールペンなどなど何でもおもちゃです。 WHO/UNICEFの消耗症治療のガイドラインにも、手じかにあるものを利用したおもちゃの作り方載っているくらい、遊び(刺激)も治療の一環なんです。このガイドラインにはたとえばペットボトルの中に石ころを入れて栓をした「ガラガラ」とか、ペットボトルの上の部分を切り取ってたくさんカップをつくる「のせのせカップ」など年齢に応じたおもちゃが載っています。
こうしてわずか2〜3週間の間に遊び出す子どもたちを目の当たりにすると、 子どもの持つ回復力に感嘆するとともに、栄養不良がいかに多くのものを子どもから奪っていたのかを 実感させられます。つまりこの子どもが消耗症から脱却していなければ、 遊ばない子どもだったわけですから。無気力で、周囲に関心がなく、まったく遊ばないことが、 子どもの発達にどのような影響を及ぼすかは容易に想像ができます。
それだけではありません。治療の対象になっている重症の消耗症だけでなく、それ以前の中等度の栄養不良の子どものたちも、多かれ少なかれこの消耗症の子どもたちが初めに見せていた無気力・無関心の状態におかされているはずです。
そしてさらに消耗症だけでなく、鉄欠乏、貧血、ヨード欠乏などなどさまざまな栄養不良が相互作用をもって子どもたちの生存、健康、そして発達を妨げているという大きな構図も見えてきます。 この意味でも治療的食餌療法といういわば死を食い止める最後の手段にたくさんの力を注がなければいけない状況であればあるほど、岡村さんが紹介された地域住民を主体とした地道な予防活動の重要性も増してくるのだと思います。