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ハイチ地震復興支援募金 第74報
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ドミニカ共和国との国境近くにある市場にいるハイチの男の子。ここは、多くの子どもたちが仕事やより良い生活を求めて不法に国境を越えようとしている地域。 |
ウィンストン君のお母さんは、2年前、彼が12歳の時に再婚。しかし新たに“父”となった男性は、ウィンストン君の面倒を見ようとはせず、ウィンストン君は家を出て、路上で生活するようになりました。こうした話は、ハイチでは珍しくはありません。
その後、彼の身の上に起こった出来事も、特別なものではありませんでした。ウィンストン君は、より良い生活を求めて、隣国のドミニカ共和国へ不法に入国。そこで、路上で生活するウィンストン君を見つけた警察官に家に連れて行かれレイプされた、とウィンストン君は話します。
ハイチの国境の町、アンセ・ア・ピトレスで支援活動にあたっているスタッフと話をすると、ウィンストン君は、そんな恐ろしい体験をしてきたにもかかわらず、家族の元には戻れないと話します。「今は、ここ(路上)で暮らしているんだ。」と、彼は言い張るのです。
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ハイチとドミニカ共和国の国境近くにいる親子と話すユニセフのスタッフ。 |
アンセ・ア・ピトレスは、ウィンストン君のような子どもたちが、仕事とより良い生活を求めて不法にドミニカ共和国に渡っている国境地域のひとつです。国境警備隊が行き交う車や人々を検問していますが、特に市場が開かれる日は、子どもたちは人ごみにまぎれて、簡単に不法に出国しやすい状況になっています。
ユニセフは、昨年1年間に、ドミニカ共和国で人身売買の被害にあったハイチの子どもたちは、少なくとも2,000人に上ると推定しています。2010年1月に起きた大地震で、多くの人々がさらに貧しくなってしまったため、恐らく状況は悪化していると考えられています。
この問題に対処するため、ユニセフは、国境を越えようとする保護者が同伴していない子どもたちや必要な書類を持っていない子どもたちの保護をするために、車両などを検問しているハイチ警察の児童保護部隊を既に支援しています。しかしながら、ユニセフは、パートナー団体と共に、この児童保護部隊の活動をさらに強化しなければなりません。
「国境に立つ警察官の数には限りがあります。警察は、犯罪から麻薬の密輸まで幅広く取り組まなければなりません。国境を越えようとするかなりの数の子どもたちを保護するには、さらなる支援が必要なのです。」 ユニセフのガリアン・プライレット子どもの保護担当官はこう話します。
国境の町、アンセ・ア・ピトレスのハイチ側にある運動場では、週に2回、約40人の子どもたちが集まって踊ったり歌ったりしています。これは、ユニセフが支援しているNGO組織「ハートランド・アライアンス」が実施しているプロジェクトです。
国境地域の複数の場所に、ストリートチルドレンをはじめ、最も厳しい状況に置かれている子どもたちを温かく迎える、こうした「立ち寄りセンター」が設置されています。ここで子どもたちは、一日数時間、遊んだり、勉強したりして過ごすことができます。温かい食事も提供されます。
「子どもたちが、子どもらしくいられるようにしています。」「また、少なくとも自分の名前を書けて、数を数えられるようにするプログラムを組んでいます。彼らの将来に役に立つ物事を教えるようにしているんです。」ハートランド・アライアンスのチームリーダー、クラリン・ローラ・ヨハネスさんはこう説明します。
このセンターにやってくる子どもたちの多くは、ウィンストン君と同じような経験をしています。アンセ・ア・ピトレス近郊の農村部での貧しい生活に耐えかね、ドミニカ共和国で仕事を見つけようとしていた子どもたちが大勢います。また、両親に置いていかれた子どもたちもいます。
「ユニセフは、国境の町で暮らす子どもたちを支援するために懸命に活動しています。」「また、ドミニカ共和国で保護した子どもたちを、ハイチにいる保護者と再会させる活動も継続して行っています。しかしながら、こうした活動が、子どもたちにとって本当に最善の利益になることかどうかを常に確認する作業も並行して行っています。」(プライレット子どもの保護担当官)
国境地域に設置された「立ち寄りセンター」は、ストリートチルドレンを温かく迎え、必要な支援を提供しています。こうした支援があって、ウィンストン君を始めとする厳しい状況に置かれた子どもたちは、子ども時代を取り戻すことが出来るのです。