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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第57報
臨時学習センターが女子に「学習の機会」を提供

【2011年4月14日 パキスタン/ レイア発】

© UNICEF video
パンジャブ州南部のムラ・ワラ村でユニセフが設置した臨時学習センターで学ぶ子どもたち。

昨年、パキスタンで起きた大洪水は、人々の女子教育に対する考え方を変えたようです。インダス河流域の盆地に広がる一帯、ヒマラヤ山脈の麓からアラビア海まで、洪水は広範囲に被害をもたらしました。洪水により、1万校ある学校のうち、3分の1以上が全壊しました。

農村部の親たちは、今までならば、娘たちを学校に通わせることはしませんでした。ところが、洪水のため、多くの人たちが村を出て、ユニセフが臨時に設置した学習センター(TLC)の近くに移り住んだことで、状況が少し変わりました。ユニセフは、洪水が子どもたちに与える影響を最小限にとどめようと、この学習センターを設置しました。

女の子にとっては『教育』そのものが初めての経験で、とても触発されているようだ、と語るのはユニセフのパキスタン事務所のカレン・アレン副代表です。

「女の子たちだけでなく、親の心の中も変化したみたいです。親御さんたちは『娘たちを学校に通わせたほうがいいみたいですね。娘たちもすごく幸せそうですし、役立つことを学んでいるみたいですから』と言ってくれます」とアレン副代表。

親たちの気持ちがこのように変わっているので、一家で村に帰っても、女の子たちは地元の学校に通い続けてくれるのではないかとアレンさんは期待しています。

子どもを中心にした学習
© UNICEF video
パキスタンのシンド州のダドゥ地区にある臨時学習センター。ユニセフが支援するこの学習センターで、初めて教育を受けるという女の子も多い。

シンド州のダドゥ地区出身のノア・カトゥーンさん(11歳)は、自分が通っていた学校を案内してくれました。洪水の影響で危険だと判断されて使えないそうです。教室の棚の教科書は、泥で真っ黒になっていました。

遊び場にはテント式の学習センターが設置されています。低学年用のテント教室です。「学校が建て直されて、また学校に通えるようになるといいのだけれど」とノアさん。

ユニセフは、4歳〜12歳の子ども130万人のため、教育の建て直しに尽力しています。また、12,000人の教師の研修を通して教育機関の強化を目指しています。今日までに、ユニセフが支援する臨時学習センターのおかげで、子ども約24万人に教育が提供され、4,000人以上の教師が「子どもを中心に置いた教授方法」の研修を受けました。

さらに北部、パンジャブ州のムラ・ワラ村では、アクサ・レーマンさん(9歳)が、指で教科書の文字をたどり、体を揺らしながら、これを読み上げています。ここの臨時学習センターは青空教室です。

洪水により、学校が流され、アクサさんは学びの場を失いました。しかし、臨時学習センターのおかげで、勉強を続けられるようになり、今では4年生として、自信たっぷりに教科書を読んでいます。

「大変でも、学校には絶対に来たいわ」とアクサさん。「洪水でなくしたものを新しいもので置き換ええて、私たちも復興に力を貸したいと思っています」

未来への投資
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パンジャブ州南部に設置された、ユニセフが支援する臨時学習センターで、アルファベットを復唱するモハマド・ハセブ君(5歳)。

アクサさんの父親、ハジ・アブドゥル・レーマンさんは、家族が住む故郷から何キロも離れたカラチの野菜市場で働いています。子ども10人のうち9人は学校に通っていると言います。

「みんなに明るい未来がもたらされるように学校に通わせています」とレーマンさん。「教育を受けていれば、結婚しても、義理の父親も母親も、彼女を尊敬して悪いようにはしないでしょう」

洗濯物を干しながら、アクサの伯母、イクバル・ビビさんは次のように語ってくれました。「子どもたちを学校に通わせるのは、より良い未来を与えたいからよ」そのときの彼女の目は、意味ありげでした。

「食べ物もないから、子どもたちを充分食べさせることもできないけれど、学校には通わせています。それは、子どもたちが立派な人間になり、貧困から抜け出せるようにするためです」と彼女。

ユニセフと政府が直面している最大の課題は、タリバンの勢力が強いカイバル・パクトゥンクワ州と連邦直轄部族地域にあります。ここでは、タリバンが、女子と男児の教育に反対するキャンペーンを繰り広げているのです。

カイバル・パクトゥンクワ州では、過去2年の間に、710校が爆撃を受け、州内でも一番被害を受けているマラカンドでは、640校以上が全壊あるいは損壊しています。