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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第62報
キャンプで生まれた、新しい命

【2011年9月30日 パキスタン・シンド発】

大規模なモンスーンによる豪雨がパキスタンを襲った時、シャニニちゃんは、まだお母さんのお腹の中にいました。それは、生まれる数日前のことでした。

シャニニちゃんは知る由もありませんが、この大雨が洪水を引き起こし、シャニニちゃん一家が住む地域も含め、シンド州の23地域中、22地域が被災。シャニニちゃんが暮らすはずだった、泥のレンガで作られた家も、淀んだ水に飲み込まれ、倒壊してしまいました。

避難キャンプでの生活
© UNICEF Pakistan/2011/Youngmeyer
シンド州を襲った洪水で、家を失った347世帯が避難生活を送るキャンプ。

この地域から避難を余儀なくされた他の多くの人々と一緒に、シャニニちゃん一家も、自宅から3キロほど離れた場所に地元当局が設置した新たな避難キャンプに避難しました。乾いた広大な空き地に無秩序に広がるこの避難民キャンプ地には、現在、1,095人の子どもを含む347世帯が暮らしています。

シャニニちゃん一家は、キャンプ地内の端にあるテントを割り振られました。テントは、非常に簡素でとても窮屈ですが、少なくとも、彼女達には、強い日差しも雨露も凌げる場所があります。このキャンプに逃れてきた約100世帯には、そんなテントすら、まだ支給されていないのです。

シャニニちゃんの家族は、わずかな所持品をテントの片隅に寄せ、固く汚れた地面の上に薄い毛布を敷いて夜を明かしています。雨が降れば、地面の土はすぐにぬかるんでしまいますが、州全域に設置されている他の多くの避難民キャンプと違うことは、清潔な飲料水やトイレ、小さな保健所といった基本的な社会サービスが提供されていることです。

© UNICEF Pakistan/2011/Youngmeyer
洪水により避難生活を余儀なくされたキャンプで、シャニニちゃん(生後12日)を膝に抱くブチャイさん。

シャニニちゃんの母親のブチャイ・ムングハルラルさん(35歳)は、キャンプへ避難してきた2日後、地元の産科保健センターの臨時施設でシャニニちゃんを出産したと語ってくれました。ブチャイさんは、今、生後12日になるシャニニちゃんに母乳を与えています。キャンプの環境は、赤ちゃんにとって決して望ましいものではありません。ブチャイさんの母乳は、下痢性疾患や肺炎といった感染症からシャニニちゃんを守るために、無くてはならないものです。

ブチャイちゃんの夫は、今、タンド・アッラー・ヤール市の近くで働いています。しかし、家族はとても貧しく、果物や野菜を買うことさえ難しい状況です。

「一番心配なのが蚊です」と、語るブチャイさん。「子どもたちを守るための蚊帳がありません。でも蚊はどこにでもいるんです。」

ユニセフの支援

ユニセフは、シンド州で最も被害が深刻だった地域で緊急支援活動を拡大しています。保健省と密接に連携し、パートナー団体と共に移動チームを含めた保健チームの活動を支援しています。この保健チームによって、すでに3,000人以上の女性たちに、妊娠中、出産時、出産後のケアや、医療施設への照会等の支援が実施されました。また、ユニセフは、キャンプの子どもたち13万5,000人以上に、はしかやポリオなどを防ぐ予防接種が実施されるよう、移動保健チームの活動を支援しています。

ブチャイさん一家が、あとどのくらいキャンプでの生活を送るのかは誰にも分かりませんが、ブチャイさん一家は、避難を余儀なくされている他の人々と同様に、洪水の水が引くのを切に望んでいます。水さえ引けば、少なくとも元々住んでいた地域に戻り、生活を立て直すことができるはずです。