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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第58報
栄養不良の子どもたちのための移動保健所

【2011年6月30日 パキスタン発】

© UNICEF Pakistan/2011
パキスタン南部のスレマン・ケハリ村の親子。洪水被害により全ての村人が避難を余儀なくされましたが、現在村に帰り始めています。ユニセフは、パキスタンでの高い栄養不良率を受けて、母親と子どもに十分な栄養を確保するべく支援を行っています。

洪水の影響を受けたパキスタン・シンド州では、ユニセフが支援している移動保健チームによって、子どもたちの栄養改善のための支援が遠隔地の小さな集落へも届けられています。

この移動保健チームは、栄養不良に陥っている子どもと妊婦を見つけ出すため、定期的にコミュニティを訪れています。このチームは、医薬品や、調理をせずにすぐに食べられる家庭用の栄養補助食品の支援といった重要な栄養支援を行っており、こうした活動は、栄養不良の子どもたちにとって必要不可欠です。また、母乳育児や基本的な栄養摂取、健康や適切な衛生習慣を保つ等の健康的な生活習慣に対する支援も強化しています。

シンド州南部のタッタ地域にある小さな村、スレマン・ケハリに暮らすハジャニさんは、村の保健所で診療をうけた母親のひとりです。伝統的なドゥパタのスカーフを身につけ、腕に子どもを抱いてあやしながら、ハジャニさんは自身の経験を嬉しそうに話してくれました。

「このセンターに来る前、息子は何も食べませんでした。」「センターから息子のための食べ物を頂きました。毎日、1袋ずつ食べさせています。今は、ミルクも飲みだして、体重も増え始めました。」(ハジャニさん)

この保健所は、ユニセフのパートナー団体「マーリン(Merlin)」によって運営されています。ここは、シンド州南部全域でユニセフが支援している226の移動保健チームと84の保健施設のうちのひとつ。ユニセフは、シンド州の洪水被災地の子どもたちの栄養不良状態が危険なレベルにあることを示した、シンド州保健省が実施した最新の調査結果を受けて、直ぐに栄養不良の支援を拡大しました。

危機的状況にある栄養不良率
© UNICEF Pakistan/2011
シンド州南部のスレマン・ケハリ村で健診を行う保健員。栄養不良率が非常に高いこの地域に、ユニセフは、子どもと母親の健康を保つため、移動保健所を設置。

この調査によると、ある集団における中度および重度の栄養不良の子どもたちを合わせた数である全急性栄養不良(GAM)の生後6ヵ月から5歳未満児の割合は、シンド州南部で21パーセント以上。また、同州北部では、約23パーセントでした。これは、世界保健機関(WHO)が、人道支援が必要な危険域として定める15パーセントをはるかに凌ぐ割合です。

子どもの栄養不良は、5歳未満児死亡数の最も大きな要因のひとつであり、また、感染症に陥るリスクを高め、病気の回復を遅らせることにも関係しています。シンド州南部で、ユニセフの「栄養不良早期回復を目指す作業部会」でコーディネーターを努めるアヤシャ・リアズ医師は、こうした移動式の保健所は、農村部を含む、全ての子どもと母親たちに手を差し伸べるために、重要な活動であると話します。

「人々が暮らしているところに保健所が出向き、コミュニティの子どもと母親たちの栄養状態を確認しています。栄養不良だと判断すると、調理せずに食べられる栄養補助食品やその他の補助食の提供、また保健や衛生面のサポートも行う他、調査・監視も継続して行っています。」アヤシャ・リアズ医師はこのように述べました。

スレマン・ケハリ村の保健所を訪れたダン・ローマン ユニセフ・パキスタン事務所代表も、子どもの栄養不良率を改善する活動に感心していました。

将来に必要不可欠な栄養面の支援
© UNICEF Pakistan/2011
高い栄養不良率を示しているシンド州南部のスレマン・ケハリ村で、ユニセフは、パートナーと共に栄養面の支援を行っています。

去年、シンド州に壊滅的な影響を与えたモーンスーンによる洪水被害。この影響で非常に多くの人々が避難を余儀なくされ、食糧はほとんどないか、あっても栄養価の低いものでした。洪水により多くの家庭の家畜や作物も流され、大きな被害を及ぼしたため、現在も食糧不足に悩まされ続けています。

「3歳未満の子どもたちの栄養不良が、子どもたちの将来に大きな影響を与え、認知発達や学業成績、その後の経済的な生産性にも影響を与えることが分かっています。子どもたちが質の高い保健ケアを受けることは、これから成長し、健康的なおとなになるためにも非常に重要です。」(ダン・ローマン ユニセフ・パキスタン事務所代表)

ユニセフは、シンド州政府、パートナー団体と密接に連携して、子どもと女性の栄養状態を改善するべく活動を続けています。