スマトラ沖地震・津波情報
ユニセフ、41億円の支援要請 〜スリランカ・インドネシア・マレーシア等で日本人スタッフが活躍〜 (第6報)
スマトラ沖地震・津波の被災各国のユニセフ事務所(国連児童基金・本部ニューヨーク)は、30日までに、当面の救援活動に必要な資金として、インドネシアをはじめとする東アジア諸国に1,421万米ドル、スリランカ1,120万米ドルなど、総額4000万米ドル(約41億円)を超える国際支援が必要になると伝えてきています。過去数十年に渡って被災各地で活動してきたユニセフは、今回も地震・津波発生直後から、被災者の支援活動にあたっています。それに合わせ、被害状況の規模と詳細が次第に明らかになってきています。
ユニセフは、被災各国のユニセフ事務所スタッフによる救援活動を応援するため、他のアジア各国のユニセフ事務所やジュネーブ欧州地域本部等から、人道支援活動の経験豊富なスタッフを被災各地に派遣しています。
(注:金額は暫定。現地被害状況が更に把握されるに従い、逐次更新されます) |
[インドネシア(アチェ)]
30日現在(現地時間)、非公式な数字として、地震による死者は8万人を超えると伝えられています。地震発生直後に死亡した人々に加え、地震で深刻な怪我を負いながら治療を受けられずに死亡した人が相当数に上ると見込まれており、犠牲者の数は、今後さらに大幅に増える可能性もあります。29日夜(現地時間)には、アチェの首都バンダ・アチェでマグニチュード6.1の余震が報告されました。
食料不足が深刻で、被災者の多くが3〜4日満足な食事をしていません。ユニセフの追加支援物資は既にインドネシアの首都ジャカルタや被災地に最も近い都市メダンに集積されています。しかし、車両が不足しているほか、バンダ・アチェには小さな空港が一つしかなく、またジャカルタに十分な数の輸送機が無い為、被災地への支援物資の到着が大幅に遅れています。
アチェ州の地方政府・自治体組織機能が麻痺したため、インドネシア政府は、この地域、特にバンダ・アチェとその近隣地域に対する支援について、ユニセフをはじめとする国連機関に全面的に依拠するとの声明を発表しています。
31日(現地時間)にはユニセフの保健専門家チーム等がバンダ・アチェに入ります。
[スリランカ]
29日現在(現地時間)、スリランカ政府は、死者2万1,715 人(最も多い死者が報告されているのはアンパラ地区8,308人とガル地区2,398人)、家を追われた人74万5,818人 、負傷者8,602 人、行方不明者4,028人、と発表していますが、倒壊した建物の中などにどれだけの遺体があるか、未だ確認できていません。また、各地で放置されたままの遺体の腐敗がはじまっています。地元警察等が、身元不明の遺体の写真と指紋採取を行った後、合同埋葬を始めている地域もありますが、埋葬の前に身元確認を待っているような地域もあります。
子どもの被害者については、被害者の内訳が不明のため、正確な数は分かっていません。現地を訪れたユニセフ・スリランカ事務所代表は、ガル地区のクリケット競技場で身元確認のために安置されていた15体の遺体のうち6体が子どもだったと報告しています。
現在565カ所に避難所が設置されていますが、津波の被害が起きてから既に5日経つ現在も、避難する人の数が日に日に多くなっています。下痢性の感染症などの広がりが懸念されるため、避難所での飲料水と衛生環境の確保が、より一層大きな課題になっています。
被災直後に開始した現地調達分の支援物資の配布は30日までに終了しましたが、29日と30日 (全て現地時間)にはコペンハーゲンのユニセフ物資供給センターから65トンの追加支援物資が到着しています。
ユニセフは、国連チームの中で、水と衛生および教育に関する活動で中心的役割を担っている他、WHO(世界保健機関)と協力し、保健分野での活動も行っています。また、スリランカ教育省が設けた災害対応委員会に加わり、教育分野での対応策を協議しています。各被害地には、教育省により緊急調整官が配置され、深刻なトラウマを負った子どもに対する心理的対応策や、各家族が日常生活を取り戻すための支援についてどれだけのニーズがあるか最初の調査が行われました。学校の施設、教科書や文房具、学校の水道や衛生施設など、教育面でのニーズについては、中期的な課題として今後検討される予定です。
[インド]
30日(現地時間)現在、ユニセフが把握する限り、インド南部の8つの被災地域に約380カ所の避難所が開設され、うち、タミール・ナドゥ、ケララ、ポンディチェリーの避難キャンプでは、およそ40万人が避難生活を送っています。余震が続き、更なる津波被害の恐れがあるため、津波被害がそれほど深刻ではなかった地域でも、夜間を避難所で過ごす人々が少なくありません。現状では、タミール・ナドゥ州の小学校の新学期の開始時期が、当初予定よりもずれ込むことが予想されます。
ユニセフは、初動支援として、水・衛生・シェルター・毛布などの物資を各避難キャンプへ提供してきましたが、感染症等の被害が予想されるため、現在、安全な飲料水の提供と避難キャンプ内の衛生環境維持の支援に力を入れるとともに、保健・医療専門職員を増員し同分野での支援活動にも重点を置き始めています。また、被災各地の現状が明らかになるにつれ、より大量の支援物資を各避難キャンプへ搬送しています。
[タイ]
30日15:00時現在(現地時間)、津波被害の死亡者は、タイ政府の公式発表で1,976人に達し、うち69%がタイ人と報告されています。また、怪我は9,630人。5,208人が行方不明です。正確な数はわかりませんが、ユニセフは、この中に相当数の子どもが含まれていると予測しています。30日(現地時間)にパンガー県各地の病院を訪れたユニセフの調査チームによれば、各病院で死亡が確認された人々の34%が子どもでした。チームは、これに合わせ、避難所に住む子ども達の面接調査も行いましたが、多くは深刻なトラウマの症状を表し、一様に家には戻りたくないと訴えていました。また一刻も早く学校に戻りたいとも訴えていました。
ユニセフは、これまでにトラウマを含めた子どものニーズを把握し、カウンセリング等の支援を提供するため、専門に訓練された小児科医や看護婦、ボランティアを、被災各地に派遣しています。31日(現地時間)以降も、クラビ、パンガー、ラノング、プーケットなどに現地調査チームを派遣します。また、来週の新学期に合わせ、被災地域の小学校100校に教材やスポーツ用品などを提供します。
[日本人スタッフ]
被災各国では、経験豊かな日本人ユニセフスタッフが活躍しています。
インドネシア:西嶋礼子
ルワンダ・ウガンダ・アフガニスタン等で緊急人道支援活動に従事。ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所(バンコク)緊急支援アドバイザー。29日、ジャカルタに入りました。
スリランカ: 西野裕子
コソボ・ソマリア等で緊急人道支援活動に従事。ユニセフ・スリランカ キリノチチ(Killinochchi)事務所勤務。
マレーシア: 中満 清
ジンバブエ・ケニア・パプア等で緊急人道支援活動等に従事。ユニセフ・マレーシア事務所副代表。
|