HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > 東ティモール情報 2006/6/30
財団法人日本ユニセフ協会



避難生活を送る子どもたちを、歌とスポーツが勇気づける

© UNICEF Timor-Leste/2006/Ruiz
避難キャンプに、レクリエーションキットを運ぶユニセフスタッフ

6月28日から2日間続いている新たな暴力事件のため、避難キャンプでの活動に一部支障が出ています。NGO、政府省庁のスタッフやボランティアは外出を恐れています。ほとんどの保健員が襲撃の対象となるのを恐れて避難しているため、実施中のはしか予防接種キャンペーンはまだ3ヶ所のキャンプでしか実施されていません。

現在、首都ディリでは65のキャンプで72,000人以上が避難生活を送っており、ディリに住んでいた79,000人は地方へ逃げ、キャンプか親戚の家で生活しています。全国で、18歳未満の75,000人の子どもが避難生活を送っていると推定されています。

栄養調査

ユニセフは、保健省やNGOと協力して、予定通り6月30日2時から、避難キャンプの6ヶ月〜5歳までの子どもを対象に栄養調査を実施します。治安状況にもよりますが、調査は7月までに全ての避難キャンプで実施される予定です。NGOや保健省スタッフの研修は予定より1日遅れました。東部からディリに到着したデモ隊による治安悪化が懸念されていたため、研修は半日へ短縮されましたが、6月29日の研修には多くのスタッフが参加し、30日の午前中も実践演習が継続される予定です。

緊急事態が起こる以前から、東ティモールはアジア太平洋地域において、最も子どもの栄養状態が悪い国に挙げられていました。2003年の統計では、5歳未満の子どもの44%が低体重で、14%が重度の低体重、48%が発育阻害です。

「緊急事態が続く中、食べ物は乏しく値段も高騰し、キャンプも病気が蔓延しやすい状況です。子どもたちの健康や栄養の状態がさらに悪化することが懸念されています。今回の調査は、重度の状態の子ども達を見つけ、すぐ治療を受けさせることが目的です。」ユニセフの子どもの保護と母子保健担当官のジェニファー・バラックは言います。

研修を受けた保健省やユニセフ、NGOスタッフの付き添いのもと、医者は子どもたちの上腕囲を計り、栄養状態の一次調査を行います。重度の栄養不良の恐れがある子どもは、さらに体重と身長を計ります。重度の栄養不良と判断された子どもはディリ国立病院にすぐに入院し、栄養強化ミルクによる治療を受けます。中度の栄養不良の子どもは避難民キャンプ内で医者による治療を受けます。

子どもたちを支えるボランティア

© UNICEF video
子ども達に歌おうとさそう、子どもの保護のために活動するボランティア(写真左)。東ティモールのキャノシアン・シスターズ・ベコラ避難キャンプにて。

最近の暴動の発生は、多くの人が抱える心の傷を再び呼び覚ましています。キャンプでの厳しい生活環境と、消えることのない恐怖に耐えながら、子どもや若者は心理的な苦痛だけでなく、肉体的にも苦痛を受ける危険性があるのです。

「キャンプには子ども達が生活する上での問題が山ほどあります。」キャンプで子どもの保護のために活動するチームのメンバーであるフィロメナ・バボはいいます。「虐待の報告も数件あり、性的な虐待も頻繁に起こっていると思います。」

多くの学校が閉鎖されたままで、仕事も通常業務ができない状態にあるので、若者達は時間を持て余しています。多くの若者が酒やタバコなどに手を出していきます。「中には、真夜中まで、賭け事にふける連中もいます。彼らは騒いで、大きな音をたてるので、親はたいそう怒って、彼らを殴るんです。」バボはいいます。

避難キャンプの子どもや若者に、安心して生活できる環境を整えることはとても重要です。

「最初に行ったことは、キャンプ内で子ども達のための活動を立ち上げて実施するためにサポートしてくれるボランティアを集めることでした。」ユニセフの子どもの保護担当官ヨハンナ・エリクソン・タキョーはいいます。「体系化された活動は、精神的なストレスの解消を助け、子ども達に大きな声をだして笑ったり、泣いたりする機会を与えます。」

22の避難キャンプで、子どもの保護担当リーダーが数十人選ばれ、訓練を受けました。リーダー達は、演劇、歌、ダンスや絵など、できる限りの能力を発揮して子どもたちを集めます。

「私達たちは、子どもが毎日集まることができるように手助けし、一緒に歌います。」キャノシアン・シスターズ・ベコラキャンプで活動するボランティアはいいます。

スポーツは心の支え

© UNICEF video
東ティモールで最近発生した暴動で、足を負傷した男の子。ユニセフのレクリエーションキットに入っていたサッカーボールで遊んでいる。

青少年にとって、スポーツでストレスを発散することは、多くの場合、破壊行為などの非行にはしらないようにするために最良の方法の一つです。ワールドカップが行われているため、東ティモールの子ども達の間でも、サッカーがはやっています。ユニセフはディリにある20の避難キャンプに50セットのレクリエーションキットを届けました。銀色の箱の中には、それぞれ、黒板、チョーク、なわとびに加えて、サッカーボール、バスケットボール、バレーボールなどのスポーツ道具が詰っています。

「僕はサッカーが大好き。」たった今レクリエーションキットから取り出した、サッカーボールを蹴りながら、10歳のぺドゥロ・ピントはいいます。「住んでいた家や友達から離れるのはとってもさみしい。今でも、家に戻りたいし、友達にだって会いたい。でも、ここは安心して生活できるよ。」

ボールで遊ぶことに集中していれば、子ども達は悩みを忘れることができます。このことは、窮屈な避難キャンプでの生活においては、非常に重要なことです。そして、暴動で傷ついた人々は、スポーツで身体を動かすことによって、身体機能の回復が早まると、オーストラリア人外科医のグレン・ゲストはいいます。

「起き上がって、再び動き回ろうという気分にさせることは、けがを負った人々の回復を早めるための、ひとつの方法です。」とゲストはいいます。