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平和へのメッセージを伝える青少年センター【2006年11月2日 東ティモール、ディリ発】
14歳のエリオ・ダ・コスタは手を止めて自分の作品を眺めた後、最後の仕上げにとりかかりました。エリオは今、東ティモールの首都・ディリにある聖ヨセフ・マイナー神学校の壁に、平和と非暴力への願いをこめたメッセージを描くのに夢中です。 エリオがメッセージを描いている壁は、彼が家族と共にここ半年間生活している避難民キャンプの隣にあります。エリオの家族のように、ディリで最近発生した暴動により、住んでいた家が被害を受けた家族は数千にのぼります。 9月に入って、ディリでは多くの学校が授業を再開しましたが、エリオは通学を怖がり、学校に戻っていません。4、5月に突如発生した暴動の影響を未だに引きずり、市内では緊張が続き、暴力事件もおこっているため、エリオのように不安から学校に通おうとしない子どもたちは他にもいます。 学校に行かないエリオは、昼の間、ユニセフが支援する現地NGO「青少年コミュニケーションフォーラム(FCJ)」のところで過ごします。 路上で生活する子どもたちへの支援エリオが生活する避難民キャンプの向かい側で、FCJはディリの路上で働き、生活している子どもたちのために、住む場所やレクリエーション活動、学校外教育のほか、福祉活動や親と離れ離れになってしまった子どもたちを家族と再会させるための活動も行っています。 FCJセンターは若者同士の争いの頻発するサンタクルズ墓地近くに位置しているため、今回の暴動が発生した当初から、その活動の重要性が強調されてきました。時にセンターの敷地内にも、争いから身を隠したり、休んだりという目的で、彼らが侵入してくるからです。 「若者達は騒いで、石を投げつけてきます。」と、FCJの責任者のチプリアーノ・オリベイラは言います。「彼らのことは私達も恐れていますが、接したいと思っています。彼らもまた、私たちを怖がっており、不信感を抱いているに違いないからです」 2001年から、ユニセフは路上で生活する子どもたちのためのFCJセンターを支援しています。この活動は、路上生活を営む子どもたちを暴力、虐待、放置や搾取などから守ることを目的としています。町中での抗争に巻き込まれてしまう若者が増えている今、このような活動はその重要性を増しています。 暴力のかわりに
センターを囲む外壁に平和と非暴力への願いを込めたメッセージを描くというアイデアは、FCJの活動の一環です。メッセージがかかれている壁は、争いがおこった時に若者達が裏に隠れて互いに石を投げ合うこともある場所です。 このように壁にメッセージを描くことで、路上で生活する子ども達を前向きな活動に参加させることができ、同時に、FCJが暴力や衝突を嫌う、平和と和解のための場所であるということを理解してもらうこともできます。また、エリオのような子どもが、ディリ近郊で頻発する暴動に関与しているグループへ参加することを未然に防ぐための機会にもなります。 10月、センターは若者に絵の具と筆を与え、近くの避難民キャンプや近所の子どもたちに参加を呼びかけて、壁にメッセージを描いてもらいました。たった一日で、壁は「暴力をやめよう」、「ティモールの文化は戦争ではなく平和」などのメッセージで飾られました。 「みんながこのメッセージをみて、争うのをやめてほしいとおもいます」と、エリオは言います。 「少しずつ若者たちの参加を促し、彼らにけんかや争いに代わるものを提供していく必要があります。ゆっくりとですが、彼らと私たちの間に、信頼や友好的な関係が生まれていくでしょう」と、オリベイラは言います。「さらに若者達が、彼らの友達にもセンターの実施する平和活動に参加するよう呼びかけることもできるのです」 |