メニューをスキップ
HOME > 「命をくれる水、命をうばう水」 > 各国からのレポート2 カンボジア
財団法人日本ユニセフ協会

各国からのレポート2 カンボジア

2007年1月15日 カンボジア・プレイベン州発「衛生的で健康な村の生活を実現するために・・・」
 スバイチャ村にユニセフの車が砂ぼこりをたてながら到着しました。この村では以前からいくつもの啓発キャンペーンが行われてきましたが、今回は何か違うことが起こりそうです。これまでの衛生に関する人々の姿勢を変えるための新しいアプローチが試されようとしているのです。

 1軒の昔ながらのクメールの家。ここに村人たちが集まってきます。部屋の壁にはびっしりとポスターが貼られています。
「HIV/エイズを防ごう」、「手洗いをしよう」「トイレはきれいに」保健や衛生について教育するためのポスターです。

カンボジアでは、汚れた飲み水や不衛生な環境のために、何万人もの子どもが亡くなっています。現にカンボジアは、トイレなどの衛生施設の普及率が世界で最も低い国のひとつです。最近の統計によると、安全な水を手に入れられるのは全人口の41パーセント、さらに、トイレなどの衛生施設を使用できるのは、たったの17パーセントにすぎません。

衛生的な水や環境がないことで
一番影響を受けるのは子どもたちです。
© UNICEF Cambodia

 「衛生施設がないことが、とても多くの病気の原因になっているのですが、この問題にはなかなか注目が集まらず、政治的な決断も遅れています」と、農村開発省のチュリー・ポムさんは話します。
 カンボジア政府とユニセフは、1999年から「コミュニティ主導型の総合衛生プロジェクト」をはじめ、いま、次第に成果があがりはじめています。

成功と挑戦:壊れた井戸をそのままにさせないために
 これまでの取り組みの結果、多くの州で、トイレの数が飛躍的に増加しています。たとえば、スヴェイリエン近隣の州では、半年間で、およそ1000ヶ所に新しいトイレが設置されました。

 こうした心強い変化の一方、問題はこうした取り組みが長続きしないことにあります。というのも、村人たちは、新しいトイレの設置や壊れた井戸の修理に、外から誰かがやってくることを、ただじっと座って待っているだけだったからです。「コミュニティ主導型の総合衛生プロジェクト」では、こうした姿勢を変えるところからはじめようとしています。プロジェクトでは、コミュニティ自身のリーダーシップを高め、その土地で必要な資材を入手できるようにすることに力点が置かれています。

 スベイチャ村では、支援の結果、80%の家庭がトイレを設置しました。しかし、重要な課題がまだ残されています。つまり、どのようにしたら住民自身が自分たちのトイレの維持や改修に取り組むようになるのか、より衛生的な行動をどうしたら身につけられるのか、そして、一時的な行動の変化をどのように長期的で恒常的なものに変えてゆくのか、ということです。
 この段階で、住民参加型の衛生変革(PHAST)がはじまります。

女性たちの参加と変化の兆し
 PHASTは、住民参加に重点を置いており、良い衛生環境がどうして大切なのか、その理由を住民自身が自覚できるような手助けをしています。

 今日、村の一軒家に集まった多くの女性たち。彼女たちは家庭の中で行動の変化をもたらすとても重要な存在です。集まった母親たちはスタッフの説明を静かに一生懸命聞いています。すると、道具箱の中から絵のついたカードが配られ、ワークショップがはじまりました。

ゲームを通じて学ぶ
© UNICEF Cambodia

 参加者は小さなグループに分かれ、カードを並べながら毎日の生活に関する話を始めます。このカードのデザインは、地元のアーティストが担当しました。話し声と笑い声が部屋中に満ちています。農村開発省とユニセフの指導を受けた州の農村開発部のファシリテーターが、公衆衛生と衛生環境の話へと会話を導いていきます。

ファシリテーターが会話に入り込みすぎないことが大切です。衛生と健康を関連づけて考え、環境や健康を良くする方法を自分たちで考え出さなければ意味がないのです。
「ファシリテーターはとても重要な役割を担っています。長期的な結果を生むために、彼らは住民とうまくコミュニケーションをとらなければなりません」と農村保健所の主任、チャン・キム・シアンさんは話します。

忍耐がカギ
 「トイレはハイテクで高価なものである必要はありません。地元で入手できる資材、つまり竹やヤシの木などで安価に作ることができるということを分かってもらわないと・・・」と話すのは、スヴェイリエンのコミュニティ委員会メンバー、ソスエンさん。

 彼女は、日々、各村を訪問しプログラムの状況をモニターしています。「一番良かったのは、村長さんと協力できたことです」スベイチャ村でのPHASTはうまくスタートしたようです。村人たちは集会を楽しみ、積極的に参加しています。スタッフもやりがいを感じています。
 次のステップは1〜2ヶ月のうちに始まります。というのも、プログラムの日程は、収穫時期など住民の予定に従って設定されるからです。プログラムのキーワードは「参加」。決してファシリテーターや支援団体の都合で決めてはなりません。確実な成果を求めるためには、粘り強く、忍耐をもった取り組みが欠かせないのです。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る