ハイチの首都ポルトープランスから南へ45キロ、レガン。他の多くの女性たちがそうであるように、カテリー・ラバラスさんも、生活環境が悪化しているのは、安全な飲み水がないためだ、と思っています。近所の手押しポンプ式の井戸は長い間故障していて、修理されるようすはありません。
「もう、耐えられません…」カテリーさんは、そうこぼします。 「子どもたちはいつもいつも下痢をしていて、私はずっと家とグランドゴーブにある診療所を行ったり来たりしています。子どもたちが死んでしまうのではないかと、心配で仕方がありません」
彼女がそう恐れるのも無理はありません。安全な飲み水がない、基本的な衛生に対する知識がない、それだけのために、世界中で毎年150万人の子どもたちの命が奪われているのです。ハイチでは、衛生施設を使えるのは人口の約30パーセント。5歳未満の子どもの死因のトップは下痢によるものです。
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1980年代、ユニセフは多くの家庭に安全な飲み水を届けるため、また子どもたちの下痢や下痢性の病気を防止するため、レガンをはじめ多くの地域で手押しポンプ式の井戸の設置を支援してきました。 |
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カテリー・ラバスさんと3人の子どもたち:
ダニルソンくん5歳、ノエリーンちゃん3歳、
ルチアナちゃん1歳
©UNICEF Haiti |
地域によっては、改善された水道設備の恩恵を得られているところもあります。10歳の少年マッケンジー君と友人たちは水のかけ合いが大好きです。女性たちもバケツいっぱいの洗濯物を持ってきては井戸の周りに集まり、おしゃべりを楽しんでいます。
ですが、カテリーさんは、残念ながら幸運に恵まれませんでした。22歳の彼女は、すでに3人の子どもの母親で、今、4人目を妊娠しています。家族が暮らしているのは、古いアシの屋根と薄い金属板の壁の小屋。家の前には手押しポンプ式の井戸があるのに、故障していて使えません。
「1人目の子どもを産んだ一年後に壊れてしまってそれっきり」と、カテリーさんは悲しそうに言います。自分で雨水タンクを買うこと ができないので、今は、近所の人から雨水タンク の水を分けてもらって、なんとか水をやりくりし ています。
子どもたちが病気になる原因が汚れた水だと分かっていても、他には水を得る方法がないのだと言います。
「一番近い水場でも家から2時間もかかるから、毎日行くことはできないの。しかもおなかが大きい私にはとても大変」「1歳になるルチアナをかかえながら、頭の上に水の入ったバケツをのせて運ばなければなりません。だから、バケツの水をそのまま子どもたちに飲ませてしまうことだってよくあります」
何度も繰り返される下痢で、子どもたちは弱ってしまいます。5歳のダニルソン君は、年よりももっと小さく見えますし、ノエリーンちゃんは3歳ですが、まだ歩くこともできません。1歳のルチアナちゃんは、まだ本当に小さくて、手や足がむくんでいます。
カテリーさんの家の道路をはさんだ反対側の家には、汚れた水を飲んで、病気になってしまった2歳のソフィアナちゃんがいます。母親のソフィアさんは、まだ15歳。シングルマザーとして子育てをする一方、学校を卒業するために必死で勉強しています。
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© UNICEF Haiti |
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学校に行っている間は、叔母が子どもを見てくれます。ソフィアさんは子どもに安全な水を与えるために、毎日、朝早く起き、1時間以上かけて井戸まで水を汲みに行きます。そして、さらに1時間かけて学校に行くのです。
「毎日これを続けることはできません。だから時々、近所の家のタンクの水を使わせてもらうのです」
その結果、ソフィアナちゃんはよく病気にかかり、ソフィアさんは学校を休まなければなりません。 「ソフィアナが病気のときは、叔母は世話をしたがらないのです。ソフィアナのそばについていないとならないので、学校の成績はよくありません。でも、叔母以外には、子どもの世話を頼める人は誰もいないし・・・」
「もしあの井戸がちゃんと使えてたら…。こんなに疲れ果てながら学校に行くことはなかったと思います。ソフィアナともっと一緒に過ごすことができるし、ちゃんとご飯を作ってあげられれば、もっと元気に過ごせるのに。ソフィアナが病気になってばかりいるので、学校に行くことも、夢も、全部あきらめなければいけないかもしれないと考えると、悲しくなります。」
ソフィアさんの夢は、大学を卒業し、良い仕事を得て、自分とかわいいソフィアナちゃんのために素敵な家を買うことです。
「子どもには、自分の人生を決定する機会を持ってほしいのです。子どもを産む時期も、相手も、自ら選ぶ人生にしてほしいのです。彼女には、私よりもずっと良い人生を送ってほしいの・・」
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