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公益財団法人日本ユニセフ協会
 



中東・北アフリカ緊急募金 第11報
ユニセフ:リビアから逃れてきた避難民を支援

【2011年5月11日 チュニジア/ラス・ジェディール発】

© UNICEF Tsunisia/2011/Scripture

ニジェール出身のファトマさんが、15歳にしてすでに2人の子もちだというのは一見しただけでは想像がつきません。でも、ニジェールの女性たちには若年婚が多く、決して珍しいことではありません。

彼女は、下の子のアッシーちゃん(10カ月)を細い体で抱きかかえながら、ここ数週間にわたる出来事を振り返り、不安そうな表情を浮かべました。爆撃の音で眠れぬ日々が続いたと言います。そのため、一家はこうして、5年間住み慣れたリビアのセブハを去り、チュニジアに避難してきたのだそうです。

[右写真]ファトマさん(15歳)と2人の子どもたちは、リビアでの混乱を避けて、サブハから避難してきた。祖国のニジェールに戻れる日まで、シューシャ一時滞在キャンプが臨時の家となる。

暴動と爆撃から避難
© UNICEF Tsunisia/2011/Scripture
リビアとチュニジアの国境にあるラス・ジェディールのスーシャ一時滞在キャンプで、11カ月になるアリちゃんと遊ぶ、ユニセフの精神・社会的ケア担当のスタッフ。

「騒音が激しかったです。家自体が振るえるほどでした。平和が戻ったら、また家に帰ります。リビアは離れたくなかったんです。いい暮らしをしていましたから」ファトマさんは、シューシャ一時滞在キャンプにいるユニセフの精神分析医にこう話しました。ファトマさんは、先週の水曜日にこのキャンプに来たそうです。

ファトマさん一家は、ニジェール行きの飛行機が飛び立つ日までこのキャンプに滞在します。決して喜んでニジェールに帰るわけではありません。リビアでの生活をしばらく諦め、祖国ニジェールに戻り、新しい仕事を探して、新たな出発をしなければならないのです。

パルビンさん(19歳)は、先週の木曜日に到着しました。トリポリから、夫と11カ月になるアリちゃんと一緒に、家財を積み込んで車で避難してきました。やはり、爆撃が激しくなり、眠れない日々が続いたので逃げてきたと言います。「赤ちゃんは夜中じゅう泣いていました」そう語るパルビンさんの脇で、アリちゃんはピンク色の古着に身を包んで、転げまわっています。「故郷のバングラデシュに戻って、夫の家族と住みます」とパルビンさん。

将来への不安

3,300人以上いるシューシャ一時滞在キャンプの避難民たちの中にも、ファトマさんやパルビンさんと似た境遇の人たちがたくさんいます。ほとんどがリビア以外の国から移民してきた人たちです。ラス・ジェディールには、シューシャ・キャンプ以外に、2つありますが、いずれも避難民たち(リビアに移民していた第三国の人たち)に一時的なケアを提供するために設置されています。人々は、この先、もともとの故郷である第三国(多くがニジェールやスーダン)に帰って行く予定です。

ところが、キャンプに住む人の50%以上(例えばエリトリア人、ソマリア人)は、祖国でも紛争や政治的な混乱が続いているために、帰ることができません。実際のところ、今回の避難騒ぎは、彼らにしてみれば、決して初めてのことではないのです。

ユニセフは、シューシャに拠点を置き、基礎的なニーズの提供、子どもたちへのケアと保護の面での支援を行っています。また、衛生サービスを提供し、子どもと家族たちが、安全な飲み水を飲むことができるよう、また、入浴ができるよう配慮しています。

ユニセフが派遣した精神分析医のチームも、1対1でのカウンセリングに臨んでいます。特に、親や保護者がいない子どもたちを対象に、ケアを提供しています(このキャンプには37人います)。また、パートナー機関であるセーブ・ザ・チルドレンと一緒に設置した「子どもに優しい空間」を利用するよう、キャンプにいる家族を説得しています。この空間は、リビアとチュニジアの国境地帯に留まらなければならない子どもたちに、ある程度の「正常な生活」を取り戻させる場となっています。

このほか、ユニセフが提供した資金をもとに、シューシャ一時滞在キャンプでは、火曜日に、学校も開校されました。避難民の子どもたちは、ここで、英語、アラビア語、算数を学び、レクリエーション活動に参加することができます。

元気と活気を取り戻す

学校やプレイセンター(安全な環境のもとで遊ぶことができる場所)は、キャンプに住む子どもたちにとってとても大切な場所です。単調になりがちな避難生活から逃れ、社会性を培うこともできるからです。

避難民も、次の生活に落ち着くまでの間、キャンプでの生活を最大限に利用すべく努力をしています。

「避難民たちは、何かしたい、という気持ちになっていますね。(単調な生活に)飽きてきているようです。今、彼らが心配しているのは、食料や臨時の住まいのことではなく、未来のことなのです。『ここには、いつまでいなけばならないのか?』ということです」と説明するのは、シューシャ・キャンプにいるユニセフの精神・社会的ケアを担当するホリエム・サイダニさんです。

当座のニーズは国連機関やパートナー機関が支援してくれるため、避難民たちは、小売店やシーシャ(水タバコ)喫煙店、映画小屋などを作っています。単調になりがちな避難生活に少しでも彩りをつけようと努力しているのです。