HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > 中東・北アフリカ緊急募金
公益財団法人日本ユニセフ協会
 




中東・北アフリカ緊急募金 第13報
120万人を超える子どもたちが、学校に!

【2012年1月13日 リビア発】

© UNICEF Libya/2012/Burckhardt
10ヵ月あまり続いた内戦の後、学校が再開したことを祝って教育大臣が訪問したアル・サラム学校の男の子。

内戦の勃発からほぼ1年となったリビアで、今月7日、学校が再開。何ヵ月もの間学校に通うことができなかった120万を超える数の子どもたちが、一斉に学校に戻りました。

「本当に学校に行きたかったんだ。」と話すのは、スルタンさん(13歳)。

10ヵ月間にわたって続いた内戦は、リビアの教育制度に甚大な被害を与えました。多くの学校が閉鎖され、校舎が破壊されたり、軍事活動や支援活動の拠点として利用されたりしました。

長きにわたった紛争と、それに続く政情不安。スルタンさんは、学校に通うことやスポーツをすることは我慢し、ほとんどの時間を家の中で過ごさなくてはなりませんでした。

でも今、紛争が終わり、彼は幸せを感じています。「新しい先生や新しい友だちに会うのが楽しみなんだ。」(スルタンさん)

先生方もまた、仕事を再開できるのを楽しみにしています。「私は英語の教師ですが、2011年の5月から英語を一言も話していません。英語で話す機会がありませんでした。」 トリポリの学校で教えているアリア・サーリアさんはこう話しました。

拭えない不安

一部の学校は、昨年9月から10月にかけ既に再開されていましたが、多くの学校は、教材などの不足で再開することができませんでした。また、多くの人々が、戦争が終わった後も散発していた銃の発砲や、国の至る所に残された不発弾に不安を覚えていました。

内戦は、負傷者を目のあたりにしたり、時には愛する人々の死を経験した子どもたちの心に、大きな傷を残しました。スルタンさんの親しい友人のひとりは、内戦の終結を祝う人々が小銃を乱射した“祝砲”の流れ弾で負傷しました。「銃の乱射はやめてほしいです。」(スルタンさん)

首都トリポリ郊外にある小学校の副校長のカーレド・ハモウダさんによると、この紛争で、多くの子どもたちの遊びが変化したといいます。「今、子どもたちは、銃を使った遊びをしたがっています。」

リビアに長年君臨していたカダフィ大佐のかつての住居の近くに暮らすドゥニアさん(13歳)は、「内戦の間、毎日爆発や銃撃の音が聞こえていました。」「とにかく今は、リビアの人々が、みんなで一緒に平和に安心して暮らせるように願っています。」と語ります。

復興への鍵は教育
© UNICEF Libya/2012/Burckhardt
ユニセフと教育省が配布した教材を手にする子どもたち。

ユニセフは、パートナー団体と協力しながら、多くの学校で地雷や不発弾の除去や、校舎の修繕を進めてきましたが、その数が増えるにつれ、子どもたちを学校に通わせる親の数も増えてきました。子どもたちを再び学校に通わせることは、子どもたちが日常生活を取り戻し、リビアという国が、平和に向かって復興していくための重要な最初の一歩となるのです。

スレイマン・サーリ教育大臣も、包括的な教育制度を構築することを重要視しています。子どもたち自身が、自ら積極的に教育を受けられるようにしなければならないというのが、大臣の持論です。

しかし、子どもたちが必要としている支援は、教育に留まりません。内戦中の悪しき経験に上手く対処できるよう、深刻なストレスを抱えた子どもたちを中心に、心理社会的な支援も提供されています。アル・サラム小学校でソーシャルワーカーをしているナディア・アジュバリさんは、「子どもたちは、ドアの閉まる音も怖がっています。」「以前よりも、親にくっついて離れないようになりました。」と語っています。

また、国内で避難生活を送っている子どもたちをはじめ、様々な厳しい立場に置かれている子どもたちも学校に入学できるように、特別な支援も行われています。教育省は、社会の最も底辺に取り残された子どもたちのために、学校への通学手段を提供する準備も進めています。

世界中の支援者のみなさまからのご支援で、ユニセフは、リビア政府が進めている広範囲にわたる教育の再建活動を支援しています。その中でも最も重要なもののひとつは、教育の質の向上と、子どもたちと先生方の間の信頼関係を回復することです。

「先生方が、より良い資質を持ち、将来に希望を持ってくれれば良いと思います。先生方と生徒の間の関係が、以前のように“先生に対する怖さ”で成り立ってはいけないのです。」 将来は、政治の勉強をして、新しいリビアの建国に貢献したいと願うドゥアさん(16歳)は、こう話してくれました。