■食べ物が十分あるのに栄養不良、なぜ?
(質問・ヤックルさん )
こんにちは。ユニセフ子どもネットのヤックルです。
「食料が十分にあるのに栄養不良のこどもがいる」とのことでしたね。
“子どもにご飯をあげる時間が無い”が答えではないでしょうか?そのほかにもビタミンやミネラルが不足することで栄養不足にもなると思うのですがどうでしょうか。・・・・
一つの国の中で栄養の格差が広がっているというと僕の想像では経済的な格差に比例すると思うのですがどうですか?やはり、栄養の格差があれば、経済的な格差も同時にあると思うのです。
<岡村恭子>
両方正解だと思います!家族に最低限必要な食料があっても慢性の栄養不良になってしまう原因は幾つもあって、その組み合わせは国や地域や家族によっても少しずつ違うのですが、代表的なものは:
母乳育児をしていない。できていない。(「正しい母乳育児」については勉強してみて下さい!)
離乳食やその後の子どものご飯の「質」が充分でない。
‐水で薄めてしまったりして栄養価が低い。
‐栄養が偏っている(炭水化物のみでたんぱく質や微量栄養素が欠けている)
離乳食の「量」が充分でない。
‐母親の時間がないので、一日にご飯を食べさせる回数が少ない
‐母親の時間がないので、一回一回の食事に食べさせる量が少ない(日本では親が何時間もあやしたりなだめたりしながらスプーンを口に運んで、一口ずつ食べさせますよね。結構時間のかかるたいへんな労働です!)
‐小さい赤ちゃんは言葉で「お腹がすいた〜!」と言えないし、小学生以上の子どものように自ら食べ物を獲得しにいけないので、親は十分に食べさせている(または子どもの食欲がないからしょうがない)と思っている。
寄生虫によってせっかくとった栄養を失っている!
‐水が汚れていて、頻繁に下痢を起こしている。
‐他にもいろいろな感染症や熱で、成長のために使われるべき栄養素が消耗されている。
‐お腹に寄生虫を持っていて、栄養素をとられている。
母親が栄養不良なので、生まれてくる子どもも胎児の時点から栄養不良になっていて、その後の成長に影響がある。
経済格差はあって、確かに深刻です。ただエチオピアの面白いデータがあって、家族の経済レベルによってエチオピアの人口を5段階に分けてそれぞれの子どもの栄養不良率を比べたところ、最も貧しいグループから2番目に裕福なグループまでほとんど同じなのです。確かに、「一番裕福なグループ」と「それ以外」との間には格差が存在するのですが、「それ以外」の中では経済レベルに関わらず栄養不良が存在するということなんです。
■微量栄養素欠乏とサプリメント
(質問・片桐さん )
はじめまして、ユニセフ協会ボランティアの片桐です。
現在私たちの周りには食べ物があふれていますが、カロリーは十分に摂れているのにビタミンやミネラルが不足し、サプリメントを愛用している人が少なくありません。エチオピアで微量栄養素の不足している子どもたちにもそのようなサプリメントを配給するということはできないのでしょうか?
<岡村恭子>
サプリメントも配布されています。例えば、日本ではほとんど見られないビタミンA欠乏症。ビタミンAは子どもの成長や免疫力に関係する大事な微量栄養素なので、世界のほとんどの途上国で、年二回ビタミンA補強剤の投与が行われています。これによって子どもの死亡が20−30%防げるという研究結果に基づいています。最近は亜鉛の重要性も注目されています。特にひどい下痢症の子どもに亜鉛のサプリを与えると、脱水症状などで死んでしまう確立が大きく減ることがわかっていて、事業化が始まっています。
難しいのは鉄。鉄分欠乏症は貧血の原因になりますが、小さな子どもの場合、成長や知能の発達等に深刻な影響があります。食欲も減退し、疲れやすくなるので、学齢期の子どもの学習能力にとっても問題です。鉄分はビタミンAと違って毎日少しずつ摂らないといけない栄養素なのですが、毎日毎日錠剤を飲ませることはなかなか難しく、シンプルで安くて効果的な対策がなかなかありません...。
まずお母さん(妊婦さん)が貧血にならないようにすること、母乳育児をちゃんとして、離乳食から鉄分を少しでも摂るようにすること(鉄分はお肉等に一番含まれているので、貧しい家族は一年に一回しか食べないようなことも...)、お腹の寄生虫も貧血の原因なので、ちゃんと子どもの虫下しをすること、鉄分を添加できる食品があれば事業化すること(小麦粉とか)、などなどでしょうか。
微量栄養素については、ミャンマーの錦織さんが面白い事業をやっているので、紹介してくれるといいですね。
<錦織信幸>
ミャンマー独特のちょっと変わった分野として脚気(かっけ)という病気の対策があります。みなさんは脚気って聞いたことがありますか?日本でも50年くらい前までは大変な問題だったんですよ。