|
アフガニスタン緊急・復興支援 第16報
|
© Afghanistan/2011/Froutan |
アフガニスタン南西部のヘラ−トで、2011年3月8日の国際女性デーを祝うセレモニーに出席する、女性の人権の唱道者であるスラヤ・パクザドさん(中央) |
人形は、ファラさん(匿名)にとって、奪われた「児童期」の唯一のシンボルでした。それだというのに、その人形も義理の母によって捨てられてしまいました。彼女の若年婚の話・・・父親に支払われた5万アフガニ(1,100米ドル)、その後に続く暴力の話・・・これは、ほかの多くのアフガニスタン女性から聞かれる話と同じでした。また、この生活に終止符を打つ方法も同じでした。そう、夫のもとを逃げ出し、女性のための保護施設に逃げ込んだのです。
現在、ファラさんは12歳。保護施設に入って1年になります。彼女の夢は、夫と離婚し、学校に通い、母親と父親のもとに帰ることです。タリバン政権のもとでは、女性の保護施設は存在すらしていませんでした。ところが、今回、アフガニスタン政府が、女性のための保護施設を管轄下に置こうという計画が明るみになり、再び注目を浴びています。
© Afghanistan/2011/Froutan |
オーストラリアのシドニーのユニセフ・ボランティアたちと、インターネットを通じて経験を分かち合う、アフガニスタンの若い女性たち。これは、女性の人権家スラヤ・パクザドさんがファシリテーターとなり、ユニセフが主催した。アフガニスタンの十代の女性たちが、オーストラリアの人たちに自らの経験を披露した |
アフガニスタンには、14カ所に保護施設があります。いずれも、ユニセフのような国際的な組織の支援を受けています。そうした保護施設にいる女性の40%は18歳未満です。
人権活動家たちは、アフガニスタン政府には保護施設を運営する力がなく、ファラさんのような女性や女子にとって、安全な場所ではなくなってしまうと考えています。そのため、今年の3月8日の「国際女性デー」に合わせて、21世紀の技術を使ってメッセージを発信しました。世界の多くの人が知らないこの土地で、若い女性たちがどのような困難に直面し、どのような希望を持っているかを、伝えたかったからです。
物怖じすることなく女性の人権を唱導するスラヤ・パクザドさん(彼女が率いるVWO<Voices of Women Organization=「団体『女性の声』」は女性のための保護センターをいくつか運営している)の指揮のもと、保護センターにいる女性の何人かが、SkypeやBGANを使ってヘラートにあるシェルターの屋上から、インターネットを通じて、オーストラリアのシドニーにある別の女性団体に向かって、自らの声を発信しました。
オーストラリア側で参加したボランティアたちは、アフガニスタンの女性たちの体験談に心を動かされ、スラヤさんが、若年婚や暴力から女子たちを守る活動をしていることで、逆に命を狙われていることに心を痛めました。
「私の命を狙っている人たちは、軍閥の長たち。つまり過激派に支援されている人たちです。電話で、あるいは、私をつけ狙って、『息子を誘拐する』、『おまえを殺してやる』などと言って、私を脅すんです」とスラヤさん。
脅しに屈しないスラヤさんは、アフガニスタンでは珍しい存在です。彼女は、アフガニスタンの女性たちは、現行政府のもと、物々交換品のように扱われていると感じています。そこで、優勢になりつつある過激派による「声をつぶそう」とする動きを、どうにかして抑え込もうとしているのです。
当局者の中には、保護施設が、アフガニスタンの伝統に逆らうもので、女性たちを家から逃げ出すのを手助けしている、と見ている人たちがいます。
「女性たちは、アフガニスタンではモノのように扱われているんです。国際社会が、アフガニスタン政府に圧力をかけないかぎり、いろいろなことが起こるでしょう」とスラヤさん。「まず、保護施設を女性課題省の管轄下にもってきて、女性課題省と一緒になったところで、女性課題省を廃止しようとするでしょう。そうなるときっとタリバンはハッピーでしょうね」
ユニセフは女性用の保護施設に対する支援を続ける意向です。
「受け入れられる方法で運営されていなければ、私たちが支援することはありません」と語るのは、ユニセフのアフガニスタン事務所のピーター・クロウリー代表です。
アフガニスタンでは、女性と女子の権利が飛躍的に改善されています。2001年には、初等教育の就学年齢にあった子どものうち、学校に通っていたのはわずか100万人でした。うち、女子はほとんどいませんでした。2008年までに、学校に通っている子どもは600万人になり、うち230万人は女子となっています。
「(女性たちの躍進は)もう止めることができない動きだと思います。それは、若い女性たちが、あるいはもっと上の世代の女性たちが、自らの力で生み出している潮流なのです。もうすでに成し遂げたこと、手にしたものは、簡単には手放さないはずです。」