財団法人日本ユニセフ協会



ソマリア:急増する「子どもの兵士」 ユニセフ、即時解放を求める

【2010年5月7日 ニューヨーク発】

ユニセフと、子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表は、ソマリアで激増している子どもの兵士への徴用に対して警告する報告書を発表。この国際法違反行為を即刻停止するよう訴えました。

ユニセフのアンソニー・レーク事務局長と、ラディカ・クマラスワミ特別代表が今週発表したこの共同声明は、「子どもたちは、軍服を着させられ、銃を持たされて、心理的にも、しばしば肉体的にも傷つけられています。こうした子どもたちは、おとなになってから、自ら子どもたちを兵士に徴用したり、暴力を振るう扇動者として育つ場合もあるのです。」

“生きるための術”

子どもたちを兵士として使っている武力勢力は、即刻子どもたちを解放しなければならないと訴えたレーク事務局長とクマラスワミ特別代表は、徴用された子どもたちが社会復帰するための準備は整っていると付け加えました。

ソマリアでの武力衝突が最近悪化する中、数え切れないほど多くの武力グループに徴用されている子どもたちの数も急増しています。ユニセフ・ソマリア事務所のロザンヌ・カールトン代表は、ソマリアの悲惨な経済状況から、子どもたちは“生きるための術”として兵士にならざるを得ず、状況をさらに悪化させている可能性があると指摘しました。

「子どもの兵士の徴用は、ソマリアで今まさに起こっている悲劇なのです」と、カールトン代表は共同声明を読み上げました。「緊急の対策が講じられない限り、ソマリアの将来が脅かされることになります。子どもと若者は、ソマリアの人口の大部分を占めています。彼らには、武力紛争の脅威から解放され、子どもとして生きる権利があります。」

9歳の子どもも戦場に
© UNICEF/NYHQ2007-0005/Kamber
ソマリアでは武力勢力によってわずか9歳の子どもが徴用され、戦うことを強要されています。

ソマリア全土の複数の武力グループによって徴用されている子どもたちの中には、わずか9歳の幼い子どもたちが含まれていると報告されています。学校が兵士の徴用の場として使われている例も報告されています。

また、ユニセフは、対立している武力勢力に捕らえられ、虐待されたり、銃殺されたりしている子どももいるという報告を受けています。武力勢力や武力グループによる子どもたちの“利用”は、いかなる状況においても戦争犯罪です。ユニセフは、声明の中で、全ての当事者に対し、この犯罪行為を即刻停止し、全ての子どもの兵士をすぐに解放するよう求めました。

また、ソマリアの武力勢力に対する支援を行っている人々を含め、国際社会に対し、子どもの兵士としての利用を容認できない行為として非難するよう求めました。

戦争行為が子どもたちに与える心理社会的な影響は深刻です。子どもの兵士として徴用された子どもたちは、心理的な外傷を負い、暴力に対し鈍感になっていることもあります。子どもを兵士として利用するという悪しき慣習が長期的に及ぼす影響は、ソマリア社会に壊滅的な影響を与える可能性があります。

武装解除と社会復帰の促進

「ソマリア南部と中部には、平和な状況で暮らした経験を持つ子どもはひとりもいません。」「ソマリアが、その社会を立て直し、平和的にこの問題に対処する方法が問われています。」カールトン代表はこのように話しました。

こうした子どもの兵士の問題以外にも、ソマリアの子どもたちは悲惨な状況に置かれています。5歳未満の子どもたちのうち19パーセントは急性の栄養不良に陥っており、中には、この割合が27パーセントに達している地域もあります。約360万の人々が、人道支援に頼って生活しています。ユニセフをはじめとする人道支援団体は、支援を必要としている人々に支援が届くよう活動し続けています。