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公益財団法人日本ユニセフ協会
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イエメン紛争
底をつく食糧と燃料
追い詰められる家族

【2015年5月20日 アンマン(ヨルダン)/アデン(イエメン)発】

12日から5日間にわたり行われた「人道支援のための一時停戦」は、紛争下での生活を余儀なくされているイエメンの家族に、大きな安堵を与えました。しかし、イエメンでは栄養不良や病気の蔓延が、爆撃や銃弾に増して、子どもたちの命を脅かす脅威となっています。

* * *

食糧不足で価格高騰、追い詰められる家族

サナアで、プラスチック製の給水タンクを積んだ台車を押して、水を汲みに行く男の子
© UNICEF/NYHQ2015-1291/Yasin
サナアで、プラスチック製の給水タンクを積んだ台車を押す男の子

ムハンマド・フセインくん一家は、イエメン南部アデンで最近起きた大規模な戦闘をかろうじてくぐり抜けた生存者のひとりです。戦闘を目の当たりにした13歳のムハンマドくんは、「とにかく悲しいです。僕の周りの全てがばらばらになっていきます。打ちひしがれたお母さんの泣き声が、夜通し聞こえてきます。空腹でお腹が痙攣したりします」と、日々の困窮した生活を語ります。

紛争下においてさえ、爆撃や銃弾よりもさらに子どもたちを追い詰めるのは、病気や食べ物がないことなのです。報告によると、イエメン国内の食糧の備蓄は底をつき始めており、食糧や燃料の輸入も不定期です。

食糧や燃料の値段は急騰し、食糧価格は1.4倍、燃料価格に至っては5倍近くにまで上昇しています。人道支援団体による救援物資も、紛争の影響で攻撃を受けたり、足止めをされたりしています。

ムハンマドくんの母親ウミさんは、時間との闘いだといいます。「私たちは非常に貧しく、さらにはこの戦闘の影響を受けていつも空腹です。数週間前の空爆で製粉機も壊され、燃料も底をつき、近隣地域からの食糧支援もありません。パンは子ども1人分もありません。もう5月になるのに、3月分の夫の年金も受け取っていないのです」と3人の子どもを育てるウミさんは訴えます。

生きることへのもがき

サナア郊外の村で、爆発した砲弾の破片を手にする男の子
© UNICEF/NYHQ2015-1296/Hamoud
サナア郊外の村で、爆発した砲弾の破片を手にする男の子

11歳のムハンマドくんは働くには若すぎるので、一家の生活はお母さんが作る自家製食品の売り上げに頼らざるを得ません。しかし、その頼みの綱ですら、不安定でいつ途切れるかわかりません。ミサイルや流れ弾がムハンマドくん一家を直撃しなかったとしても、医療サービスや衛生状態が悪化の一途を辿る生活環境では、下痢や栄養不良が脅威となって襲ってきます。

ムハンマドくんと2人の弟は、一家がかつて経験したことがないほどの生存の危機に直面していることに気づいています。

燃料がなくては何も稼動させることが出来ず、医療サービスや病院は閉鎖に追い込まれています。紛争が激化する前でも、急性栄養不良に苦しむ5歳未満の子どもは85万人に上っていました。3月後半に起きた紛争激化による医療制度の崩壊を考えると、現在、その状況はより深刻になっているに違いありません。

そんななか、明るい知らせが届きました。約7週間続いた戦闘の末、人道支援のための5日間の一時停戦が合意されたのです。その一時停戦は5月12日の午後から開始され、ユニセフは、病院や保健センター、被害を受けているコミュニティ、そして最も支援を必要としている子どもたちに、命を守るための救援物資を可能な限り届けることが出来ました。

ムハンマドくんのお母さんは「私も子どもたちも不安でなりません。一体いつまでこの生活に耐えられるか、誰にもわかりません。すべてを失った私たちに残っているのは、尊厳だけです」と悲しみに暮れながら語ります。

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