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公益財団法人日本ユニセフ協会
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バヌアツ
サイクロン被災から3カ月
笑顔を取り戻した3歳の女の子

【2015年6月11日 バヌアツ発】

学用品が詰まったユニセフバッグを嬉しそうに持つバヌアツの女の子たち
© UNICEF/UNI181868/Sokhin
学用品が詰まったユニセフバッグを嬉しそうに持つバヌアツの女の子たち。

今年3月にカテゴリー5の大型サイクロン・パムがバヌアツを直撃してから、3カ月が過ぎました。

サイクロン・パムによってバヌアツの22の島々で16万6,600人が被災し、そのうち8万2,000人が子どもであることが報告されています。ユニセフはサイクロン到来以前より、起こり得る災害の被害に備え、支援物資の備蓄などを行い、直撃直後には緊急支援を実施、現在もバヌアツ政府と共に、子どもたちやコミュニティの復興を支援しています。

緊急支援から復興支援へ

ユニセフはこの3カ月間で、4万6,000人に安全な飲み水を提供し、7万人近くに衛生物資を提供しました。約1万7,700人の幼稚園や学齢期にある子どもたちに学用品や教育物資を提供し、300人以上の幼い子どもたちに成長を手助けする微量栄養素パウダーを提供しました。また、子どもたちが健康的で栄養のある食事を口にできるようにするため、4,300人以上の幼い子どもをもつ若い母親を支援しました。そして、約4,100人分の汚損した出生登録書の再発行や出生登録書のなかった子どもたちへの新規発行を行っています。

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ひどく怯え、心を閉ざしていた3歳の女の子

バヌアツがサイクロンに見舞われた翌日に出会った3歳のレイチェルちゃん。
© UNICEF PACIFIC/2015/McGarry
バヌアツがサイクロンに見舞われた翌日に出会った3歳のレイチェルちゃん。

3月13日金曜日の夜遅く、大型サイクロン・パムがバヌアツを襲い、レイチェルちゃんの世界は一変しました。丘の頂上にあった給水タンクが破裂し、何千リットルもの水がコミュニティに流れ込みました。3歳の幼いレイチェルちゃんは、自宅が他の7軒の民家と共に押し流されていく様子を目の当たりにしました。

現地で緊急支援活動を実施していたユニセフのスタッフが初めてレイチェルちゃんと家族に会ったのは、被災翌日でした。レイチェルちゃんは心を閉ざし、ひどく怯えていました。コミュニケーションを取ろうとはせず、かつて自宅があった場所にむき出しとなったコンクリートの土台を、ホウキで必死に掃いていました。子どもながらにも、サイクロンが来る前の状態に戻したいという想いだったのかもしれません。

心に傷を負ったレイチェルちゃんが完全に回復するまでには、長い時間が必要だということは明らかでした。父親の姿が数秒でも見えなくなるとすぐ、ひどく動揺していました。1週間が経っても、レイチェルちゃんは依然として塞ぎこみ、話をすることも拒んでいました。

このような甚大な災害に見舞われた際、レイチェルちゃんのような反応は決して珍しいことではありません。ほとんどの子どもたちは、心の傷が癒えるまでには時間を必要とします。ユニセフのスタッフは、いつも、子どもたちの気持ちを最優先するようにしています。サイクロンから3カ月が経ち、レイチェルちゃんの傷はまだ癒えていないかもしれないとの不安を抱えながら、再びレイチェルちゃんのもとを訪れました。

再び見せた笑顔、復興に向かう決意

サイクロンから3カ月後、笑顔を見せるレイチェルちゃん。
© UNICEF PACIFIC/2015/McGarry
サイクロンから3カ月後、笑顔を見せるレイチェルちゃん。

そこには、これ以上望めないほどよい変化を遂げたレイチェルちゃんの姿がありました。これまでと全く別人のように元気になったレイチェルちゃんが、ユニセフのスタッフを出迎えてくれたのです。エネルギーに満ち溢れ、よく笑い、遊び、写真を撮られることも楽しんでいました。レイチェルちゃんは他の幼い子どもたちのように、始めは恥ずかしそうにしていましたが、すぐにみんなと打ち解けていました。幸せそうなレイチェルちゃんの笑顔を見て、不安を抱いていたスタッフは皆とても安心しました。

レイチェルちゃんが暮らすポートビラ郊外の小さなコミュニティは、力を合わせて復興に向かっています。レイチェルちゃんの父親やコミュニティの男性たちは、拾い集めた材料や木材、現地のNGO団体から寄せられた金属板を用い、自宅が流された7世帯全員が暮らすことのできる、基本的な仮設住居を作り上げていました。このコミュニティに再びかつてのような日常が戻るまで、長い時間が必要となることでしょう。しかし、一致団結して復興に向かうという強い決意が住民たちからは感じられます。

サイクロン・パムは、バヌアツの人口の半数以上の人々の自宅や生活、生活手段に影響を与え、8万2,000人の子どもたちが影響を受けています。計り知れないほどのストレスや崩壊を前にしても、ほとんどの子どもたちが、信じられないほどの強さとレジリエンス(回復力)をみせています。レイチェルちゃんが暮らすコミュニティは依然として復興の道半ばにあります。しかしレイチェルちゃんの笑顔が、物事がいい方向に進んでいることを表しています。

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ユニセフはバヌアツ政府と協力し、この地で何年も活動を続けています。そして復興だけでなく、世界でも自然災害の影響を最も受けやすい国のひとつであるバヌアツが、将来起こり得る課題や災害への備えができるよう、支援しています。

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