スマトラ沖地震・津波情報
親とはぐれた子を捜し出せ! ユニセフ、親子の再会支援プログラムを展開 (第8報)
【ニューヨーク発、2004年12月31日】
ユニセフは、今回の津波被害を受けた全ての地域で、親や家族、保護者を失ったり離れ離れになった子どもが数多く存在し、衣食住などの基本的な支援やケアが行き届いていないことに重大な関心を持っていると発表しました。
「それまで慣れ親しんできた世界全てを巨大な津波に流され、その津波が後に残していった多くの遺体を目にしてしまった子ども達が、今、どれ程恐れ、戸惑い、自暴自棄になっているか。想像を絶します」ユニセフ事務局長 キャロル・ベラミーは訴えます。「子ども達は、それまで慣れ親しんできた、親兄弟、友達、家、学校、近所の風景まで一切合財を失ってしまったのです。彼らには一刻も早く適切なケアとサポートが必要です」
ユニセフは、今回の津波による死亡者の3分の1以上が子どもと推定しています。しかし、津波の難は逃れたものの、家族と離れ離れになってしまった子どもの正確な数は判っていません。しかしながら、今や10万を超えてしまった死者数を勘案すると、こういった子どもが、被災地一帯に数千人の規模で存在することが考えられます。
スリランカでは、ユニセフは政府やコミュニティ組織とともに、実態調査を開始しました。現時点で数的な結果は出ていませんが、首都コロンボで調査にあたっているユニセフのスタッフの報告では、木曜日(現地時間30日)までに、一人ぼっちになっている子どもよりも多くの「子どもを捜している親」が発見されています。
一方、親が津波にさらわれてしまった様子の一部始終を見てしまった子どもの数も少なくありません。インドの海外沿いの村の13歳の女の子、タマラシちゃんは、ココナツの木の下で魚を売っていた両親が大波にさらわれてしまったのを家の台所から見てしまいました。人道支援関係者が彼女を海岸から連れてくるのに、水が引いてから3日も掛かってしまったようです。彼女自身も波にさらわれましたが、ココナッツの木に引っかかった為に難を逃れました。しかしショックは大きく、なぜ両親と一緒に自分も流されてしまわなかったのかと、ただただ泣くばかりです。
被災した全ての地域で、ユニセフはNGOや地元政府機関と協力して、一人ぼっちになってしまった子どもを発見し、両親や親戚等に引き合わせるための仕組み作りを始めています。多くの被災国では、拡大家族があたりまえの家族形態であるところが多いので、こういった子どもが発見された場合は、まず彼らを祖父母や親類縁者、近隣の顔見知りの人々の元へ届けるようにします。ベラミー事務局長によれば、これは全く新しいやり方ではなく、今回の地震前から既に行われていることなのです。
子どもたちは、施設よりも家族に帰属すべきです。以前から、近親者と離れ離れになった子ども達は、子ども達が住んできたコミュニティーの人々に面倒をみてもらっているという報告もあります。
ベラミー事務局長は、今回の津波で親・家族を失った孤児に対し、世界中で養子縁組を申し出る方々に対し敬意を表しています。しかし、同時に、緊急事態状態にある時期に養子縁組を急ぐことは、必ずしも子ども達にとって最も適切な結果を生まないと警告しています。
「両親を見つけることが出来ない子ども達が、必ずしもそのほかの家族を誰一人として見つけることが出来ないとは限りません」とベラミー事務局長は訴えます。「子どもや幼い親戚を捜しているお父さん、お母さん、おばさん、おじさん、そして従兄弟が居ます。養子縁組を考える前に、まずそれらの家族と子ども達を引き合わせるためにあらゆる努力を払わなければいけません。孤児になってしまった子ども達にとって、拡大家族や近隣の人々に受け入れてもらうのが最善の選択なのです」
ユニセフは、現在、被災した全ての国で救援活動を展開し、現地政府による実態調査を支援しています。また、子ども達特有のニーズへの対応も始めています。浄水剤や衣服、毛布、医薬品などの救援物資を届けるだけではなく、過去24時間の間に(現地時間30日から31日に掛け)、ユニセフは次の支援活動を展開しました。
- インドネシア最大の被災地、アチェと北スマトラで、政府や宗教団体と共同して、避難民キャンプに30箇所のコミュニティ活動センターを設置。
- タイでは、トラウマの被害を受けている子ども達に心理ケアを提供するため、小児科医と看護婦の10チームを派遣。このチームは、既に被災各地で特別なケアを必要とする子ども達を発見している、子どもの権利に関する特別な訓練を受けたユニセフのボランティアの活動に合流します。
- インドでは、避難民キャンプ内での衛生環境の確保のために全力で支援を展開した他、避難した人々が、ユニセフが提供した浄水剤や経口補水塩を適切に使用できるよう、知識普及活動を展開。
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