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ミャンマー サイクロン被害第10報
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© UNICEF/2008 |
子どもに優しい空間に集まる親子 |
ユニセフをはじめとする国際人道支援団体は、サイクロンの被害が、最も立場の弱い子どもたちに新たな脅威が忍び寄っていると警鐘を鳴らしています。
サイクロン被害の初期の段階から、最も深刻な被害を受けているのは子どもたち。尊い命を落とした人々の3分の1ほどが子どもたちだったと見られています。同様に生き残った人々の3分の1も子どもたちと見られ、その多くが親や保護者を失い、混雑する避難所の中で見知らぬ人々に囲まれた生活を強いられています。
ミャンマーの子どもたちの間には栄養不良が蔓延しています。感染症などへの抵抗力も低下しています。雨が続く被災地でずぶ濡れになっている子どもたち。食べものや安全な飲料水などが不足し、支援物資の到着は遅れています。多くの専門家がその発生は時間の問題と言う、水を媒介にする感染症によって、今後、多くの子どもたちが命を落とす可能性が高まっているのです。
また(親や保護者を失った子どもたちには)、時間の経過とともに、性的虐待や軍隊に動員される危険性も増しています。ミャンマーは、子どもの兵士の動員率が最も高い国のひとつ。子どもたちは、時に売買の対象とされたり、誘拐されたり、脅されたりして軍隊に動員されてしまうのです。
昨年10月に国際的人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が発表した報告書によると、ミャンマーでは、ブローカーらが日常的に駅や市場、男の子たちが多く集まる公の場所を巡り、子どもたちに軍隊への参加を促していると報告しており、同団体は、今回の災害で発生した混乱状況は、こうしたブローカーにとって格好の状況だと訴えます。
「すでに、ブローカー2名が、避難所の子どもたちを兵隊へ動員しようとしているところを逮捕されたという情報が、現地の援助関係者の元に入ってきています。」ユニセフ・ミャンマー事務所の子どもの保護事業担当官、アン クレア・デュファイは話しました。
2週間後には新学期が始まってしまいます。しかし、被災地の学校の85%が倒壊し、多くの教員の行方もわかっていません。こうした学校の状況が、今後中長期に渡ってミャンマーが背負う困難を物語っています。ユニセフは、建設が必要な小学校は2700校に上ると推定しています。
© UNICEF/2008 |
子どもに優しい空間で遊ぶ子どもたち |
避難所では、多くの子どもたちが、一人で生活しなければならない状況に置かれています。サイクロンが発生した時、ヤンゴンにいたジョージ・メイソン大学教授フレッド・ベマク氏は、次のように話しました。
「学校が消えてしまいました。家も消えてしまいました。両親と生き別れたり、両親が亡くなってしまった子どもたちも少なくありません。多くの子どもたちが、家族やコミュニティを失い、当てもなくさまよっています。今、こうした子どもたちを守られなければなりません」。
自分の苗字や、生まれ育った村の名前も知らない子どもたちがいます。そうした子どもたちを家族に引き合わせる制度なども、ミャンマーには存在しません(ユニセフは、ラジオを使った「再会プログラム」をスタートさせています)。「支援が圧倒的に足らない状況の中、保護者のいない子どもたちは(最も弱い立場に置かれながら)、そうした支援を最も受け取りにくい立場におかれているのです。」ユニセフの子どもの保護専門家、アレックス・クリューゲルは話します。
ユニセフは、こうした子どもたちを守るために、国際NGOなどと協力し、子どもたちが安全に過ごせる「子どもに優しい空間」の設置を急いでいます。ヤンゴンには、既に37箇所が設置されました。
先週金曜日(17日)、ユニセフは、被災者のおよそ40%(約100万人)が子どもたちで、支援は一刻の猶予も許さない状況だと伝えました。