財団法人日本ユニセフ協会



レバノンとイスラエルの若者、国境を越えて紛争後を語る

 【2006年10月30日 ニューヨーク発】

© UNICEF/HQ06-1514/Debbas
ユニセフが支援して、紛争で被害を受けた子ども達のために開いたお祭りで、人形劇をする青少年ボランティアの二人。レバノン北東部 ベカ峡地域の街 バールバックにて。

8月に停戦をむかえたイスラエルとヒズボラの紛争の最中、レバノンとイスラエル、双方の国に住む若者たちは、国土が攻撃され、そこに住む人々が家を失ったり、命を落としていく光景に、胸を痛めていました。

戦争が終わった今、年齢に拘わらず、すべての人が何が起こったのかを把握し、復興に向けて立ち上がろうとしています。

イスラエルに住む16歳のシアとレバノンに住む17歳のクリスティンの二人は、紛争中に敵として戦っていた国に住む同世代の若者と話してみたいと思っていました。最近、ユニセフラジオは二人が電話をする機会を設け、その会話が録音されました。シアとクリスティンは、それまで一度も話をしたことがありませんでした。

真実を語る

シアはクリスティンに、紛争が激しさを増してシアの住むハイファの町も爆撃にあい、毎日のように防空壕に避難するようになるうちに、感覚が麻痺していくのがわかった、と話しました。「爆撃が気にならないということではありません」と、シアは言います。「ですが、爆撃音が聞こえて避難しなければいけなくなると、考えるより先に体が動くのです。爆撃のせいで、家が壊れるとか、夢がかなわなくなってしまうとか、そういうことは考えませんでした」

© UNICEF Lebanon/2006/Debbas
ユニセフが支援したお祭りに参加する男の子。レバノン北東部 ベカ峡地域にて

しかし、突然戦争がおわってみると、「爆撃によって人がたくさん死んだことに気づいたのです」と、シアは話します。

クリスティンは、紛争中にイスラエルで何が起こっていたのか、詳しくは知りませんでした。なぜなら、新聞やテレビの報道では、イスラエル側の状況を知ることができなかったからです。 「私たちは事実を知りたいんです」 クリスティンは言います。「レバノン、イスラエル、アメリカや他国のメディアにはわからないことだらけです。なぜなら、これらのメディアそれぞれの報道している内容がいつも同じだとは限らないからです」 クリスティンは、イスラエルで実際に紛争を体験したシアの話を聞けてよかったと話しました。

クリスティンは、ある意味では紛争自体よりも、紛争が終わってからのほうがつらいと話します。レバノンは今回の戦闘が突然始まるまでの15年間、過去の紛争からの復興を進めていました。

「戦闘がレバノンにもたらした被害はすごく大きいと思います。」とクリスティンは言います。「勉強のことを気にかける10代の若者としては、大学の授業の再開が遅れてしまうのが、今一番の心配事です。今回の紛争で受けた被害からの復興にどれだけの時間がかかるのか、まったく想像できません」

対話を始めよう

シアはクリスティンに、祖父母についてのレポートを書いたことで、レバノンや他の中東諸国についての興味が湧いたと、話しました。シアの祖母はシリヤとイラクの国境に生まれました。彼女は祖母の生まれた地どころか、中東地域の多くの国へ旅行することは簡単なことではないと気づきました。

「狭い場所に囚われているような感じです。ちょっと息苦しいのです」シアは言います。「みんな中東地域はひとつだと言うけれど、それは違います。本当はばらばらなのです。どこにも居場所が見つからないような、そんな気持ちがします。クリスティン、あなたは私が生まれて初めて言葉を交わしたレバノン人です。だから、とても緊張していたんです」

シアとの対話により、クリスティンは今回の紛争を違った視点からみることができました。「シアとの対話がレバノンとイスラエル、両国の対話のきっかけになるはずです」とクリスティンは語ります。