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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第4報
200万人を超える国内避難民-急がれる緊急支援

【2009年5月20日 パキスタン発】

© UNICEF/NYHQ2009-0523/Ramoneda

パキスタンの首都スラマバードにある避難キャンプで、火のそばで体を温める子どもたち。

4月末から続くパキスタン北西部での最近の武力衝突によって、新たに150万人以上の人々が住む場所を追われました。現地では、今回の武力衝突が起こる以前、昨年10月から既に55万5,000人が避難生活を強いられており、いまだ家に戻ることができていない状況です。

1947年のパキスタン独立以降、最も多くの国内避難民が生み出されています。毎日、数百人の人々が、スワート、下ディール、ブネルから、ジャララ・キャンプをはじめ、暑く、埃が舞う避難キャンプにたどり着いています。こうした全ての避難民に人道支援が緊急に求められています。半数以上は子どもたちです。ジャララにキャンプが設置されてから3週間もたっていませんが、既に、1万1,000人以上の人々が避難生活を送っています。

激しさを増す武力衝突

© UNICEF/NYHQ2009-0520/Ramoneda

パキスタン北西国境州にあるスワビ・キャンプで、家族のために食糧を運ぶ男の子。

3人の子どもを持つ父親、アハマド・ヒラルさん(28歳)は、特に厳しい状況に置かれている一人。家族の中でたった一人の男性で、日雇いの仕事をしているヒラルさんは、自分の子どもたちだけでなく10人の甥や姪、祖母たちの面倒も見なければなりません。

武力衝突が激しさを増す中、ヒラルさんはジャララのキャンプに避難してきました。

「迫撃砲が私たちの家の目の前に落ちてきました。命からがら家を捨てて逃げてきました」と、ヒラルさん。「この避難キャンプに、親戚は一人もいませんし、住めるような家もありません。私たちが何の罪を犯したというのでしょうか?子どもたちが何か悪いことをしたのでしょうか?」

ヒラルさんはさらに続けます。「この状況を作り出した全ての人々に、アラーの名の下に、私たちを許し、故郷に帰ることを許してくれるようお願いします。」

安心感と喪失感

ユニセフ・パキスタン事務所のアントニア・パラデラ広報官は、避難を余儀なくされた人々は対立する二つの感情に直面していると指摘しました。

「キャンプにたどり着いた人々も、はじめのうちは、安全な場所にいるという大きな安心感を得ています。」パラデラ広報官は話します。「でも同時に、親たちの間には、大きな喪失感もあるのです。人々は家を失い、全てを捨てて避難してきました。着のみ着のままで何とか逃げてきたのです。今後どうなるのかも全く判りません。」

この緊急事態の中、ユニセフは他の国連機関などと共に、飲料水や衛生施設の確保、予防接種活動、教育活動の再開のほか、こうした環境の中で往々にして発生する様々な虐待や搾取から子どもたちを保護する活動も実施しています。

日常を取り戻してくれる教育

© UNICEF/NYHQ2009-0524/Ramoneda

パキスタン北西国境州マルダンにあるジャララ避難キャンプのユニセフが支援している学校で授業を受ける女の子たち。

過去1ヵ月で、スワートの180校以上の学校が破壊されました。避難を余儀なくされている子どもたちへの教育を再開するため、ユニセフは、キャンプ内に臨時の小学校を設置し、数千人の児童・生徒たちに学校用品を提供しています。

「ユニセフにとって、学年齢期の子どもたちが日常生活を少しでも取り戻すように支援することは非常に大切なことです。そして、教育を続け、学期を失わないようにすることも大切なことです。」(パラデラ広報官)

また、新たに設置されている避難キャンプには、「子どもに優しい空間」も設けられ、子どもたちが安心して遊べる環境を整えているだけでなく、必要に応じて社会心理的なケアも受けられるよう支援しています。ユニセフの子どもの保護担当チームは、家族と離れ離れになった子どもたちや孤児たち、そして女性が一家を支えているような世帯が、援助物資やサービスを確実に受けることができるよう活動しています。

ユニセフは、急速に増加している避難民のニーズに応えるため、約4,140万米ドル(約39億円)の支援を国際社会に訴えています。