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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第8報
続く武力衝突 求められる緊急支援

【2009年7月3日 ジュネーブ発】

© UNICEF/NYHQ2009-0507/Paradela
北西辺境州のジャララ避難キャンプで難民の登録を受けるために並ぶ女性と男の子。

パキスタンで続く武力衝突。北西部では、数千人もの子どもたちが避難生活を強いられ、あるいは避難できずに武力衝突の続く地域に留まっています。ユニセフは、こうした子どもたちの状況を深く懸念しています。

今回の武力衝突により、避難を余儀なくされている200万人のうち、50%近くが子どもたちです。これらの子どもたちの多くが教育、保健、栄養、水と衛生、子ども保護などの緊急支援を必要としています。さらに、夏の間の急激な気温の上昇と合わせて、現地の状況は深刻化しています。

パキスタン北西部では、9月から新学期が始まりますが、3700校の学校校舎ではいまだ約150,000人が避難生活を送っており、現在の状況が続いて、避難してきた人々の住む場所が確保されず学校の修復作業が行われなければ、こうしたおよそ700,000人の子どもたちの教育に支障をきたすことが予測されます。一旦教育の機会が失われると、一生学校に通わなくなってしまう子どもたちもいることから、ユニセフはこの状況を、特に懸念しています。

一連の武力衝突による今回の危機は、パキスタン政府、避難民を受け入れている現地コミュニティと、ユニセフを含めた支援活動を行っている人道支援団体の対応できる範囲を上回るものです。スワートとブネルでの衝突は収まってきていると報告されていますが、いまだ多くの人々が北西辺境州に逃れてきています。また、南ワジリスタンでの軍の活動の影響を受けて、人々が新たに南部に移動しています。

ユニセフのルイス・ジョージ・アーセナル緊急支援プログラム部長は、今回の支援活動について、多くの人々が避難キャンプに逃れている従来の人道危機とは異なり、パキスタンでは避難民の多くが避難民キャンプの外にある現地コミュニティの一般家庭に身を寄せていることから、今までの人道危機に対する緊急支援と比べ基本的なサービスを提供することがより難しいことを語りました。

© UNICEF/NYHQ2009-0514/Ramoneda
スワビ避難キャンプで食糧配給を待つ女の子。

キャンプでは徐々に緊急支援が届けられていますが、現地コミュニティの一般家庭に身を寄せているはるかに多い数の避難民はいまだ困難な状況に置かれています。また、数千の学校校舎は避難民センターとして利用されています。さらに、北部辺境州には内戦の影響を受けた人々の流入を受け入れるための臨時の避難民キャンプが次々に設置されています。しかし、子どもを含めた多くの人々が、安全な飲み水やトイレなどの適切な衛生施設のない込み合った環境で生活しているため、不衛生な水を介した感染症の発生を防ぐため石鹸などの衛生キットを配布したり、衛生に関する知識を普及したりすることが難しい状況にあります。また、避難民が身を寄せている一般家庭も2007年に始まった食糧価格の高騰を受けて、備蓄があまりなく、日々の生活に困窮しています。

ユニセフは、パキスタン政府、他のパートナーである支援団体と綿密な連絡をとりながら、避難している子どもと母親を含めた女性に必要とされているサービスや情報を提供する活動を継続しています。

感染症の発生を予防するため、現在までに200,000人以上の子どもを対象としたはしか予防接種の実施、避難民キャンプや周辺コミュニティに住む230,000人を対象とした安全な飲み水の供給、衛生教育の支援を行いました。また、47,400人の子どもと20,400人の母親が栄養不良を防ぐ保健検査を受け、軽度栄養不良と診断された11,000人がコミュニティでのケアを受けています。今までのところ、栄養不良である人の報告例は少ないですが、人々は非常に脆弱な環境に置かれていることから、状況の悪化を防ぐための継続的な支援が必要とされています。

スワートとブネルでの武力衝突により発生した避難民への支援に対応するため、5月にパキスタン人道支援緊急ニーズ全体の見直しが行われ、1700万人の国内避難民を6ヵ月に渡り支援するのに5億4300万ドルが必要とされました。しかし、まだ3分の1以下の資金しか調達されていません。ユニセフはこのうち5200万米ドルを要請し、2250万米ドルが支援者からのご支援および緊急用の準備資金から拠出され、残りの930万米ドルも出資が約束されています。

「十分な資金なしでは、人道危機により避難している数千人もの子どもとその家族が最もサービスや支援を必要としているときに、支援を提供することができません。また、避難民への支援と同じく、避難民を受け入れている現地コミュニティの一般家庭も、日々の生活に余裕のない中で、あたらしく流入してきた人口を受け入れていることから、これらの地域へのサポートも非常に大切です。」(ユニセフ緊急支援プログラム部長ルイス・ジョージ・アーセナル)