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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第15報
これまでのユニセフの活動による成果

【2009年10月2日発】

国内避難民の状況
© UNICEF/NYHQ2009-1258/Marta Ramoneda Pakistan, 2009
北西辺境州ブネルのスルタンワス村の破壊された建物の瓦礫の前でたたずむ子ども。2009年7月中旬までに、20,000人以上が政府と武力勢力の武力衝突によりブネルとスワート地区から避難した。

 パキスタン当局からの情報によると、避難民キャンプ内外にある現地コミュニティの一般民間家庭に身を寄せている人々を含め、383,190世帯(およそ270万人)が国内避難民として認められ、その内の146,505世帯(およそ102万人)が現在も避難生活を送っています。
 また、ワジリスタンでの軍の活動の影響を受けて、北西辺境州の南に向けて新たに人びとが避難しています。デラ・イスマイル・カーンの9,706世帯、タンクの2,923世帯、コハットの1,578世帯を確認し、その数は14,207世帯に達しています。
 政府による帰還の支援は継続して実施されています。帰還が開始された7月13日から現在までに、138,728世帯がすでにスワート、ブネル、ローアー・ディール、シャングラに帰還しました。また、7月13日以前にも97,448世帯が自主的に帰還しており、これまでに236,685世帯(およそ165万人)がもともと住んでいた地域に帰還したと報告されています。

これまでのユニセフの支援
ユニセフによる支援の内容 現在までに支援を受けた人数
安全で衛生的な水の供給 636,750人
衛生キットの配布
(水と衛生に関する情報を含む)
670,139人
トイレ・手洗い場の設置 新たに10,876基を設置
母乳育児(乳幼児の栄養)の知識普及 妊産婦29,570人
栄養診断 子ども121,573人、母親45,322人
栄養補助食品や訪問診療による、重度/中度の急性栄養不良の子どもの治療 重度の急性栄養失調の子ども5,200人、
中度の急性栄養失調の子ども17,467人
総合的な医療サービスの供給 107,984人
総合的な医療サービスの供給 107,984人
小学校への就学支援 27,974人が小学校に登録
現在、利用が可能な学習スペースの数 138校
(避難民キャンプ内59箇所と、キャンプ外の79箇所を支援)
保健・衛生教育の研修 103の研修を子ども4,200人が受ける
「子どもに優しい空間」の設置 避難民キャンプ内、36箇所
「子ども保護センター」の設置 避難民キャンプ外、40箇所
上記2つの施設により恩恵を受けている子どもの数 14,932人
心理社会的サービスを受けた子どもと母親 子ども13,700人、母親3,718人
医療施設・教育施設やその他の社会的なサービス機関への照会 子ども21,129人
「水と衛生」分野の支援

 現在までに、ユニセフは避難民キャンプ内で避難生活を余儀なくされている避難民251,000人、避難民を受け入れている現地コミュニティを含む220,000人、デラ・イスマイル・カーンとタンクの42,750人、すでに帰還した人々124,000人の、合計636,750人に安全で清潔な水を供給しました。ユニセフは、このような緊急下でも衛生環境を守り、感染症の拡大を防ぐために衛生施設の設置や、衛生知識の普及などの活動を実施しています。これまでに、217,520人(女性113,110人と男性104,410人)が新たに設置されたトイレ10,876基の恩恵を受け、251,000人が帰還先の地域での衛生施設の復旧による恩恵を受けました。また、シャルサーダ, ペシャワール、マルダン、ナウシェラの小学校2,000校では、清掃活動と衛生施設の普及作業が完了し、480,000人の子どもたちが恩恵を受けました。
 衛生知識の普及を目的として、避難民キャンプ内の330,158人(47,165世帯)とキャンプ外の一般家庭に身を寄せている避難民153,018人、デラ・イスマイル・カーンとタンクの80,260人、帰還民106,703人に、衛生習慣を伝えるメッセージと石鹸、洗剤、歯ブラシ、歯磨き粉、タオル、バケツ、そして病気を予防するために必要なものの入った、衛生用品キットが配布されました。状況が悪化しているワジリスタンでも、また、避難民を受け入れている現地コミュニティ、デラ・イスマイル・カーンの2,375家庭とタンクの1,488家庭にも衛生用品キット、毛布、貯水タンクなどの支援物資が配布されました。
 さらに、帰還先での支援として、ユニセフは多くの急性水溶性下痢が発生したスワートで浄水剤120,000錠、簡易浄水パック40,000個、25kgの水を貯蔵することが出来る大型バケツ3個を水の塩素消毒処理のために提供しました。

「栄養」分野の支援

 避難生活のために急性栄養不良になる子ども達の命を守るため、ユニセフは子どもと、妊産婦・授乳中の女性を対象に栄養状態の診断を行っています。今回の支援では、今までに、子ども121,573人と、妊婦と授乳中の女性45,322人が栄養状態を判断するための上腕部測定による診断を受けました。中度の急性栄養不良と診断された子ども17,467人と妊産婦と授乳中の女性6,931人は、プランピー・ナッツ(重度の栄養不良の子どもたち向けの栄養補助食品)やユニミックス(中度の栄養不良の子どもたち向けのビタミンやミネラルを強化した粥状の食べ物)などの栄養補助食品による治療を受けました。また、子どもが重度の急性栄養不良に陥ることがないよう、訪問診療を行っています。今までに、5,200人の子どもが重度の栄養不良と診断され、これらの子どもたちには適切な治療が提供されました。
 さらに、乳幼児の栄養と免疫の強化のためには緊急事態においても母乳育児が大切であることを伝えるため、妊産婦29,570人を対象に母乳育児、適切な補助食と衛生改善の大切さについての学習会が開かれました。

「保健」分野の支援
© UNICEF/NYHQ2009-1271/Marta Ramoneda Pakistan, 2009
帰還先のスワート地区アマン・コト村にある小学校で再開された第一回目の授業に出席する子どもたち。今回の武力衝突で、400校以上が全壊、または半壊した。

 910人の患者が、ユニセフの支援により活動しているキャンプ内と洪水の被害を受けた地域で活動する移動式チームの移動式医療センターの2箇所で治療を受けました。また、妊婦256人が産前産後ケアを受け、助産師16人も支援を受けました。ユニセフの支援している医療施設では、今までに107,984人が治療を受けています。
 現在までに、ユニセフの支援する避難民キャンプ内の拡大予防接種センターで、2歳以下の子ども4,671人がBCGワクチン、18,609人がポリオワクチン、15,839人が五種混合ワクチン、5,949人がはしかワクチン、そして、妊婦10,795人と助産師4,701人が破傷風ワクチンの予防接種を受けました。9月に実施されたポリオ予防接種では、34地区で204,000人の子どもがポリオの予防接種を受けました。12日から14日にかけて実施されたパキスタン全国一斉のポリオ予防接種デーでは、地区の保健事務局と軍関係者と詳細を話し合い、この結果、軍によりチェック・ポイントでの車両検問の際に子ども達がポリオ予防接種を受けることができるように予防接種チーム配置が許可されたため、武力衝突の影響を受けていたスワートを含む、全地域で実施することができました。
 さらに、2009年10月1日には、9ヶ月〜3歳の子ども414,377人を対象にしたはしか予防接種キャンペーンもスワートの43地区で開始され、残りの22地区でも軍との間で特別な措置が講じられ、子どもたちにはしか予防接種とポリオ予防接種を届ける際のアクセスと身の安全が保障されました。予防接種月間は、子どもたちを8つの予防可能な感染症から守るために、武力紛争の影響を受けた地域を含む北西辺境州全域で実施されています。

「教育」分野の支援

 現在、13箇所にある避難民キャンプ内の23の小学校では、3,358人の男子、2,587人の女子、計5,945人が初等教育の授業を受けています。キャンプ外で避難民を受け入れている現地コミュニティの7つの小学校にも、避難を余儀なくされた男子1,228人、女子87人の計1,315人が通い、これらの学校はユニセフの支援を受けています。
 また、北西辺境州南部のワジリスタンからの避難している子どもたちの支援のため、生徒の学用品の入ったスクールバッグ12,000個が届けられました。さらに、ユニセフからの支援により、国内避難民が去った後の公立小学校1,385校(公立男子小学校764校、公立女子小学校621校)における復旧作業が完了し、さらに928校の復旧作業が行われています。
 現時点で、避難民キャンプでは男子4,657人と女子3,693人の合計8,350人が初等教育を、男子1,880人と女子517人の合計2,397人が中等教育を受けています。

「子ども保護」分野の支援

 スワート地区への帰還のために移動している人々の中でも、子どもと女性は特に弱い立場に置かれています。これらの子どもと女性の安全と権利が守られるようにユニセフは調査・報告・アドボカシー活動が行っています。今までに深刻な子どもの権利の侵害に関して125のケースが報告され、被害に遭った子どもたちは適切な支援機関に照会されました。ユニセフでは緊急状況でも子ども保護を優先するための体制作りに力を入れており、現在、避難民キャンプ10箇所と避難民を受け入れているマルダン、スワビ地区では、76つの子ども保護委員会が活動しています。

 また、子ども保護のための監視団と子ども保護委員会のメンバーは、避難中に家族と離れ離れになった子ども822人の内、245人が親類によって「保護的」な環境に置かれ、基本的な社会サービスを受けることができる状況に保護されました。29人の離れ離れ、または孤児となった子どもたちは帰還の間、親戚に付き添われて帰還できるように保護観察されました。また、避難民キャンプにおいて、行方不明になっていた6人の子どもたちが確認され、家族との再会を果たしました。

© UNICEF/NYHQ2009-1281/Marta Ramoneda Pakistan, 2009
北西辺境州のミンゴラ市で学校からテントに向かって歩く生徒。1,300人の生徒が通っていた学校は武力衝突の影響を受け、崩壊している。

 現在までに、親と離れ離れになった、障害、孤児、女性の片親だけ等の理由で弱い立場に置かれている4,553世帯と10,391人の子ども達に、特別に生活支援物資とサービスが提供されました。また、児童労働を余儀なくされていた子ども631人を含む6,817人が避難民キャンプの学校に通い始めました。さらに、4,020人の治療を必要としている子どもたちが、適切な医療サービス機関に紹介され、12,000足の靴が避難民キャンプの子どもたちに配布されました。

 避難民キャンプ10箇所と避難民を受け入れているマルダン、スワビ地区にある36箇所の子どもに優しい学習空間と、40箇所の子ども保護センターでは、現在959人の女性と14,932人の子どもがそれぞれに適した学習活動、創作活動やレクリエーション活動を行っています。避難した子どもや女性には、不安やストレスなどの症状を訴える場合もあり、そのような人々に個人やグループカウンセリングを通じた心理学者による心理社会的なサポートを行っています。
 また、地雷や、そのほかの不正な武器の使用に反対するアドボカシー活動も引き続き実施されています。