財団法人日本ユニセフ協会



マダガスカル:「気候変動と子どもたち」
〜 日常的な問題になりつつある子どもの栄養不良問題 〜

【2009年7月27日 マダガスカル発】

© UNICEF video
マダガスカル南部の深刻な干ばつの影響を受けた地域で、作物を運ぶ子ども。この地域の子どもたちは栄養不良に苦しめられている。

世界中で環境問題への関心が高まる中、気候変動の影響は、アフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ島国のマダガスカルにも及んでいます。

マダガスカルの南部の地域は、以前から常に乾燥し埃が舞う所ですが、半年に一度訪れる雨期の恩恵で、農家の人々は作物を育て収穫を得ることができていました。たいていの人々は、サツマイモやトウモロコシを年に2度収穫することができました。この収穫は、作物が取れなくなる時期にも人々の胃袋を十分満たす量でした。

しかし、この2年、この地域は雨期でさえも雨に恵まれず、広大な河川はカラカラに干上がり、作物は壊滅的な被害を受けてしまいました。この地域に住む人々、特に子どもたちは、飢えに苦しみ始めています。


「雨が全く降らなかったので・・・」

農業を営むリアティナヒエさんは、10人の子どもを持つ母親です。リアティナヒエさんの家では、今年の初め以降収穫が無く、食糧の蓄えも底を付き始めています。家族みんながお腹をすかせていますが、一番下の娘が最も深刻な状態だと語ります。

「種を撒いて、サツマイモも植えました。でも、雨が全く降らなかったので、全部駄目になってしまいました。娘はどんどん細くなっていくのに、食べさせてやるものが何もありませんでした。娘が本当にやせ細ってしまってから、保健センターに連れていきました。」(リアティナヒエさん)

マダガスカル南部の干ばつの影響を受けた3つの地域。ここに暮らすほとんどすべての農家の人々は、今年になってから作物を収穫できていません。過去20年間で、マダガスカルの平均年間降水量は111 mlから27.5 mlに低下しました。

干ばつは、かつて約10年に一度起きる程度の、例外的なものでした。しかし現在、干ばつは定期的にやってきます。干ばつの影響を受けた地域では、何千人もの子どもたちが栄養不良に苦しめられています。

事態を緩和するために
© UNICEF video
マダガスカル南部の保健センターで。腕の太さを測られ、栄養不良の状態を調べられている子ども。

チアナソン・ソンバソン・マンダナイナ看護師は、チホンベ近くにある農村部保健センターで働いています。マンダナイナ看護師が、この数ヵ月で治療した栄養不良の子どもたちは、数百人にも上ります。

「この地域の5歳未満の子どもの約80パーセントは、栄養不良状態です。70パーセントの子どもたちは重度、残りの10パーセントは中度の栄養不良に苦しんでいます。」マンダナイナ看護師はこのように話しました。

ユニセフは、世界食糧計画、マダガスカル保健省と協力して、この事態を緩和するべく活動しています。これまでに、事態の悪化を早期に発見し対応するために構築された体制や、一軒一軒家を回って支援活動を行うボランティアの人々の活躍によって、干ばつの影響を受けた地域の栄養不良の子どもたちのうち、推定80パーセントに支援を届けました。

栄養不良の疑いがある子どもたちは、保健センターで体重と身長などを測定します。子どもたちひとり一人が検査を受け、必要であればすぐに口にすることができる栄養補助食品が与えられています。

長期にわたる影響

治療開始から6ヵ月、リアティナヒエさんの娘は丸々と太り、活発に動くようになりました。リアティナヒエさんの娘さんの状態はとても良いように見えますが、完全に回復するまでにはあと一ヵ月半かかる見込みです。

一方、長期にわたる後遺症に苦しむ子どももいます。

「栄養不良は、長期にわたって子どもたちを苦しめます。例えば、栄養不良の就学前児童に、そうした影響が見られます。こうした子どもたちはいつも疲れていて、就学年齢になっても、学業についていくことが難しいのです。」(マンダナイナ看護師)

栄養不良の子どもたちを回復させるため、すなわち、こうした子どもたちに配布される調理無しですぐに食べられる栄養補助食品が、他の栄養状態の良い兄妹たちに食べられないようにするため、栄養不良の子どもたちの家族には、米やひよこ豆、パーム油も一緒に提供されています。

最近、わずかな量ながら、この地にも雨が降り、農家の人々を多少ながらホッとさせました。しかし、彼らの貧窮した状態は、次の雨季がやってくる半年先まで続くことになるでしょう。それも、次の雨季がちゃんとやってくれば、の話でしかありませんが・・・。

気候変動によって、マダガスカルの「干ばつ」や「栄養不良」問題は、一時的なことではなく、日常的な危機になりつつあるのです。