財団法人日本ユニセフ協会



深刻な食糧不足と栄養不良に苦しむ「アフリカの角」に迫る新たな危機

【2009年10月16日発】

灼熱の太陽の下、エクワム・ジョセフさん(20歳)と弟のエカイ・フランシスちゃん(11歳)は、草一片も生えていない「牧草地」で牛を放牧しています。

「雌牛と雄牛あわせて161頭いました。そのうち、155頭が死にました。」エクワムさんはこう話します。「たった6頭だけ生き残りましたが、何をしたらいいのか分かりません。殺してしまった方がいいのか、それともどこかへ移動したほうがいいのか・・・。」


干ばつの影響
© UNICEF/NYHQ2009-0644/Kamber
ソマリア・ガルグドゥード中部のアダド町郊外の、らくだが集まる水たまりに向かって歩く遊牧民の男の子。

この地域では、4回の「雨期」に全く雨が降りませんでした。干ばつ、飢え、病気に苦しんでいるのは、ケニアだけではなく、「アフリカの角」と呼ばれる地域一体に及んでいます。ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、ウガンダの一部にかけて、現在約2,400万人の人々が人道支援を求めています。今年の初めには、既に2,000万人の人々が困難な状況にありました。こうした人々のうち、500万人近くは5歳未満の子どもたちです。

「このような危機的な状況では、人数や数値では、最も弱い立場の子どもやその家族に及んでいるこの危機の実際の影響を測ることはできません。」ユニセフのエルハジ・アス・スィ東部南部アフリカ地域事務所代表は話します。「この地域では、5歳未満の子どもたちの50パーセントが慢性的な栄養不良であり、8人にひとりが5歳の誕生日を迎えることなく命を落としているのです。非常に深刻な状況にいる子どもたちとその家族への支援を行わなければ、何度も何度もこのような危機が起こる状況を目の当たりにすることになります。」

今現在、1,850万人近くの人々が、緊急支援を求めています。そして、もっと多くの人々が、食糧支援に頼って何とか生き延びています。年内に、治療的な支援を必要とする急性栄養不良の人々は、25万人に達するものと見られます。

ユニセフ東部南部アフリカ地域事務所のロバート・マッカーシー緊急支援担当官は、この状況は、国際社会から資金以上の支援が求められていると話しました。

「ユニセフは、再び警告の鐘を鳴らし、『「アフリカの角」が重要な緊急事態に見舞われています。多くの資金が必要です』と言いたいのではありません。当然、こうしたことも行わなければなりません。しかし、こうした支援は、持続可能な解決法と、そのための長期的な支援が前提としてある中で行われなければなりません。我々は、それを強調したい。」

コレラ感染の発生
© UNICEF Kenya/2009/Li
ケニア東部の草も生えない牧草地で牛を集めるエクワム・ジョセフさん(20歳)と弟のエカイ・フランシスちゃん(11歳)。彼らの飼っているほとんどの牛は、続く干ばつで死んでしまいました。

ヌリアちゃん(5歳)とソフィアちゃん(3歳)は下痢に苦しんでいます。ケニア東部のバサ村は、とても乾燥している地域です。この地域では、飲み水を一週間に一度給水車で運ばれてくる水だけに頼っています。最近、この多くの人が放牧を生業としているコミュニティで5人が亡くなり、80人以上の子どもたちが下痢と嘔吐のために治療を受けています。

後に、この村ではコレラが流行していたことが確認されました。

「私たちの村の学校は、飲料水も食糧もトイレも無いので休校しています。子どもたちは病気に罹っているのです。」バサ村に暮らすファツマさん(40歳)は、こう話します。「女性も苦しんでいます。彼女たちは、朝の4時に起きて仕事をし、日が沈む6時に、喉が渇いてお腹をすかせた子どもたちの待つ家に戻るのです。」

資金の不足

「アフリカの角」地域の国々では、求められる人道支援が増えているにもかかわらず、ユニセフのような人道支援組織は資金不足に直面しています。ユニセフは、6カ国への緊急支援を行うために、1億8,900万米ドルの資金援助を国際社会に求めましたが、実際に集まっている資金は、9月末現在、このわずか3分の1に過ぎません。

ユニセフや現地で一緒に活動している人道支援団体は、必要な人道支援活動を、蔓延する栄養不良を防ぎ、公衆衛生の知識や習慣を広め、微量栄養素の改善を行うなどの、通常の支援活動とリンクさせながら、現状への対応を強化するよう努めています。しかし現地では、かつてこの地を襲ったエル・ニーニョによる洪水、更なるコレラの流行、そして、新型インフルエンザの流行も懸念されています。

「「アフリカの角」地域の子どもたちとその家族のニーズに応えるため、各国政府と私ども人道支援団体は、国際社会に対し、緊急に支援規模を拡大し、強化するよう訴えています。」「緊急事態への備えと積極的な支援が、現状に対する最良の対応策であるという、これまでの支援活動で得られた経験を、改めて早急に振り返ることが非常に重要です。ユニセフは常に緊急事態に対応していますが、緊急事態に襲われるまでその対応を待っていたのでは、事前に十分に準備が出来ている場合と比較して、十分な対応ができるわけではありません。」(エルハジ・アス・スィ地域事務所代表)