レバノン人道支援レポート
【2007年1月29日 ニューヨーク発】
子どもたちを取り巻く状況
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© UNICEF Lebanon/2006/Debbas |
2006年7月12日〜8月14日までレバノンで続いた戦争は、レバノンの人々—特に子どもたちに多くの影響を及ぼしました。紛争で1,191人が殺され、4,398人が負傷しました。その多くは一般市民で、3分の1は子どもと推定されています。
紛争の被災地では、保健施設が被害を受け、基礎医薬品や燃料不足から最低限の保健サービスを提供することも難しくなりました。さらに、レバノン南部では都市部及び農村部での水道設備が被害を受けたことも状況に追い討ちをかけました。少なくとも170万人の家で一時的、もしくは完全に給水が止まりました。
簡易調査によれば、40〜50校(内16校が公立校)が完全に崩壊し、さらに300校(全国の学校の10%に相当)が修復を必要としています。物理的な被害だけでなく、戦争が子どもや若者、親に及ぼした精神的な影響のために教員が対応できるようにしなければなりません。
特に爆撃が激しかった南部では、クラスター爆弾や不発弾も脅威となっています。レバノン南部の国連地雷対策コーディネーションセンター(UNMACC)によると、2006年9月末までにクラスター爆弾が落とされた場所が592箇所確認されており、100万発近い不発弾が散らばっている可能性があるといわれています。2006年11月6日までに、不発弾により5人の子どもが命を落とし、47人が負傷しました。特に子どもを対象とした不発弾に対する大規模な啓発・教育キャンペーンを実施しないと、今後も不発弾による事故は増え続けると懸念されています。
2006年の主な成果
保健
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- ユニセフは、緊急予防接種キャンペーンを支援し、0〜15歳までの子ども21,000人にはしかの予防接種を、0〜5歳までの8,000人の子どもにポリオの予防接種を行いました。免疫力を高めるためのビタミンA補給も同時に実施されました。
- 推定7万人の避難民の健康を守るため、公衆衛生省を支援して基礎医薬品を届けました。
- 停戦後は、ワクチン保冷チェーンの確立や、社会サービスの行き届いていない地域への巡回保健サービス提供、全国ポリオ予防接種キャンペーン(2006年10月30日が第一回)などを実施しました。
水
- 紛争中、首都近辺の避難所に避難していた2万5,000人のために、5,000リットル容量の飲料水タンクを51基提供しました。また、南部の紛争地域の人々のためにペットボトル入り飲料水を届けました。また、幼い子どもやその親のために家庭用水キットや衛生キットを提供しました。
- 停戦直後から、各水道局と協力し、主要な水道の再建と拡張を行い、14万人の人々への給水を再開させました。さらに、33の村へ給水トラックを派遣、16の貯水槽を修復・再建、300以上の水タンクを設置、水道ポンプ用に10台の発電機を提供しました。
- レバノン南部の一番被害を受けた地域へ、200万リットルのペットボトル入り飲料水を届けました。その後は、給水トラックによる給水活動を続けています。
子どもの保護
- NGOと協力し、紛争で心に傷を負った30万人以上の子ども達に心理社会的ケアや基礎的なカウンセリングを提供しました。
- ユニセフが研修したスタッフにより、30箇所の「子どもにやさしい空間」が運営されています。
教育
- 2006年10月16日までに学校が再開できるよう、教育省と協力して全国的な「バック・トゥ・スクール」キャンペーンを展開し、1,400の学校に教員用の教材や学用品や通学かばんを提供し、40万人の子どもが学校に戻りました。
2007年に予定している主な支援活動
ユニセフは、他の国連機関や政府と協力しながら、紛争の影響を受けたレバノン南部やベカ峡地域の40万人の子どもたちと家族を対象として、以下のような活動を行います。
保健と衛生(170万ドル)
- 物資や機材の提供と地域社会福祉サービスを統合することを通じ、基礎保健ケアサービスを強化する
- 社会サービスが行き届いていない地域に対しての定期的予防接種の実施を強化する
- 破壊されたワクチン保冷チェーンのための資機材を復旧・購入する
- レバノンの保健分野復興のための長期計画作成/実施にあたり公衆衛生省を支援する
教育(150万ドル)
- 全国1,400の公立校へレクリエーション用具(スポーツ道具など)を提供する
- 全国1,400の公立校の教員を対象として心理社会カウンセリング専門研修を実施する。また、各学校でカウンセラーを養成する
- レバノンの教育分野復興のための長期計画作成/実施にあたり教育省を支援する
子どもの保護(250万ドル)
- 子ども向けの文化/娯楽施設が全くない地域に、30の「子どもにやさしい空間」を設置する
- 専門の研修を受けたソーシャルワーカーなどによるレクリエーション活動を通じて、子どもたちがストレスと向き合う力を身につけられるよう支援する(特に、障害を持つ子どもや、親を失った子ども、学校に通っていない子ども、暴力や虐待の被害を受けた子ども等を対象とする)
- 近隣の学校やコミュニティセンター再建への参加や、市民参加・対話を通じて、地域の復興プロセスへの若者の参加を促進する
- 地雷や不発弾による事故を防ぐため、紛争地の全ての人々が地雷や不発弾についての知識を得られるようにする